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第13話 人間界侵攻作戦の裏側
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衝撃的事実にルナティアは完全に固まっていた。
嘘を吐くような内容でもないし、そんな事をしても魔王に何の得もない。
つまりはそういうことなのだろう。
魔王は言葉を失っているルナティアの手を取るが、ルナティアは衝撃のあまり普段であれば激しい突っ込みを入れる所のはずだが、その機を逸してしまう。
「あちらで休憩しよう。この辺りの景色が一望出来て、周りには花も咲き乱れている。母様のお気に入りだった場所だ」
「あ、うん」
そうして、ルナティアは魔王に手を引かれて花畑の一番高い丘になっている場所まで歩いていった。
傍から見れば完全に恋人同士にしか見えない光景だがルナティアは頭の整理に精一杯でその事には気づいていない。
(えっ、どういうこと? 母親が人間? つまり魔王は魔人と人間とのハーフ?)
世界最強の魔人である魔王が人間とのハーフなどということは思いもかけない話だった。
恐らく、人間界で話したとしても誰も信じられない話だろう。
何百年前の話かは知らないが、人間が魔人と交わった話などルナティアは聞いたことがなかった。
人間は魔人を忌み嫌っているし、魔人もまた人間を忌み嫌っている。
人間と魔人はどこまで行っても敵対者。
それが人間界における魔人の認識なのだ。
魔王はそんなルナティアの心境を知ってか知らずか花が咲いていない場所を選んでシートを引き始め、腰を下ろした。
「さぁルナティアも座ってくれ」
魔王に促されるまま、ルナティアが腰を下ろすと魔王はミーニャに預けられた花柄の弁当箱の包みを開いていく。
「さっきの話……」
「あぁ、母様の話か?」
「人間っていうのは本当なの?」
「本当だ」
魔王は弁当箱を広げ切ると、2つあるスプーンの内の1つをルナティアに手渡した。
「あ、ありがと」
「うむ」
ルナティアと魔王はミーニャお手製の弁当ともぐもぐとつまんでいく。
「母様は人間だったが、それを知るものは今となってはあまりいない。四天王内でも知っている者はシュトライゼンとグラガドだけだ」
それはそうだろう。
昨日の会議の時もそうだったが、人間に対する魔人の印象はあまり良くない。
絶対支配者である魔王の発言ですら人間界侵攻中止に異議を唱える者が約半数いたくらいだ。
言葉にしなくても反対していた者もいたことを考えれば実際はそれ以上だろう。
魔王の母親がその人間だったと知れば、魔王の魔界運営にかなりの支障をきたすことは考えるまでもない事だった。
それ以前に魔王が魔王になれたかも微妙な所かもしれない。
魔王がどのようにして魔王になったかルナティアは知らないが、その母親が人間だったとするなら反対する者は多くなり魔王となる事はかなり困難を極めたはずである。
「なんでそんな大事な事を私に話したの? ベラベラ話しちゃうかもしれないよ? 私」
いつもならここでニヤッと笑みを浮かべながら言う所だが、ルナティアの表情は真剣そのものだった。
「ルナティアには本当の事を話しておきたいと思ったからだ。……ということもあるが、もう一つルナティアに言っておきたいことがあるのだ」
ごくりとルナティアは息を呑んだ。
恐らく、今から魔王が話す話は人間界にとっても重要な話であり、それは人間界の存亡にも関わる事だとルナティアは直感で感じていた。
「実はな、前の会議で話されていた人間界侵攻作戦だが、あの作戦には俺も賛成していたのだ。……表面上はな」
「どういうこと?」
「母様の事もあって、俺も人間界侵攻などしたくはなかったのだが、魔王という立場がそれを許さなかった。仮に俺が反対して人間界侵攻作戦が無くなったとしても、あの作戦に賛同する者が大多数だった」
「つまり……内乱が起きたかもしれないってこと?」
「その可能性も高かったが、俺が本当に恐れたのは俺の命令を無視して人間界に勝手に進行する者達が出る事だ。内乱は俺の力を持ってすれば鎮める事も可能だが、人間界の侵攻の全てを阻止するのはとてもではないが不可能だ。俺が賛成しようが反対しようが、どのみち人間界は戦火に見舞われただろう。それほどまでに魔人の人間に対する感情は悪い」
仮に魔人と人間の立場が逆だったとしてもそうだっただろうとルナティアは思った。
仮に人間界が魔界の勢力を圧倒している状態で魔界侵攻作戦が立案されたとする。
そんな状態で大国の王でも誰でもいいが、人間界の権力者がそれに反対したとしても待っているのはその権力者の暗殺だろう。
仮に暗殺や反乱がなかったとしても、魔界侵攻を止めるのは難しいし、止められたとしても勝手に魔界に侵攻する者は多く出る事だろう。
つまり、魔王が言いたいのはそういうことだ。
「だから俺は人間界侵攻作戦に表面上は賛同し、裏から人間界侵攻作戦の進行をできる限り遅らせるように手を回していたが、それにも限界があった。そして、人間界侵攻作戦決行される直前だった3日前に——ルナティアに出会ったのだ」
嘘を吐くような内容でもないし、そんな事をしても魔王に何の得もない。
つまりはそういうことなのだろう。
魔王は言葉を失っているルナティアの手を取るが、ルナティアは衝撃のあまり普段であれば激しい突っ込みを入れる所のはずだが、その機を逸してしまう。
「あちらで休憩しよう。この辺りの景色が一望出来て、周りには花も咲き乱れている。母様のお気に入りだった場所だ」
「あ、うん」
そうして、ルナティアは魔王に手を引かれて花畑の一番高い丘になっている場所まで歩いていった。
傍から見れば完全に恋人同士にしか見えない光景だがルナティアは頭の整理に精一杯でその事には気づいていない。
(えっ、どういうこと? 母親が人間? つまり魔王は魔人と人間とのハーフ?)
世界最強の魔人である魔王が人間とのハーフなどということは思いもかけない話だった。
恐らく、人間界で話したとしても誰も信じられない話だろう。
何百年前の話かは知らないが、人間が魔人と交わった話などルナティアは聞いたことがなかった。
人間は魔人を忌み嫌っているし、魔人もまた人間を忌み嫌っている。
人間と魔人はどこまで行っても敵対者。
それが人間界における魔人の認識なのだ。
魔王はそんなルナティアの心境を知ってか知らずか花が咲いていない場所を選んでシートを引き始め、腰を下ろした。
「さぁルナティアも座ってくれ」
魔王に促されるまま、ルナティアが腰を下ろすと魔王はミーニャに預けられた花柄の弁当箱の包みを開いていく。
「さっきの話……」
「あぁ、母様の話か?」
「人間っていうのは本当なの?」
「本当だ」
魔王は弁当箱を広げ切ると、2つあるスプーンの内の1つをルナティアに手渡した。
「あ、ありがと」
「うむ」
ルナティアと魔王はミーニャお手製の弁当ともぐもぐとつまんでいく。
「母様は人間だったが、それを知るものは今となってはあまりいない。四天王内でも知っている者はシュトライゼンとグラガドだけだ」
それはそうだろう。
昨日の会議の時もそうだったが、人間に対する魔人の印象はあまり良くない。
絶対支配者である魔王の発言ですら人間界侵攻中止に異議を唱える者が約半数いたくらいだ。
言葉にしなくても反対していた者もいたことを考えれば実際はそれ以上だろう。
魔王の母親がその人間だったと知れば、魔王の魔界運営にかなりの支障をきたすことは考えるまでもない事だった。
それ以前に魔王が魔王になれたかも微妙な所かもしれない。
魔王がどのようにして魔王になったかルナティアは知らないが、その母親が人間だったとするなら反対する者は多くなり魔王となる事はかなり困難を極めたはずである。
「なんでそんな大事な事を私に話したの? ベラベラ話しちゃうかもしれないよ? 私」
いつもならここでニヤッと笑みを浮かべながら言う所だが、ルナティアの表情は真剣そのものだった。
「ルナティアには本当の事を話しておきたいと思ったからだ。……ということもあるが、もう一つルナティアに言っておきたいことがあるのだ」
ごくりとルナティアは息を呑んだ。
恐らく、今から魔王が話す話は人間界にとっても重要な話であり、それは人間界の存亡にも関わる事だとルナティアは直感で感じていた。
「実はな、前の会議で話されていた人間界侵攻作戦だが、あの作戦には俺も賛成していたのだ。……表面上はな」
「どういうこと?」
「母様の事もあって、俺も人間界侵攻などしたくはなかったのだが、魔王という立場がそれを許さなかった。仮に俺が反対して人間界侵攻作戦が無くなったとしても、あの作戦に賛同する者が大多数だった」
「つまり……内乱が起きたかもしれないってこと?」
「その可能性も高かったが、俺が本当に恐れたのは俺の命令を無視して人間界に勝手に進行する者達が出る事だ。内乱は俺の力を持ってすれば鎮める事も可能だが、人間界の侵攻の全てを阻止するのはとてもではないが不可能だ。俺が賛成しようが反対しようが、どのみち人間界は戦火に見舞われただろう。それほどまでに魔人の人間に対する感情は悪い」
仮に魔人と人間の立場が逆だったとしてもそうだっただろうとルナティアは思った。
仮に人間界が魔界の勢力を圧倒している状態で魔界侵攻作戦が立案されたとする。
そんな状態で大国の王でも誰でもいいが、人間界の権力者がそれに反対したとしても待っているのはその権力者の暗殺だろう。
仮に暗殺や反乱がなかったとしても、魔界侵攻を止めるのは難しいし、止められたとしても勝手に魔界に侵攻する者は多く出る事だろう。
つまり、魔王が言いたいのはそういうことだ。
「だから俺は人間界侵攻作戦に表面上は賛同し、裏から人間界侵攻作戦の進行をできる限り遅らせるように手を回していたが、それにも限界があった。そして、人間界侵攻作戦決行される直前だった3日前に——ルナティアに出会ったのだ」
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