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3話 名前
しおりを挟む俺は近くの山で狩りもするのだが、狩りでも犬は優秀だった
その日、俺が出かけようとすると後ろからついてきた
「今日もついてくる気か?」
「ワゥ」
「今日は山に狩りに行くけど、お前は危ないから家で留守番な」
「ウゥゥゥ…ッ」
留守番と聞いたとたん、嫌そうに唸りはじめた
イヤイヤと反抗している子どもみたいでつい笑ってしまった
「なんだその顔、そんなに留守番嫌なのか?」
「ワゥッッ!」
ブンブンと首をふって吠えた
その様子がおかしくて笑いながら頭を撫でる
「わかったわかった。じゃあ、お前でかいから軽トラの荷台に乗っけてくか」
そういうとすぐに軽トラの場所まで走っていき、荷台に飛び乗った
「お前ほんとに頭いいな。荷台ってわかるのか」
犬が落ちないように慎重に山まで走らせたのだった
そうして山に入り、獲物を探しているときだった
気がついたら犬がいなくなっていた
「あ?おい、どこ行った?」
間違えて撃ってしまったら困ると思い、探しているがみつからない
しばらく探して一息ついたときだった
ふいに後ろの草むらから犬がでてきた
「まったく…お前はどこいってたんだ」
ホッとして声をかける
近づいてくる犬をよくみたら大きなウサギを咥えていたのだった
「おっ?!お前狩りもできるのか!ってどこにいたんだそんな丸々したウサギ!」
犬は自慢気に胸を張って尻尾をふっていた
それからというもの一緒に狩りに行っている
ただ、勝手にいなくなるのは心配するからやめろと約束して
そんな感じで犬が来てからは生活が楽になってとても助けられている
それになにより犬がいる生活は俺の心を癒してくれた
俺をみると尻尾を振って嬉しそうに近づいてくる
そして、疲れているときは近くにきてもすりついてくることなく静かにそっと横にいた
そうやって気配を感じとって心地いい距離感を保ってくれるのだ
いったいどこでそんなの覚えたんだろうか
本当に賢い子だなと思う
そういえば、風呂で一度きれいに洗ったらふわふわの毛並みになった
毛色はてっきり灰色だと思っていたが汚れてそうみえていただけだった
とても美しい銀色の毛なみをしていた
薄汚い野良犬だったのが、なんだか高貴な神獣みたいな風貌に変身したのだ
俺はその姿に暫しの間見惚れたのだった
まぁそんな感じで、野良か脱走かわからないが、飼い主が見つかるまで一緒に暮らすことになった
となると一時的でも名前がないと困る
「なあ、お前の名前は…って聞いてもわからないよな。仮で勝手につけていいか?」
と聞くと尻尾をふって
「ワゥ!」
と言ったのでいいということにして名前を考える
「うーん…。ポチ…って顔してないしなぁ。タマは猫だし。ブチはなんかなぁ」
俺ネーミングセンスないんだよな
「あ、狼っぽいからウルフのウルってどうよ?」
まあ安直だけども良さげだろうと犬をみると嬉しそうに尻尾をふってワウワウ吠えた
「じゃ一時的だけどウルって呼ぶからな」
「ワゥッッ!」
尻尾をふって嬉しさからかのしかかってきた
「おわっ!おいこら!でかいんだから乗るな!おいって!!」
「ワゥワゥッ!!」
結局そのまま押し倒され潰されたのだった
やっと離れた頃、俺は毛だらけになっていた
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