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お父さんとパパ、どっちを選ぶの!
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数日後
あの時の集まりにはいなかった、留守番役の水芭(みずば)さんという方がこの事務所に来るそうだ。
「事務所にbarがあるじゃない?そこで美味しいお酒も作ってくれるんだ、いいかい?お酒を飲むときは気をつけてくれ、こんなことを言うと嫌われるから言いたくはないんだけどもさ」
こういう話をするには理由があった。
螺殻(らがら)ミツがこちらに引っ越すということで、仕事回りの挨拶をし、またこちらに来てからも関係者へ挨拶をしていたときに。
「よろしくね、俺もあの人たちと仕事して長いから、こっちに来て知り合いとかいる?お休みの日どっか遊びにいかない?次の連休なら…」
ナンパされました。
その光景にみんな信じられないという顔をしたのである。
それは何故か。
「残念だな、お前との付き合いは確かに長かったのに、ここで終わりになるだなんて」
「えっ?えっ?」
「お前、嫁さんいるだろう」
「冗談だって、冗談、なんでそんなおっかない顔をするなんて」
「そういうのって冗談になるんだ、知らなかったな」
「へぇ、俺は思わないけどもな」
そこでその男とは金輪際仕事を振らないということになったのである。
「あいつがあんな奴なんて思わなかった」
「それはある、ただ逆に考えるんだ、もっと最悪なときにあいつがやらかしたことを」
「致命傷がないだけいいのか」
「そういうこと」
そこで現在いろんなものが再確認されることになり、スケジュールが変更になっていった。
「確認の連絡はしましたが初めまして水芭です」
この人もイケオジの部類であった。
「あの時は、ありがとうございました、螺殻です」
「えっ?何々、その話は知らないんだけども、ちょっとどういうこと?」
「水芭さんには引っ越しの際にお世話になりまして」
「先輩、引っ越しにはお金かかるんですよ、知ってます?」
「ああ、そういうことか」
わからない部分が多かったため、水芭に任せれば安心ということでお任せしたのであった。
「それで余った分は元の職場のお菓子にしてもいいかと連絡したんですよ」
「君はその節約家だと思うよ、あの金額で余るとは思わなかった」
「元の職場、予算がでないところだったんで」
そういうところで何年もやっていくと、節約が当たり前になるのです。
「家族もいませんか、元の職場ぐらいの挨拶ですみましたから、気楽ではありましたし」
その時のミツの笑顔は少し痛々しい。
「うちは大丈夫だから、お金には困らないところだから」
「何言ってるんですか、厳しいときはありますよ」
「えっ?」
「先輩たちは稼ぐけども使いますからね」
「ごめんね」
「はいはい、いつものことですし、螺殻さんは今日からしばらく俺と組んで情報収集と警戒していくから」
「えー」
「なんで先輩の方が不満そうなんですか」
「ミツはね、結婚するときは挙式でエスコートするのはどっちかで言い争いになっていて」
「私、結婚の予定ないですが」
「こういうのは常に備えておかないと、ああ、その時が来たらと思うと…お父さんとパパどっちを選ぶの!って」
「先輩方は時折どうでもいいことで盛り上がれるから」
「対応の仕方としてはどうしますか?」
「はいはい、それじゃあ次の話に移りますねが8とかでいいから」
「なんか後輩が冷たい」
「調子に乗せると話がいつまでたっても終わらないじゃありませんか」
その時笑顔なのだが、その笑顔は今まで何回それで脱線したか覚えているかな?という圧力があった。
情報収集、世間話をしていったところ。
「それで話は変わるけども、お嬢さんはどういう人が好みなの?おばちゃんにだけは教えてくれる?」
「えっ?好みですか?」
「そうよ、そうよ、あっそうだ、実は…」
「すいませんが、次の予定がありますので」
水芭が一言断って話を終わらせてくれた。
「もういいじゃない、どうせずっとこの仕事を続けるというわけじゃないんでしょうし」
(困ったな)
価値観が生まれ育ったところともちょっと違った。
「行くよ」
「すいません、失礼します」
「今度は遊びに来てね」
水芭が運転する車に乗った。
「一人では行かないこと」
「はい」
「でもまさか、あんな風に聞かれるとは思いませんでした」
「でもああいうのは多いんだよ、ハニトラもあれば、善意でもあるし」
「善意ですか」
「そう、そうなれば身内だからね、身内になるというのはなかなかに大きいことだ」
「それでもうちはこういう話は少ない方なんだ、なんというか、似たような依頼を引き受けているところがあるんだけども、そこは逆にハニトラにとても弱くて」
「それで上手く行くものなのでしょうか?」
「不思議というか、外からではわからない何かがあるんだよ、うちみたいに」
「運がいいとかですか?」
「その根拠は?」
「一週間、仕事の指導という形で組みましたけども、いつもよりも話が早いなって思ったんですよね、決定的なのは、実行前に合流できた話は聞いてますか?」
「聞いてるよ、それは螺殻さんの確率ではどのぐらいで会えたと思ってる?」
「2割…いえ、1割かもしれません、上手くいったらいいなぐらいで計画していたものが、嘘のようにはまってくれたので、残念ですが世の中には運がいい人、悪い人はいますよ、悪い人はいくら準備してもそれがそうは動くことはありません」
「一人でも運がいいけども、コンビになるとさらに上がるからね、それがうちのパーティーの秘密とも言える」
「聞いていいんですかね?」
「聞かせちゃならないなら、聞かせれる状況がまず作れないぐらい、あの人たちは運がいいんだよ、じゃあ、警戒行くよ」
「わかりました」
端末の電源を落として、警戒行動に入る。
「早くさ、二人とも帰ってこないかな」
「久しぶりに自分より下の子が来たから、お兄ちゃん風吹かせているんだと思うよ」
「それならばしょうがないけどもさ」
「でもさ」
「何よ」
「しばらくは確認が取れるまでは、お休みもいいところだと思うから、現場に連れ出してミツを育てなくてもいいと考えれば」
「それはいいことだ」
「だろ?」
これから事務作業が山積みにはなるが、それでもまだマシらしい。
「すいません、お届けものです」
「はいはーい、今行きます」
その時二人は事務所の建物内ではあるが、いつもはいない場所、barカウンターで談笑していた。
だからそこから運ばれるものは飲料がメインであり、また対応するのは水芭がほとんどであった。
最初に気づいたのは香りだ。
「何故!?」
そして配達員に扮した男の動揺である。
この二人がいるのは想定外のはず、なぜここに、この駒ならば万が一でも敵うことはないし、情報が抜かれてしまう。
作戦を無理矢理に遂行するよりは逃げの一手ではあるが、その時にはナイフは投げられていた。
「あれ?おかしい」
「どうしました?」
「電源が入らない」
パーティー用の端末で水芭がそういった。
「私のは、大丈夫ですが…あの水芭さん、事務所が襲撃されたって連絡が!」
戻ってくると事務所の周囲が騒がしく、使えない端末は車中に置いた。
「すいません、関係者です、通してください」
水芭の後ろを螺殻もついていくが、柔軟剤が強いのだろうか、花の香りがやけに鼻につく。
「お帰り二人とも」
「じゃあ、さっそく事務所を移動するから、後はよろしくね」
パーティーで顔合わせ人たちが何人か来ていて、後始末はそちらが引き受けるという。
「じゃあ、第15事務所にお引っ越しと」
「事務所の数はいくつあるんですかね?」
「さっきのは第3だよ、現存する一番古いの」
「襲撃や爆破とかあるとね、次の借り手はいないから、ああやってそのまま借り続けていたりするか、建物のオーナーにそのままなることはあるね」
「そんなわけで、不動産部門もうちは強いんですよ」
水芭はそちらもしきってるらしい。
「でも水芭、気づいたでしょ、あの匂い」
「狙われたのは俺だったんですか」
「でしょうよ、あの香り」
「香り?さっき事務所に入る時も香りが凄くて」
「それ、本当?」
そういってサンプルのボトルをどこからか取り出して、ミツの前であけて、漂わせる。
「ああ、これです、柔軟剤かと思いましたが」
「これ覚えておいて、ピオニーっていうの、シャクヤクの匂い」
「犯人のお気に入りの匂いというやつですか」
「そう、できれば水芭をその匂いで染め上げたいっていうね」
「冗談じゃない」
「それはわかってるさ」
「ただこのタイミングで狙ってきたのは、なんかそっち変なことはなかった?」
「あっ、水芭さんの端末の」
「まだわかりませんけども、電源が入りませんでした」
「怪しいね、まさか持ってきてはいないよね?」
「さっき車に置いてきて、車も任せましたから」
「それで正解だよ」
「今日、いきなりスケジュールが変更になったのはそれだったかもしれないね」
「?」
「ミツ、幸運はただではないということだよ、水芭から聞いたろ?俺らは運がいいが、限りがある、ある程度以上の災厄が降り注いだ場合、何かが俺らの手元からこぼれるんだ、幸い人命では今まではないが、だから俺らは組みたいが組む人は選ぶことになるんだ、こんな俺らは怖いかい?」
「いいえ、怖くありません」
「あ~良いところ取られた」
「先輩、ちょっと黙ってくださいよ」
「私は幸せですよ、みなさんの側にいられて」
そこで微笑みをミツは浮かべた。
「先輩方、ミツさんに何かしましたか?」
「何かしたって何よ、しかも水芭、螺殻さんからミツさんになってるし、好感度をしっかりあげているんじゃない」
「いいじゃないですか、先輩たちだって名前で呼んでますし」
イケオジ好きの乙女によっては羨ましい環境に見えるのだろう。
しかし危険は隣り合わせで、最低限の自衛は求められた。
ただあまりミツはそんなイケオジ達のファンからは敵視はされない。
「レディ、それはね、向こうは子猫拾った扱いだからだよ」
「子猫ですか」
「昔拾った子犬は立派な青年も最近はすぎて、イケオジデビューしたわけだけどもさ」
「それが水芭さんですか」
「そう、間に何人もいたんだけども、あれ聞いてない?同じような依頼を受けるところの話」
「もしかしてハニトラの」
「そう、あっち、うちのやり方はなんだかんだで古いもんだからね、逆についていくのは難しいから、新興に結構シェアはとられている、まっ、うちは根強いファンがいるのが強みだけどもね」
「逆に私はありがたかったですけどもね、もし他のところで採用になっていたら、新しく覚えなければならないことがたくさんあったと思いますし」
「良かったよ、おっさんに優しい環境がピッタリだったって事ね、ミズバ!」
「なんだ?」
「水芭の端末、仕掛けはあったよ」
「そうか」
「でも場所の特定とかそんな大げさなやつじゃないから、わからなかったってやつ、電源一度落としたら入らない程度だよ」
「それあの時の襲撃で、俺一人事務所にいたら応援呼べないよね」
「ファイト」
「その応援は素直に喜べないよ」
「あの香りの主ですか」
「そうそう、ミズバが大好きなんだよ」
「本当に気持ち悪いんですがね」
「人の心がわからない人は残念ながらいますから」
「レディぐらい心が綺麗な娘さんも、この世界にはそんなにいないよ」
「ミツさんは変わらないでくださいね」
「そんなに私は心が綺麗というわけではありませんよ、水芭さんのカウンターで作ってくれるオニオングラタンスープの誘惑にはすぐに負けるし」
空調の風が少し冷たいと感じたときのオニオングラタンスープは本当に美味しいのです。
「また作るし、お酒の方は飲んでもいいけども、飲まれないこと、例え俺らや先輩方の前でも気を付ける」
「はい」
基本はお酒は飲まないこと、飲む場合は少しだけ、安全が行き届いた場所で、それこそ保護者が目の前でを徹底されていた。
何かあったら怖いから、高確率でその何かが起きる、それがこの仕事である。
あの時の集まりにはいなかった、留守番役の水芭(みずば)さんという方がこの事務所に来るそうだ。
「事務所にbarがあるじゃない?そこで美味しいお酒も作ってくれるんだ、いいかい?お酒を飲むときは気をつけてくれ、こんなことを言うと嫌われるから言いたくはないんだけどもさ」
こういう話をするには理由があった。
螺殻(らがら)ミツがこちらに引っ越すということで、仕事回りの挨拶をし、またこちらに来てからも関係者へ挨拶をしていたときに。
「よろしくね、俺もあの人たちと仕事して長いから、こっちに来て知り合いとかいる?お休みの日どっか遊びにいかない?次の連休なら…」
ナンパされました。
その光景にみんな信じられないという顔をしたのである。
それは何故か。
「残念だな、お前との付き合いは確かに長かったのに、ここで終わりになるだなんて」
「えっ?えっ?」
「お前、嫁さんいるだろう」
「冗談だって、冗談、なんでそんなおっかない顔をするなんて」
「そういうのって冗談になるんだ、知らなかったな」
「へぇ、俺は思わないけどもな」
そこでその男とは金輪際仕事を振らないということになったのである。
「あいつがあんな奴なんて思わなかった」
「それはある、ただ逆に考えるんだ、もっと最悪なときにあいつがやらかしたことを」
「致命傷がないだけいいのか」
「そういうこと」
そこで現在いろんなものが再確認されることになり、スケジュールが変更になっていった。
「確認の連絡はしましたが初めまして水芭です」
この人もイケオジの部類であった。
「あの時は、ありがとうございました、螺殻です」
「えっ?何々、その話は知らないんだけども、ちょっとどういうこと?」
「水芭さんには引っ越しの際にお世話になりまして」
「先輩、引っ越しにはお金かかるんですよ、知ってます?」
「ああ、そういうことか」
わからない部分が多かったため、水芭に任せれば安心ということでお任せしたのであった。
「それで余った分は元の職場のお菓子にしてもいいかと連絡したんですよ」
「君はその節約家だと思うよ、あの金額で余るとは思わなかった」
「元の職場、予算がでないところだったんで」
そういうところで何年もやっていくと、節約が当たり前になるのです。
「家族もいませんか、元の職場ぐらいの挨拶ですみましたから、気楽ではありましたし」
その時のミツの笑顔は少し痛々しい。
「うちは大丈夫だから、お金には困らないところだから」
「何言ってるんですか、厳しいときはありますよ」
「えっ?」
「先輩たちは稼ぐけども使いますからね」
「ごめんね」
「はいはい、いつものことですし、螺殻さんは今日からしばらく俺と組んで情報収集と警戒していくから」
「えー」
「なんで先輩の方が不満そうなんですか」
「ミツはね、結婚するときは挙式でエスコートするのはどっちかで言い争いになっていて」
「私、結婚の予定ないですが」
「こういうのは常に備えておかないと、ああ、その時が来たらと思うと…お父さんとパパどっちを選ぶの!って」
「先輩方は時折どうでもいいことで盛り上がれるから」
「対応の仕方としてはどうしますか?」
「はいはい、それじゃあ次の話に移りますねが8とかでいいから」
「なんか後輩が冷たい」
「調子に乗せると話がいつまでたっても終わらないじゃありませんか」
その時笑顔なのだが、その笑顔は今まで何回それで脱線したか覚えているかな?という圧力があった。
情報収集、世間話をしていったところ。
「それで話は変わるけども、お嬢さんはどういう人が好みなの?おばちゃんにだけは教えてくれる?」
「えっ?好みですか?」
「そうよ、そうよ、あっそうだ、実は…」
「すいませんが、次の予定がありますので」
水芭が一言断って話を終わらせてくれた。
「もういいじゃない、どうせずっとこの仕事を続けるというわけじゃないんでしょうし」
(困ったな)
価値観が生まれ育ったところともちょっと違った。
「行くよ」
「すいません、失礼します」
「今度は遊びに来てね」
水芭が運転する車に乗った。
「一人では行かないこと」
「はい」
「でもまさか、あんな風に聞かれるとは思いませんでした」
「でもああいうのは多いんだよ、ハニトラもあれば、善意でもあるし」
「善意ですか」
「そう、そうなれば身内だからね、身内になるというのはなかなかに大きいことだ」
「それでもうちはこういう話は少ない方なんだ、なんというか、似たような依頼を引き受けているところがあるんだけども、そこは逆にハニトラにとても弱くて」
「それで上手く行くものなのでしょうか?」
「不思議というか、外からではわからない何かがあるんだよ、うちみたいに」
「運がいいとかですか?」
「その根拠は?」
「一週間、仕事の指導という形で組みましたけども、いつもよりも話が早いなって思ったんですよね、決定的なのは、実行前に合流できた話は聞いてますか?」
「聞いてるよ、それは螺殻さんの確率ではどのぐらいで会えたと思ってる?」
「2割…いえ、1割かもしれません、上手くいったらいいなぐらいで計画していたものが、嘘のようにはまってくれたので、残念ですが世の中には運がいい人、悪い人はいますよ、悪い人はいくら準備してもそれがそうは動くことはありません」
「一人でも運がいいけども、コンビになるとさらに上がるからね、それがうちのパーティーの秘密とも言える」
「聞いていいんですかね?」
「聞かせちゃならないなら、聞かせれる状況がまず作れないぐらい、あの人たちは運がいいんだよ、じゃあ、警戒行くよ」
「わかりました」
端末の電源を落として、警戒行動に入る。
「早くさ、二人とも帰ってこないかな」
「久しぶりに自分より下の子が来たから、お兄ちゃん風吹かせているんだと思うよ」
「それならばしょうがないけどもさ」
「でもさ」
「何よ」
「しばらくは確認が取れるまでは、お休みもいいところだと思うから、現場に連れ出してミツを育てなくてもいいと考えれば」
「それはいいことだ」
「だろ?」
これから事務作業が山積みにはなるが、それでもまだマシらしい。
「すいません、お届けものです」
「はいはーい、今行きます」
その時二人は事務所の建物内ではあるが、いつもはいない場所、barカウンターで談笑していた。
だからそこから運ばれるものは飲料がメインであり、また対応するのは水芭がほとんどであった。
最初に気づいたのは香りだ。
「何故!?」
そして配達員に扮した男の動揺である。
この二人がいるのは想定外のはず、なぜここに、この駒ならば万が一でも敵うことはないし、情報が抜かれてしまう。
作戦を無理矢理に遂行するよりは逃げの一手ではあるが、その時にはナイフは投げられていた。
「あれ?おかしい」
「どうしました?」
「電源が入らない」
パーティー用の端末で水芭がそういった。
「私のは、大丈夫ですが…あの水芭さん、事務所が襲撃されたって連絡が!」
戻ってくると事務所の周囲が騒がしく、使えない端末は車中に置いた。
「すいません、関係者です、通してください」
水芭の後ろを螺殻もついていくが、柔軟剤が強いのだろうか、花の香りがやけに鼻につく。
「お帰り二人とも」
「じゃあ、さっそく事務所を移動するから、後はよろしくね」
パーティーで顔合わせ人たちが何人か来ていて、後始末はそちらが引き受けるという。
「じゃあ、第15事務所にお引っ越しと」
「事務所の数はいくつあるんですかね?」
「さっきのは第3だよ、現存する一番古いの」
「襲撃や爆破とかあるとね、次の借り手はいないから、ああやってそのまま借り続けていたりするか、建物のオーナーにそのままなることはあるね」
「そんなわけで、不動産部門もうちは強いんですよ」
水芭はそちらもしきってるらしい。
「でも水芭、気づいたでしょ、あの匂い」
「狙われたのは俺だったんですか」
「でしょうよ、あの香り」
「香り?さっき事務所に入る時も香りが凄くて」
「それ、本当?」
そういってサンプルのボトルをどこからか取り出して、ミツの前であけて、漂わせる。
「ああ、これです、柔軟剤かと思いましたが」
「これ覚えておいて、ピオニーっていうの、シャクヤクの匂い」
「犯人のお気に入りの匂いというやつですか」
「そう、できれば水芭をその匂いで染め上げたいっていうね」
「冗談じゃない」
「それはわかってるさ」
「ただこのタイミングで狙ってきたのは、なんかそっち変なことはなかった?」
「あっ、水芭さんの端末の」
「まだわかりませんけども、電源が入りませんでした」
「怪しいね、まさか持ってきてはいないよね?」
「さっき車に置いてきて、車も任せましたから」
「それで正解だよ」
「今日、いきなりスケジュールが変更になったのはそれだったかもしれないね」
「?」
「ミツ、幸運はただではないということだよ、水芭から聞いたろ?俺らは運がいいが、限りがある、ある程度以上の災厄が降り注いだ場合、何かが俺らの手元からこぼれるんだ、幸い人命では今まではないが、だから俺らは組みたいが組む人は選ぶことになるんだ、こんな俺らは怖いかい?」
「いいえ、怖くありません」
「あ~良いところ取られた」
「先輩、ちょっと黙ってくださいよ」
「私は幸せですよ、みなさんの側にいられて」
そこで微笑みをミツは浮かべた。
「先輩方、ミツさんに何かしましたか?」
「何かしたって何よ、しかも水芭、螺殻さんからミツさんになってるし、好感度をしっかりあげているんじゃない」
「いいじゃないですか、先輩たちだって名前で呼んでますし」
イケオジ好きの乙女によっては羨ましい環境に見えるのだろう。
しかし危険は隣り合わせで、最低限の自衛は求められた。
ただあまりミツはそんなイケオジ達のファンからは敵視はされない。
「レディ、それはね、向こうは子猫拾った扱いだからだよ」
「子猫ですか」
「昔拾った子犬は立派な青年も最近はすぎて、イケオジデビューしたわけだけどもさ」
「それが水芭さんですか」
「そう、間に何人もいたんだけども、あれ聞いてない?同じような依頼を受けるところの話」
「もしかしてハニトラの」
「そう、あっち、うちのやり方はなんだかんだで古いもんだからね、逆についていくのは難しいから、新興に結構シェアはとられている、まっ、うちは根強いファンがいるのが強みだけどもね」
「逆に私はありがたかったですけどもね、もし他のところで採用になっていたら、新しく覚えなければならないことがたくさんあったと思いますし」
「良かったよ、おっさんに優しい環境がピッタリだったって事ね、ミズバ!」
「なんだ?」
「水芭の端末、仕掛けはあったよ」
「そうか」
「でも場所の特定とかそんな大げさなやつじゃないから、わからなかったってやつ、電源一度落としたら入らない程度だよ」
「それあの時の襲撃で、俺一人事務所にいたら応援呼べないよね」
「ファイト」
「その応援は素直に喜べないよ」
「あの香りの主ですか」
「そうそう、ミズバが大好きなんだよ」
「本当に気持ち悪いんですがね」
「人の心がわからない人は残念ながらいますから」
「レディぐらい心が綺麗な娘さんも、この世界にはそんなにいないよ」
「ミツさんは変わらないでくださいね」
「そんなに私は心が綺麗というわけではありませんよ、水芭さんのカウンターで作ってくれるオニオングラタンスープの誘惑にはすぐに負けるし」
空調の風が少し冷たいと感じたときのオニオングラタンスープは本当に美味しいのです。
「また作るし、お酒の方は飲んでもいいけども、飲まれないこと、例え俺らや先輩方の前でも気を付ける」
「はい」
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