浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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長く生きていると思いがけないプレゼントをいただくことがある

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「おや、本日はお出掛けですかな、とても嬉しそうだ」
「そうなのだ、わかるかな?今日は領主殿に会おうと思っている」
「そうでしたか」
「ただ結婚はちょっと残念だった」
「そうなのですか?ではちょっと占ってみましょうか?」
「あまりそういうのは気にしない方だが、いいだろう、お願いしよう」
カシャン
そういって振られた結果を書き留めていく。
「…表も裏も家庭のことが出ましたが」
この占いは色んな結果を出すためのものであり、家庭の項もある。家庭を意味する目二つの目が出ていた。
「それは珍しいのか?」
「珍しいですね、この年にこういう建物を建築するべきだとか、注文を出すにはこの時とか、そういう結果もあるというのに、家庭に関しての目がこうも出るのならば、良縁なのかな?」
そういって占いで出た目を、数字二つを書いてから渡してきた。
「私はこの二つが出ました、気になるのでしたら、解釈を他の方にも聞いてみてください」
こういうところが占いを任される人間であっても、信頼がおけると思われる由縁であった。
「これはいい結婚ということなのかね?」
それでこちらにも長らく仕えるもので、占いに関しての知識をもつものにも、改めて聞いてみると。
「この目が出る確率から考えますと、いい出会いではあるとは思いますが、占いですからね」


「これはこれは、領主殿」
「お久しぶりです」
領主は白髪の貫禄ある男性にあいさつをされた。
口調は丁寧だが、なんとなくただ者ではないように思われる。
うん、その通り、身分としては領主よりもかなり上、発言力も強い。
「結婚おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「でもてっきり領主殿は、私の身内になってくださると思ってましたがね」
「その話はありがたいのですが…」
そこに領主の妻が現れる。
「旦那様?」
「紹介します、うちの妻です」
「初めまして」
そしてそこ後に、先方の名前、敬称をつけて挨拶をした。
「おや、化けの皮は剥げてましたか、来るとき結構気を付けていたのに」
「他の方でしたら、自信はありませんが、あなた様でしたら…あなた様のコレクションは一度見たことがあります」
「そうでしたか?しかし、失礼ですが、あなたの立場で、私のコレクションを見ることなどできないのではありませんかね?」
「地方にも巡回展とはあります、あの時貸し出しを許可してくださいませでしたら、私はあのように素晴らしいものは、この目で見ることはできませんでした。それは大変感謝いたします」
「美術品はお好きなのですか?」
「面白いですわね、集めたくなる気持ちはわかるような気がします。節約してチケットを買った甲斐があったと思いますよ、お話も聞きたくて、ギャラリートークの日にしましたから、混みあって大変でしたけども」
そういってギャラリートークで聞いた話に、自分の感想を軽くつけた。
「私には美術に関する学がありませんので、解説は非常に助かりました」
「ハッハッハッハッ」
それを聞いて男性は笑いだした。
「失礼、どういう女性が領主殿の妻になるのか気になってましたが、面白いお方ですね」
「すいません、楽しくて」
「いやいや、正直私は所蔵品の貸し出しもあまり積極的ではなくてね、見たところでこの価値がわかるものかって、ひねくれたところがありましたが、あなたにはその価値が届いたようだ、そういう意味ではこちらからお礼を申し上げたい、長く生きていると思いがけないプレゼントをいただくことがあるが、これはなかなかのものをいただけた」
その後に。
「結婚生活はどうですかな?」
「そうですね、いきなり結婚することになりましたが…」
夫である領主を見てから。
「幸せをいただけています。ですから旦那様にも幸せになっていただきたいです」
「フッフッフッ」
その言葉に心にみるみる幸せが溜まりこんでいるから、こんな笑いが領主から出ていた。
「でもその結婚の始まりは…失礼ですが、玉の輿?それとも自棄だったのではありませんか?」
「玉の輿はありません、そういう考えでは領主の妻はつとまらない。自暴自棄は少しあったような気がします」
どうせこんな私ならば…
「そういう考えを聞くと僕はとても悲しくなります」
「すいません、旦那様」
「まるでママゴトですな」
「そうですね、幸せな家庭と言うものが私にはわからないので、たぶんこれがそうなんだろうなと思いながら、日々やっていってる。そこがママゴトに見えるのでしょう」
「死ぬまでそれをずっと続ける覚悟をしなさい、そこまでやれば誰もあなたに口を出せるものはないでしょう」
「さすがにそれは言い過ぎです」
「おかしいですかな?」
「旦那様、おかしくはないんですよ、ここはそういう世界ですから、そこまで言ってくださるのはむしろ認めてるからですよ」
「でもさ…」
「領主殿は出来る男だが、そういうところがあるから、有事の際には活躍するだろうが、平時は地方にいてほしい」
この言い方からわかるように、領主の話を持ってきたのがこの人である。
「旦那様には平和が似合うと思いますよ」
「ふむ、なるほど、この辺が君が妻になるように決まった要因なのかもしれないな」
領主の妻の親代わりの人たちももちろんこの男性は知っているし、少しは話を聞いていた。
何故にそこまでに推すのか。
「骨抜きにされるには、少々見た目が地味ではないかと思ったが、あなたの魅力はそうではない、悪路を上手いこと乗りこなす安定感にあるのかもしれない」
「それはあるでしょうね、大変だなと思うことが少なくなりました」
「この部分は認めるしかない、もしもあなたが男性でしたら、婿になってほしいぐらいだった」
「それは僕が困るからやめてください」
「領主殿が領主ではなくなったとして、ただ一人の男であっても、付き添うのはこういう女性かもしれないね」
「旦那様はもっと美人さんをお嫁さんにした方がいいとは思いますけどもね」
「おや、どうしてだい?」
「そういう方と話していると、楽しそうにしているから、なんで私なんかと結婚したんだろうなとは思います」
「それについては…」
「美人が好みなのは否定はしません。が、もしもその時に、彼女に誰か男が話しかけにでも来たら、ただちに駆けつけることでしょ」
「意外と嫉妬深いんだな」
「こればっかりは自分でも驚きです、正直、こんな自分初めて知りましたよ」
そこで初めて男性は、領主のしっかりとした部分を見たと言う。
「なるほど私の目の方が節穴だったか」
「えっ?」
「夫婦の仲に口を挟むものではないということだよ、領主殿に、奥方、仲良くおやりなさい、喧嘩はすることはあるかもしれないが、それでもお互いのことを考えるように」
「わかりました」
「気を付けます」
「二人に似た子が出来たら、是非とも見せてもらいたい」
「…それは出来るかはわかりませんわ」
少し頬を赤らめていった。
「こちらは毎晩善処はしておりますが」
「そこは毎晩なんてつけなくてもいい!」
「すいません」
「無理に実子にこだわる必要もないから、それで不仲になったらどうしようもないだろ?」
「それはそうですが…」
「跡継ぎはどこでも抱える悩みだ、確かに…領主夫妻の子供となれば、うちの役目を継いでくれで大人気になそうだが」
「その時が来なければわかりませんけど、判断や理解が出来て、納得して決めてくれることが望みではあります」
「確かにそうだな、もうこんな時間か、今日は有意義だった、また会おう」
そういって男性は去っていった。


「ねぇ」
「なんですか?」
「手を繋いでいい?」
「今の私、すごく手が冷たいですよ」
「えっ?…本当だ」
「さすがにさっきのは緊張しました」
「ごめんね」
「あなたは悪くないでしょ」
「でもさ」
「ああいう感じで言われるのだろうなってわかって、あなたの妻をしております」
「君に何かをいう人はあまり好きではないよ、正直あの方は僕を気に入ってくださるのはわかる、けども、君にあのような態度を取るのはいただけないな」
「あの方は重鎮ですから、色んなことを考えなければなりません。ただそれを理解出来るかっていうと難しいかと、ええっときちんとしっかりしているのか、将来的なことを見据えると、知らなければならないから、ああいう聞き方をした。けども、それを見てどう思うかってやつですね」
「そういう意味では僕には向かない役柄である」
「旦那様は平和が似合うんですよ、そのままのあなたでいてくれたら…とは個人的には思います」
「そうではない時があるか…」
「ない方がいいんですがね」
その後は難しい話をせずに、帰ってくるまで楽しい話をした。
こんな時はそれが大事。
それがコツなのである。
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