浜薔薇の耳掃除

Toki Jijyaku 時 自若

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夢に浸れぬほどの現実

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あっ、あれはどこにいった?
ガサゴソと探していると。
「これかな?」
「あぁ、それです」
「はい、どうぞ」
「どうも…」
スーハー
「で?」
「で?って?」
「なんでここに?ってことです?」
「俺がここにいたらダメなの?」
「ダメと言いませんけども、こんなところに用はあったんですか?」
「俺はいつでも神出鬼没だよ!」
知らなかったかな?
「それは…知りませんでした」
「まっ、本当は君が動いているから、何かあったのかなって思ってね」
「はっはっはっ」
「深くは聞かないよ」
察するだけだよ。
「あなたはそういうところがある」
「そう?」
「そうですよ、人が理解できないものを理解する強みがある」
「それじゃあ、まるで俺が変人みたいじゃないか」
「そうでは?」
「そうだけどもさ、ほら、改めて言われるとなんかイヤっていうのはあるじゃないか」
「それはわかりますけどもね、それじゃあ、上手いこと隠しながら、世間とやっていけばいいじゃないですか」
「今さらそれは無理だよ」
「…大変ですね」
「そういう意味では俺の方が重症だね、忘れられないし、捨てられない」
「こっちも忘れたくもないし、捨てたくもないんですが」
「君はそれでもあっさりと切り替えれてしまうんだろうな…」
「寂しい?」
「わざわざ聞かないでよ」
「はっはっはっ」
「そういうとこあるよね」
「気持ちの切り替えは大事なので」
「感情を選んでしまったら、…終わるからね」
「そうですね」
「終わるのか…ちょっとヤダナ」
「そうしたらまた始めたらいい」
「そうはいうけどもね」
「見切りはつかないけども、このままじゃダメだって思っているから、ここにいるのでは?」
「そうなんだけどもさ」
「そういう意味ではあなたはズルい人でもある」
「ズルいでもなんでもいいさ」
壁にもたれかかった。
「終りはとうに来ていた、でも終わってないって、そう思いたかった。けど、そういうもんですから」
「こうして言葉にするとさ、いかに自分が愚かなことをしていたのかよくわかる、未来を、可能性を削ってまで、今を維持する理由がないっていうかさ」
「人は時として、いえ、合理的ではないことをする方が多いし、その方が共感を得られるんですから、幸せなんですよ」
「けどもさ、その幸せも、浸れているうちはいいよ、夢に浸れぬほどの現実がバーンって目の前に来ちゃったら…でもそれでも覚めない人はいるから、あそこまでいくと才能っていうのかな、すんげぇ羨ましい」
「あなたほどの人がそういうとは思いませんでしたね」
「そう?そういうのは大事にしたいじゃない」
「いいんじゃないんですか?それで」
「あ~ちょっとバカにしたでしょ?」
「いえいえ、可愛らしいと思いまして、それこそ人の大半が感情的に判断してしまう場面で、利を取るような選択をするように、まっ、そうじゃないと務まらないことをしてますからね」
「お金と権力か…」
「今はリスクを取れる人たちが祭りを楽しんでいるので、こっちはその間に動いてるって感じだね」
「あぁ、それでか」
「なんです?そういうのがわからずにこちらに来ていたのですか?」
「そうだね。君のやっていることはその時が来るまで、正直実感がないから、それこそ点と点が繋がって初めてわかるってやつ」
「変わってるな」
「なんでさ」
「その点も時間が経てばわからなくなってしまうのに」
「そうしたら君の跡を追えないだろう?」
「追う必要があるんですか?」
「ある」
「責任者だから?」
「それはそうなんだけどもね」
「そうはならないようにしていたので、見なかった、知らなかった、何もこちらは聞いてないで通せばいいのに」
「悪いことは別にしてないでしょ?」
「してたら、それは問題ですね」
「面白いことしているなら、いや、これからするならこっちも混ぜてって思ったね」
「えっ?」
「絶対楽しいことするんでしょって」
「楽しいことって」
「人の裏をかいて、アクシデントが起きたら、そこで躍進するつもりなんだろうなって」
「まあ、そうですね。そこら辺は今までの経歴を知ってご存じなのでは?」
「うん、そしてそれをただのラッキーとか、巻き込まれて仕方がなくこうなった。なんかが君の世間の評価じゃん」
「最初は嫌だったんですが、やってみると、その方が楽なんですよね。対応する手間がいらない」
「それに一枚噛ませてもらおうかなって」
「そんなことをしなくても生きていけますでしょうに」
「そう思う?」
「思いますよ、なんで首を突っ込んでくるんですか?」
「君に首ったけだから」
「上手いこといいましたね」
「自分でも上手く言ったと思ってるよ」
「いつもはそんなに饒舌ではないのに」
「ここまで来て、社交辞令を口にするのは何かおかしいよね」
「そうですか?」
「そうだよ。ただ一礼してそれで終わるとでも?」
「こっちはそれでいいですが?」
「俺が困るんだよ」
「…」
「呆れてる?」
「少し、こんなにおかしな人だとは思いませんでした?」
「そりゃあ普段は抑えているからね。君は北極星だよ、迷ったときほど頼りになる」
「そういうのは迷う前に見てくださいよ」
「それはそうなんだけどもね、あっ、そうそう、この辺に美味しい洋食屋さんがあるの知ってる?」
「あぁ、そういえばありましたね、移転したとかで」
「じゃあ、まずはご飯食べようぜ」
「わかりましたよ、ただご飯が美味しくなくなるような話はそこではしないということで」
「もちろんさ、じゃあ、何を食べようかな」
「移転前だと、イワシのオリーブ煮は美味しかったですけども」
「楽しみ、楽しみ!」
ウキウキする男を同行者はため息一つついた後、あきらめて、気持ちを変えることにした。
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