38 / 64
帰還と謁見と再会と。
しおりを挟む
アルファーフは帰還したその足で、そのまま国王との謁見の場に向かった。
当然、その傍にセザール・アレマーも付き従う。
ノータリニア王国国王ドン・コーク・ウベータは、部屋に足を踏み入れ、礼に則って王族特有の最上礼をみせた息子を、喜びのこもった眼差しで見ていた。
「アルファーフ・フォン・ウベータ、ただいま帰城致しました」
その姿みれば、ほんの数日前まであらゆる王族礼を忘れていたとは誰も思わないだろう、紛れもなく王族らしい王太子の姿がそこにあった。
「よくぞこの短期間で戻ってきたな」
国王はハリのある声で、息子に声をかけた。
「もう、大丈夫なのか?」
国王の問いにアルファーフ第一王子は聡明さを湛えた碧眼で、父を見据える。
「一応は。正直に申しますと、気を緩めると未だ引き摺り込まれそうになる部分はございます」
国王のすぐ横に控える宰相が心配そうに顔を歪める。
「しかし現状は私が抑え込める程度なので問題ないかと••••••」
接触さえしなければ
そこに、セザール・アレマーも言葉を乗せる。
「僭越ながら殿下から承諾をいただきまして、当面は私が寝食を共にいたします」
決して接触させません
強い決意を滲ませる若い2人の様子に、大人達は顔を見合わせる。
「では、当面そのように。ところでセザールよ、王太子妃部屋は使うのか?使うのであれば部屋付きの女官を寄越すが」
国王は揶揄うようにセザール・アレマーに問うが、本人は至って真剣に
「ダミーとして使用しますが、私自身は殿下の部屋を生活の場とする所存でございます」
2人の間でどのような話があったのかは国王にも宰相にもわからなかったが、セザール・アレマーの話を聞いているアルファーフは、穏やかな表情で、驚きも嫌悪もない様子だった。
(••••••いいのか?)
(計画的には最良の状況ではないでしょうか••••••良いかどうかはともかく•••)
(あの日までは••••••そうだな)
「では、そのように。今後のことについてはアルファーフもセザールも分かっておろうな?」
国王の言葉に、アルファーフは王族礼を、セザール・アレマーが貴族最高礼をとる。
それを満足そうに見やってから、国王は息子に声をかけた。
「それからアルファーフ、お前が申請してきた件は、取り下げろ。私は承認せぬ」
アルファーフが療養中、秘密裏に国王へ申請していた件についてである。
セザール・アレマーはやっぱりという表情だったから、アルファーフはポカンとした。
「な、何故です父上?!あれが妥当です•••いえ、妥当というのは烏滸がましいですが••••••」
何とか申請を通して欲しいと言うアルファーフとその隣のセザール・アレマーに、国王陛下は暖かいのに冷たい声を飛ばした。
「ゆるさぬ」
当然、その傍にセザール・アレマーも付き従う。
ノータリニア王国国王ドン・コーク・ウベータは、部屋に足を踏み入れ、礼に則って王族特有の最上礼をみせた息子を、喜びのこもった眼差しで見ていた。
「アルファーフ・フォン・ウベータ、ただいま帰城致しました」
その姿みれば、ほんの数日前まであらゆる王族礼を忘れていたとは誰も思わないだろう、紛れもなく王族らしい王太子の姿がそこにあった。
「よくぞこの短期間で戻ってきたな」
国王はハリのある声で、息子に声をかけた。
「もう、大丈夫なのか?」
国王の問いにアルファーフ第一王子は聡明さを湛えた碧眼で、父を見据える。
「一応は。正直に申しますと、気を緩めると未だ引き摺り込まれそうになる部分はございます」
国王のすぐ横に控える宰相が心配そうに顔を歪める。
「しかし現状は私が抑え込める程度なので問題ないかと••••••」
接触さえしなければ
そこに、セザール・アレマーも言葉を乗せる。
「僭越ながら殿下から承諾をいただきまして、当面は私が寝食を共にいたします」
決して接触させません
強い決意を滲ませる若い2人の様子に、大人達は顔を見合わせる。
「では、当面そのように。ところでセザールよ、王太子妃部屋は使うのか?使うのであれば部屋付きの女官を寄越すが」
国王は揶揄うようにセザール・アレマーに問うが、本人は至って真剣に
「ダミーとして使用しますが、私自身は殿下の部屋を生活の場とする所存でございます」
2人の間でどのような話があったのかは国王にも宰相にもわからなかったが、セザール・アレマーの話を聞いているアルファーフは、穏やかな表情で、驚きも嫌悪もない様子だった。
(••••••いいのか?)
(計画的には最良の状況ではないでしょうか••••••良いかどうかはともかく•••)
(あの日までは••••••そうだな)
「では、そのように。今後のことについてはアルファーフもセザールも分かっておろうな?」
国王の言葉に、アルファーフは王族礼を、セザール・アレマーが貴族最高礼をとる。
それを満足そうに見やってから、国王は息子に声をかけた。
「それからアルファーフ、お前が申請してきた件は、取り下げろ。私は承認せぬ」
アルファーフが療養中、秘密裏に国王へ申請していた件についてである。
セザール・アレマーはやっぱりという表情だったから、アルファーフはポカンとした。
「な、何故です父上?!あれが妥当です•••いえ、妥当というのは烏滸がましいですが••••••」
何とか申請を通して欲しいと言うアルファーフとその隣のセザール・アレマーに、国王陛下は暖かいのに冷たい声を飛ばした。
「ゆるさぬ」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
白い結婚のはずでしたが、いつの間にか選ぶ側になっていました
ふわふわ
恋愛
王太子アレクシオンとの婚約を、
「完璧すぎて可愛げがない」という理不尽な理由で破棄された
侯爵令嬢リオネッタ・ラーヴェンシュタイン。
涙を流しながらも、彼女の内心は静かだった。
――これで、ようやく“選ばれる人生”から解放される。
新たに提示されたのは、冷徹無比と名高い公爵アレスト・グラーフとの
白い結婚という契約。
干渉せず、縛られず、期待もしない――
それは、リオネッタにとって理想的な条件だった。
しかし、穏やかな日々の中で、
彼女は少しずつ気づいていく。
誰かに価値を決められる人生ではなく、
自分で選び、立ち、並ぶという生き方に。
一方、彼女を切り捨てた王太子と王城は、
静かに、しかし確実に崩れていく。
これは、派手な復讐ではない。
何も奪わず、すべてを手に入れた令嬢の物語。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
勝手に勘違いして、婚約破棄したあなたが悪い
猿喰 森繁
恋愛
「アリシア。婚約破棄をしてほしい」
「婚約破棄…ですか」
「君と僕とでは、やはり身分が違いすぎるんだ」
「やっぱり上流階級の人間は、上流階級同士でくっつくべきだと思うの。あなたもそう思わない?」
「はぁ…」
なんと返したら良いのか。
私の家は、一代貴族と言われている。いわゆる平民からの成り上がりである。
そんなわけで、没落貴族の息子と政略結婚ならぬ政略婚約をしていたが、その相手から婚約破棄をされてしまった。
理由は、私の家が事業に失敗して、莫大な借金を抱えてしまったからというものだった。
もちろん、そんなのは誰かが飛ばした噂でしかない。
それを律儀に信じてしまったというわけだ。
金の切れ目が縁の切れ目って、本当なのね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる