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第二十三話

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「くあぁあ…」

「朝食です」

「ありがとう」

翌朝。

ぐっすり眠って目が覚めた俺は、世話係が運んできた朝食を食べた。

その後着替えて部屋から出て、アレルの部屋の前にやってきた。

「アレル様。お願いです。出てきてください」

「アレル様。朝食をお持ちしました」

「アレル様。心配ですのでお顔をお見せください」

「…うるさい!!放っておいてくれ!!!」

そこでは世話係とアレルの攻防が行われていた。

世話係たちが部屋の前でアレルに何度も声をかける。

だが、アレルは鍵を開けることなく、部屋の中から怒鳴り声をあげるだけで出てこない。

「「「はぁ…」」」

最終的には世話係たちは、朝食や着替えを持って、ため息を吐いてどこかへ行ってしまった。

「おーい、アレルー?どしたんだー?」

世話係が去った後、俺はアレルの扉の前に立つ。

「一体何があったんだよ?話を聞かせてくれよ」

「…グレンか?」

部屋の中からアレルの元気のない声が聞こえてきた。

「ああ、そうだ。ここを開けてくれ。何があったのか話を聞かせてくれよ」

「…俺を揶揄ってるのか?何があったのかだって…?昨日の訓練をみたろ?」

「…悪いが見てないんだ。ちょっと王都を散策しててな。何があったんだよ」

「…俺は勇者じゃない。勇者になんか向いていない」

「え…」

「放っておいてくれ…俺に戦いの才能なんてない……魔王から世界を救う力なんてないんだ…」

「…」

いや本当に何があったんだよ。

『世界の終わりの物語』のストーリーにおいて、主人公アレルが王都にきてからその後は、自らの運命を使命を疑うなんて描写は一回も出てこない。

なのにアレルが突然こんなことを言い出すなんて。

どこでどう歯車が狂ったんだ…?

「あ…」

そこで俺は一つの可能性に行き着く。

そういえば、あのイベント…

王都にくるときに魔族と遭遇したイベントで、アレルが覚醒しなかったため、俺が魔族を倒し、アレルにその功績を押し付けた。

もしかしたらあそこから歯車が狂ったとか…?

「うーん…だが、あそこはああするより他に無かったような…」

あの場面で俺が防寒を決め込んでいたら、まず間違いなくアレルもアンナもお告げの巫女も死んでいただろう。

アレルの力が覚醒しなかった以上、魔族は俺が倒すしかなかった。

あの場面でアレルの力が覚醒すればなんの問題もなかったのだが…

「そしておそらくアレルの力が覚醒しなかったのは、俺やアンナが死ななかったから、か…うーん…どうしようもないな」

魔族との戦いでアレルに覚醒を促したのは、確かもうこれ以上大切な人たちを失いたくない、という強い感情だったはずだ。

けれど俺が自分自身とアンナを救ったおかげで、村は確かに甚大な被害を受けたが、アレルにそこまで心的ダメージを与えなかった。

それによりアレルの覚醒がここまで遅れてしまっている、と。

「俺はどうしたらよかったんだ…」

「…ん?何か言ったか?」

「いや、何も」

「…今は1人にしてくれないか?」

「…わかった」

俺はアレルの部屋から離れる。

まぁ、しばらくは放っておこう。

アレルもいつまでもあそこに引きこもっているわけにもいかないだろうし、そのうち出てきて訓練も再開するだろう。


「あっ…ごめんなさいっ」

「え…」

部屋に戻ると、ドレス姿の見知らぬ女の子がそこにいた。

俺は一瞬硬直したのちに、何が起きたのかを把握する。

「べ、別に何かを盗ろうとしたわけではないんです…ただ、お会いして話したいことがあって…」

「第二王女の…クレア様、ですね…」

「あっ…私のことをご存知なんですね…!」

「それはもう」

そこにいた白いドレス姿の可愛らしい少女の名前は、クレア。

この国の第二王女である。

クレアは、『世界の終わりの物語』において一、二を争う人気ヒロインである。

金髪碧眼。

低身長でありながら胸はそこそこあるというある意味で男の理想を形にしたような体型。

あるイベントをきっかけにいて親睦を深めることになるクレア王女とは、攻略を進めていけば最終的にキスをしたり結婚したりすることが出来るようになるのだ。

「ええと…どうしてここに…?」

好きなヒロインの1人が目の前に生きて存在しているという事実に俺は若干の感動を覚えながら、クレア王女がなぜここにいるのか問う。

クレア王女は、モジモジと言いにくそうに体を捩りながら、か細い声で言った。

「あなたに頼みたいことがあって……その…私をこの城から連れ出してくださらない…?」






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