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第三十九話
しおりを挟むその日。
朝食をとった俺が王城の中庭にきてみると、いつもそこのあるはずのアレルの訓練姿がなかった。
俺は近くにいたアンナに声をかける。
「アンナ。今日はアレルはどうしたんだ?訓練はないのか?」
「あー、その、今日は城内での訓練じゃなくて、王都の外で実践訓練をやるんだって」
「実践訓練…あー…」
そういやそんなイベントがあったな。
修行編における実践訓練。
ある練度に達すると発生するイベント。
王都の外に出て森の中でモンスターと戦ったりするのだ。
確か実践訓練の初日に重大なイベントが起こり、アレルに1人…いや、一匹の仲間が出来るのだが…
「放っておいても大丈夫なんだろうが…少し心配だな」
アレルはもうほとんど勇者としての力を覚醒させているし、放っておいてもこのイベントは無難にクリアしてくれるだろうと俺は踏んでいた。
しかし万が一があるとも限らない。
何かの歯車の狂いが影響してくる可能性がある。
「なぁ、アンナ…俺たちもついていってみないか?実践訓練」
「え…?」
「ここにいても退屈だろ?」
「そんなこと出来るかな…?邪魔になったりしない?」
「アレルに頼みこめば大丈夫だろ」
俺はアレルが今回のイベントを無事に1人でクリアするのを見届けるために、初めての実践訓練のついていくことにした。
それから一時間後。
俺はアレルと共に、たくさんの騎士に守られながら王都を歩いていた。
今から王都の外に出て、森の中でアレルの実践訓練が行われるのだ。
「見ろ…勇者様一行だ…」
「一体誰が勇者様なのだろうか…」
人々は、俺たち一行に道を譲りながらキラキラとした眼差しを俺たちに向けてくる。
「ふふん」
アレルは鼻息を漏らし、胸を張って少し偉そうにしながら歩いている。
「悪かったな、アレル。無理言ってついてきちまって」
そんなアレルの後ろを歩く俺は、声を顰めてアレルに礼を言った。
護衛の騎士たちは最初、足手纏いになりかねない俺とアンナの動向を渋ったが、アレルが説得することで、俺たちは最終的に同行を許可されたのだった。
「どうしてもお前の勇者としての活躍が間近でみたくてさ…」
「別にいいぞ、グレン」
アレルはこちらを身もせずに言った。
「前にも言ったけど、俺とお前は今でも親友だ。今は俺は世界を救うことになる勇者で、お前はただの村人で、立場も違うけど…でも俺はまだお前のことを親友だと思ってるからな。安心しろ」
「お、おう…?」
前から思ってたが、なんかこいつ態度がデカくなったよな…
いや、自信がついてきたということならいいのだが、慢心して失敗をやらかさないか心配になるんだが。
「た、楽しみだぜ。お前の力が見られるのが」
「ふん…まぁ、見てろよ」
アレルが鼻を鳴らす。
俺たち一行はそのまま王都を出て、草原地帯を進み、その先にある森へと入っていった。
先頭を歩くのは剣を構えたアレルと、数名の護衛の騎士たち。
俺たちは邪魔にならないよう背後からついていく。
「お気をつけください、勇者様。我々はすでにモンスターの生存領域にいます」
「周囲に十分の注意を払ってください。モンスターがどこから現れるか、分かりませんから」
「まぁまぁ、大丈夫だろ。俺は勇者だぞ?今更その辺の雑魚モンスターに負けないって」
騎士たちの忠告も虚しく、アレルは特に警戒することなく森の中を突き進んでいく。
「あいつ大丈夫か?もう少し注意して歩いたほうが…」
「…そうだよね。なんか最近のアレル、すっかり変わっちゃった」
俺がアレルの背中を見守る中、隣ではアンナが少しがっかりしたようにそう言ったのだった。
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