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第六十三話
しおりを挟む「はぁ、はぁ、はぁ…もう、無理だよっ…」
「頑張りなさい、システィ!!もう一踏ん張りですわ…!!」
「で、でも…体力が限界で…!!」
「もうすぐで終了時刻です…!!私たちの目的を思い出しなさい!!なんとしてでも最後まで生き残るのですわ…!!」
システィとヴィクトリアの2人が森の中を走っている。
追っては三人。
上級生のチームに追われていた。
逃走劇が始まったのは、約20分ほど前。
『もう時期で魔導祭終了時刻ですわ』
『やった…!最後まで生き延びられそうだね…!!アリウスくんは大丈夫かな?』
『彼の心配は入りませんわよ。きっと多くの生徒を撃破していることですわ』
魔導祭終了の時刻が近づき、気を緩めた2人がそんな会話をしている最中に、いきなり頭上から襲われた。
どうやら獲物が近づいてくるのを、木の上で待ち伏せしていたらしい。
まんまと不意打ちを食らった2人は、危うく気絶し、脱落しかける。
だが、システィの回復魔法によってなんとか意識を繋ぎ止め、その場から離脱。
しかし、すぐに木を降りた上級生チームが追ってきて、逃走劇が始まったという次第だった。
魔導祭も最終盤となり、2人は体力、魔力共に限界が近づいてきていた。
特に回復魔法を連発したシスティの疲労が顕著だ。
ここまでなんとか逃げ延びてきたが、段々と走る速度も落ちてきている。
このままでは追いつかれてしまう。
となると迎え撃つしか手はないが、相手は上級生のチームだ。
正面から挑んでも勝ち目はない。
ヴィクトリアが表情を顰める中、ついにシスティに限界が訪れる。
「あっ…」
地面に張り巡らされた木の根に足を取られ、転んでしまう。
「ま、待って…」
必死に起き上がって走り出そうとするシスティだが、もう体力は残っていなかった。
「システィ!?」
慌てて戻るヴィクトリア。
「ほら、立って…!!たちなさい!!もう少しなのです!!逃げますわよ!!」
システィの腕を掴んで必死に立たせようとするが、しかし、システィはフルフルと首を振った。
「私はもう無理…お願いヴィクトリア…あなただけでも逃げ延びて…!!」
「ダメですわ!!2人で必ず生還するのです!!」
「無理だよ…!もう体が少しも動かないもん…!」
「…っ…仕方ありませんね…」
ヴィクトリアがシスティの腕を離した。
「うん…逃げて…2人脱落するよりも私だけの方が…って、え…?」
てっきり逃げるものだとばかり思っていたヴィクトリアがシスティを庇うように前に出たので、システィは戸惑ってしまう。
「ヴィクトリア…?」
「こうなったら迎え撃つしかありませんわ」
「な、何言ってるの!?」
「もうすぐなのですわ!!もうすぐで魔導祭は終了するのです…!!それまで何とか…私がここで耐えて…」
「絶対に無理だよ!?相手は上級生なんだよ!?三人いるんだよ!?私を守りながら生き残れるはずない…!!」
「うるさいですわ!!そんなの言われなくてもわかっているのですわ!!」
「わかっているなら逃げてよ!!早くっ…!!」
「でも私はあなたを…見捨てたくないのです
わ…!!ここで逃げて勝利を掴んでも、それは本当の勝利ではないのですわ!!」
「…っ」
ヴィクトリアの覚悟を決めたような横顔にシスティは何も言えなくなってしまう。
「やるしかないですわ…正念場ですわよ…」
ヴィクトリアは自分を奮い立たせるようにそう言った。
やがて前方の茂みから、三人の影が姿を表す。
「ようやく捕まえたぞ…子猫ちゃんたち…」
「ったく…どんな逃げ足だよ…手こずらせやがって…」
「でもこれでおしまい。残念だったわね。終了時刻まで逃げられると思った?」
2人を追い詰めた上級生たちが、ゆっくりと近づいてくる。
ヴィクトリアは、体の中で魔力を熾しながらごくりと唾を飲み込んだ。
なんとしてでも守りきる。
システィを守り、2人で生き延びるのだ。
そんな決意を固める。
「最後にお前ら2人を始末して」
「今年の魔導祭はおしまいだな」
「動かないでね?そんなに痛くしないから」
次の瞬間、三人が同時に魔法を放ってきた。
「…っ!!」
ヴィクトリアは瞬時に防御魔法を展開して、システィを自分を守る。
「へぇ…」
「おぉ…」
「なかなか…」
三人の同時攻撃を防ぎ切ったヴィクトリアに、上級生たちは感心したような声を漏らす。
「俺たちの攻撃を防ぐとは」
「下級生にしてはやるな」
「今のは驚かされたわよ。あなた、下級生の中でも相当に優秀な方ね」
「お褒めに預かり光栄ですわ…」
ヴィクトリアは必死に疲弊を隠しながらそう返す。
魔力も体力も、もうほとんど限界に近かった。
ゆえに、ヴィクトリアは三人が自分の力を見誤って不必要に警戒する、と言う最後の賭けに出たのだった。
「この分だと攻撃魔法も相当強力なのを持ってるな?」
「迂闊に近づくのは危険」
「でもこの距離なら回避なできる」
上級生たちは顔を見合わせた。
そしてヴィクトリアから一定の距離をとりながら周囲に展開する。
そして合図と共に一斉に魔法を放ってくる。
「くっ…」
ヴィクトリアは再び魔法を展開して自分とシスティを守る。
しかし、三人がそれぞれ距離を置いた状態で状態で魔法を放ってくるため、防御魔法の展開範囲も広くなり、その分魔力消費も激しくなる。
ヴィクトリアの残り少ない魔力は見る間に削られていった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
ヴィクトリアは洗い息を吐きながら魔法を維持し続ける。
肌から段々と血の気が抜けて、魔力欠乏症の症状が出始める。
「もういいよっ…もう十分だよヴィクトリアっ…逃げてよ…お願いっ」
回復魔法をかける魔力の残っていないシスティが、悲鳴のような声をあげる。
その時だった。
「待たせたな」
乾いた音がなった。
「うおっ!?」
「ぐっ!?」
「きゃっ!?」
どこからか飛来した魔法が、ヴィクトリアをリンチする三人を捉えた。
三人の上級生たちは悲鳴と共に吹き飛ばされ、そのまま意識を落とす。
「まさか…!」
「…っ!?」
2人は魔法の飛来した方向を仰ぎ見る。
そして驚きに目を見開いた。
「アリウス!?」
「アリウスくん!!」
「よお。無事だったみたいだな。間一髪ってところか?」
茂みから姿を現したアリウスが、ニヤリと笑った。
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