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第六十八話
しおりを挟む毎年恒例のイベントである魔導祭は、映像の魔道具によって帝都の至る所で映像として流されていた。
「「「「ウオオオオオオオオ!!!」」」」
日々娯楽に飢えている人々は、優秀な帝国魔術学院の生徒たちが魔法や知恵を駆使して戦っている様を見て興奮し、雄叫びをあげる。
森のフィールドのあちこちに木や岩、地面に埋められる形で存在している魔道具から送られてくる映像は、たびたび視点が切り替わる。
戦いから戦いへと、人々を飽きさせないように森のフィールドの至る所で行われている魔法戦が流されているのだが、しばらくすると人々はとある生徒の登場回数が異様に多いことに気づく。
「お、おい…またあいつだ…!!」
「殺気の強い奴だぞ…!!」
「一瞬で三人を葬った下級生だ…!!」
「また戦うみたいだぞ…!!」
「どうなってるんだ?何者なんだあいつは…?」
アリウスだった。
ほとんどの生徒がフィールド内を慎重に歩みを進める中、アリウスだけが無造作に、無警戒にフィールド内を走り回る。
そして会敵したチームを数分と経たずに全滅させ、また次のチームを探すべく森の中を疾駆するのだ。
人々は、次第に圧倒的なアリウスの戦いの虜になっていき、歓声を上げてその芸術的とも言える戦いを見守る。
「うおおおおお!!すげぇ!!」
「何だ今の魔法は!?」
「火が出たと思ったら水柱が…!!あいつダブルじゃないか…!?」
「すごいな、圧倒的だ…!!」
「さっき擦り傷を光魔法で回復していたような…」
「ははは、馬鹿言え。それが本当ならあいつは歴史上に数人しか存在しないトリプルってことになるぞ?そんな逸材がそうそう現れるものかよ」
「でも、実力は本物だぞ…さっきは罠にかかって誘き出されたってのに、あっという間に倒しちまった…」
「これだけ力の差があると、戦略もクソもないな。無双状態じゃないか」
1人、また1人とアリウスに薙ぎ倒されていく生徒たち。
その様子は帝都の至る所で映像として流され、人々は1人の圧倒的実力者の無双っぷりにため息すら漏らすのだった。
「すごいですね、彼は」
「当然だろう。あの年齢で付与魔法まで使えるのだぞ?これくらいやってもらはなくては困る」
帝都の一角。
フードを被った2人の人物が、人々に紛れながら魔導祭の様子を見ていた。
お忍びで下町へと降りてきたクラウス第一皇子とその従者だった。
執務の息抜きにと、クラウスは窮屈な城の執務室を抜け出して、街へと降りてきたのだ。
そして庶民の食べ物を口にしながら、魔導祭の映像を従者と共に眺めていた。
「しかし、あれほどの実力者を帝都に招き、恩を得るとは…流石のご慧眼です」
従者がクラウスを誉める。
絶賛大活躍中のアリウスを見て、唾をつけておいたクラウスの先見の明に感心しているのだ。
クラウスはふっと微笑んだ。
「あれほどの魔剣を作り出す人材を田舎で燻らせておくには勿体無いからな」
「しかし…すごいですね…年がいくつも上の上級生たちがまるで歯が立っていない」
「ここまで強いと他の生徒が可哀想になってくるな」
「そうですね。アリウス・エラトールは魔法使いとして他の魔術学院生徒よりも一段も二段も上のステージにいるようです」
「帝国魔道士団の魔法使いと互角に渡り合えるくらいの実力は兼ね備えているかもな」
「ははは。クラウス様。流石にそれは大袈裟では?」
「…」
「…え、本気ですか?」
従者は自らの主人の表情を二度見するが、クラウスに冗談を言っているような気配はなかった。
従者は口を引き結んで、映像に集中する。
「あ…!!」
しばらくして、従者は映像に自分の知っている人物が映ったのを見て声をあげた。
「ぶ、ブロンテ様!?」
第七皇子のブロンテだった。
魔術学院の生徒ではないはずなのに、制服を着て森のフィールドを闊歩している。
「これは一体…?」
「私が教えたんだ」
従者の疑問に応えるようにクラウスが言った。
「魔術学院にお前より強い魔法使いがいるかもしれない、と」
「そ、そのようなことを…」
従者は目を見開いた。
ブロンテの実力と、他の強い魔法使いに目がないその性格を知っているからだ。
「予想通り権力を使って無理やり魔導祭に飛び入りしたようだな。アリウスと戦うためだろう」
「ま、不味いのではないですか…!?もしお怪我でもされたら…陛下がご心配なさって…」
「大丈夫だろう。ブロンテもまた魔法の傑物だ。そこらの愚物のような生徒には遅れは取らないだろう。むしろ私は見てみたいぞ。我が弟とアリウス・エラトールの戦いを…」
「…っ」
主人がこういうのだからどうしようもない。
従者は、固唾を飲んでアリウス同様生徒たちを薙ぎ倒しながら森の中を徘徊するブロンテを見守る。
やがて人々は、魔導祭最終盤で、アリウスとブロンテの正面衝突を目にすることになり、帝都の興奮は最高潮に達するのだった。
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