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第八十二話

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立て続けに爆音が響き渡る。

エレナに追い詰められ、自陣へと引き返してきたカラレス兵に、俺は容赦なく魔法を打ち込んでいく。

「「「うぎゃぁあああああ!?!?」」」

「「「うわぁああああああ!?!?」」」

周囲にはカラレス兵たちの悲鳴が充満し、完全に混乱状態の彼らは、もはや統率もない状態で四方八方に逃げていく。

「ば、化け物が…」

「エラトール側の魔法使いか…」

「敵は1人だ…!一気にかかるぞ…!」

だが俺とてこちらに向かってくる兵士たちを全て仕留められるわけではない。

魔法の範囲攻撃からなんとか生き残ったカラレス兵の数名が、こちらへと近づいてくる。

これだけの距離近づいて終えば、高威力の魔法は使えないと踏んだのだろう。

「ルーシェ!!あいつらを頼む!!」

敵の数はまだまだ多い。

俺が攻撃の手を緩めて近くの雑魚に構っていると、向こうが隊列を成して襲ってこないとも限らない。

俺は接近してきた撃ち漏らしは、ルーシェに任せることにする。

「わ、わかりました…!」

頷いたルーシェが、近づいてきた数人に向かって魔剣を振った。

ゴォオオオオオオ!!!

その瞬間、巨大な火柱が兵士たちを襲った。

「「「ぐあぁああああ!?!?」」」

魔剣に付与された上級魔法をまともに食らった兵士たちは簡単に吹き飛ばされる。

「い、今のは…!?」

「魔剣だ!!」

「に、逃げろ…!!敵うわけがない…!」

魔剣の威力を見て、俺を倒そうと近づいてきていたカラレス兵たちが一斉に逃げ出した。

「ありがとうルーシェ!!引き続き警戒を頼む!」

「は、はい…!」

俺は目障りな生き残りを排除してくれたルーシェにお礼を言いながら、カラレスの陣に魔法を打ち続ける。

「…っ…なかなか…」

敵陣から飛来した魔法が、数メートル付近に落ちた。

俺が攻撃を開始した当初は混乱したカラレス兵は逃げるだけだったが、少し時間がたち、こちらに魔法を打ち返してくる者も現れた。

その威力は大したことはないのだが、当たれば無傷とはいかないくらいの殺傷力はあった。

俺は攻撃と同時に魔法の盾を展開し、自分とルーシェを守りながら戦う。

「…っ…これだと魔力消費が…」

「アリウス様…?」

俺の魔力も無尽蔵ではない。

魔法の盾を展開しながらだと、かなりの魔力を喰われてしまい、カラレス兵を全て仕留めるまで魔力が持つか、怪しくなってきた。

「どうにかならないのか…」

どこか一方的に魔法を打てる場所などあればいいが…

そんなことを思って周りを見渡したその時だった。 

「きゃっ!?アリウス様!!背後です!!」

「…!?」

森の中から黒い影が二つ、飛び出してきた。

ルーシェが悲鳴をあげる中、俺は咄嗟に魔法で対処しようと腕をそちらに向けるが…

「お、お前たちは…!!」

そこにいたのが、見覚えのあるモンスターたちだと知って慌てて魔法をキャンセルする。

「クロスケ!!クロコ!!お前たちか!!」

『ヴァフッ!!』

『ガウガウッ!』

森の中から現れたのは二匹の黒い獣。

俺がテイムしたモンスター、ブラック・ウルフのクロスケとクロコだった。

久しぶりの再会に、嬉しげに俺に体を擦り付けてくる。

「ははは…久しぶりだなぁ…って、待て待て。今はそんなことをしている場合じゃないんだ!!」

懐かしいもふもふの毛並みに、俺は一瞬呑気に再会を喜んでしまいそうになるが……慌てて自分が戦いに身を投じていることを思い出す。

「クロスケ!クロコ!!お前たちは危ないから下がってろ!!」

『ヴァフッ!!』

『ガウガウ!!』

「ん…?なんだ…?一緒に戦いたいのか?」

二匹をテイムしてから、俺は不思議なことに彼らの言わんとすることがなんとなく理解できるようになっていた。

どうやら二匹は、ここに残って俺と戦いたいようだった。

「そうは言ってもな…って、うおっ!?……い、今のは危なかった!!」

飛んできた魔法を慌てて魔法で打ち消す。

「わ、わかったよ…!よし、それじゃあ、クロスケ、クロコ。俺とルーシェと一緒に戦ってくれ!!」

『ヴァフッ!!』

『ワフワフッ!』

了解だ、というように頷く二匹。

「ルーシェ!!乗るぞ!」 

「ええっ!?」

俺はクロスケに、ルーシェはクロコの背中に乗った。

「あ、アリウス様…!?一体どうやって!?」

「ん?言ってなかったか。こいつらは俺がテイムしたブラック・ウルフ。クロスケとクロコだ」

「い、いつの間にテイムを…!?」

「今はいいから。よし、クロスケとクロコ。逃げるカラレス兵を追ってくれ!!」

『『ヴァフッ!!』』

俺が指示を出すと、テイム状態の2人に意志が通じて二匹は左右に散っていくカラレス兵の背中を追い出した。

「きゃあああああ!?!?」

初めて二匹の背中にのるルーシェは、振り落とされないのがやっとのようで、悲鳴を上げながら必死にクロコの背中にしがみついている。

「逃さないぞカラレス兵!!!悪いがお前たちはここで倒す!!」

早くも射程距離に入ったカラレス兵たちに、俺は魔法をお見舞いする。

「うわぁあああああああ!?!?」

「なんか来たぞ!?」

「モンスターに乗ってるだと!?」

「テイマーだ!!モンスターテイマーが追ってきたぞ…!!」

クロスケにのる俺を見てさらに混乱するカラレスの兵士たち。

迎え撃ってくることもなく我先にと逃げ出す彼らに、俺は容赦なく追撃するのだった。





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