89 / 118
第八十九話
しおりを挟むそれから五年の歳月が流れた。
「これより帝国魔術学院卒業筆記試験を開始する。よーい……始め!!」
「「「「……!」」」」
試験官の合図で、生徒たちは一斉に筆記具を手にして試験を開始する。
講堂にずらりと並べられた机には、ぎっしりと魔術学院の生徒たちが座っている。
今日は彼らの魔術学院生活の中で最も大事な日と言ってもいいだろう…卒業試験当日日。
帝国魔術学院は、入学よりも卒業の方が難しいというのは帝都に住んでいるものならば誰でも知っている常識だ。
卒業試験は筆記試験と実技試験の二段階に分かれており、まずは筆記試験が実施される。
筆記視点で一定点以上を取って合格しなければ実技試験に進むことができず、その時点で不合格となる。
不合格となった生徒は、帝国魔術学院を卒業することはできず、留年ということになる。
「…(皆かなり気合入っているな)」
かくいう俺、アリウス・エラトールも、今日卒業試験に挑んでいる生徒の一人だ。
帝国魔術学院での仲間たちとの学生生活はとても楽しく、五年という歳月があっという間に過ぎてしまった。
俺はチラリと周りの様子を伺うと、生徒たちは皆必死の表情で問題に臨んでいる。
「…(さて…俺もやりますか)」
ここ数ヶ月の間、俺はシスティやヴィクトリアと共に卒業試験対策に明け暮れていた。
ゆえに準備は万端で、どのような問題が出てきても対応できるように仕上げてある。
「…(よし、これなら…)」
ペラりと問題をめくると、目に入ったのはどれも解いたことのある問題ばかり。
俺が落ちるとしたら筆記試験なので、ここさえ乗り切れば卒業は堅いだろう。
これなら高い金を払ってもう一度下級性と二度目の授業を受ける羽目にならずに済みそうだ。
俺は自信を持って卒業筆記試験に挑んでいく…
「どうでしたか?」
「どうだった?アリウスくん」
五時間にも渡った筆記試験が終了した。
生徒たちが続々と講堂を出ていく中、俺の元にやってきたのはシスティとヴィクトリアだ。
この二人とは相変わらず友人関係が続いている。
思えば二人とも出会った時よりもかなり成長した。
二人ともより大人っぽくなったような気がする。
出会った当初はとても異性として見られるような年齢じゃなかったが、あれから五年が経過し、最近若干ではあるが二人のことを異性として意識してしまいそうになり、大変な日々が続いている。
「アリウス?」
「アリウスくん…?」
二人のよく育った胸に視線が吸い寄せられ、俺は慌てて首を振る。
いかんいかん。
俺はエレナ一筋。
目移りしてはいけない。
「す、すまん…何だって?」
「試験ですわよ。どうでしたの?」
「ちゃんと出来た…?アリウスくん。この中で1番筆記に弱いから」
「あぁ、試験のことか。そりゃそうだよな。うん…二人のおかげで、かなり自信あるぞ」
感触は抜群だった。
この分だと俺は実技テストに進むことができるだろう。
「そうですの。それは良かったですわ。みっちり教えた甲斐がありましたわね」
「そっかぁ。安心した」
二人は俺が筆記試験でやらかすのがよほど心配だったのか、ほっと胸を撫で下ろしてる。
「そういう二人はどうだったんだ?」
俺より筆記が得意な二人とは言え、やらかしている可能性も否めない。
念のためと思って俺が尋ねると。
「もちろん出来ましたわよ。おそらく満点でしょう
ね」
「全部解けた、かな?2周したし、間違ったとしても一門くらいだと思う」
「お、おう…そうか…」
聞いた俺が悪かったよ。
「ともあれ、これで三人とも実技試験に進めそうですわね」
「そ、そうだね…今から緊張する…」
「気が早いなぁ、二人とも。まぁ俺はともかく筆記試験さえ突破できていればいい」
「ここから大変なのは私たちですわよ、システィ。実技試験、頑張りませんと」
「そ、そうだね…試験官は…帝国魔道士団の魔法使いなんだよね?」
緊張した面持ちで来る実技試験に思いを馳せている二人。
「まぁ、大丈夫だろ」
筆記試験を二人に指導してもらう代わりに、実技の方に関してはここ半年間で俺がみっちりと二人を鍛え上げた。
またこれまでも学生生活を送る中で、定期的に二人に対人戦の指導をしてきた。
おかげで二人は、俺の師匠のエレナとまではいかないものの、他の同級生たちを寄せ付けないほどの実力は備わっているはずだ。
実技試験もおそらく簡単に突破することだろう。
「自分が余裕あるからと言って、随分と適当なのですね、アリウス」
「アリウスくんはずるいよ…私たちの気も知らないで」
「いやいや、俺は二人なら確実に受かると思ってるぜ?心配なら今日も指導するが?」
そういうと二人は顔を見合わせた後。
「お願いしますわ」
「し、心配になってきたから…今日もお願い。アリウスくん」
そんなふうに訓練を申し出てきた。
「了解。それじゃあ行くか」
俺は苦笑し、心配性な二人と共に訓練場へと向かったのだった。
14
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる