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第四十二話
しおりを挟む「ギルマス…それにガイズも…どうしたんですか?」
突然アルトリア家の屋敷にやってきたギルマスとガイズに、俺は理由を尋ねる。
「…っ」
ガイズは一瞬俺の顔を見た後、バツが悪そうに俯いた。
一方でギルマスは、聞いたこともないような猫撫で声で話しかけてくる。
「探したぞ、アルト…!まさかお前がアルトリア家の騎士になっていたとはな…ははは」
「はぁ」
「すごいなぁ…一体どうやったんだ?感心するぞ」
「あの…なんでここへ?」
「おっと、そうだった。油を売っている時間はない。単刀直入にいうぞ、アルト。喜べ。我がギルドは、お前の帰還を歓迎する」
「は…?」
一瞬言われている意味がわからなかった。
帰還を歓迎?
戻ってこいってことか?
気は確かか?
勝手な都合でクビにしたのはそっちだろ。
「いや、ちょっと何言ってるかわからないですね」
「む?伝わりにくかったか?青銅の鎧に帰ってきてもいいと、私はそう言っているんだ」
「いえ、そういうことでしたら、お断りします」
帰ってきてもいい、だと?
まるで俺が青銅の鎧に戻りたくて仕方がないみたいな言い草だな。
俺は今アルトリアに騎士として支えて、あんた方が払っていた給料の三倍を貰ってるんだ。
今更所属冒険者を食い物にするだけの青銅の鎧に戻るはずがない。
「なっ、断るだと!?なぜだ!?帰還を許すと言っているのだぞ!?」
断られるとは思っていなかったのか、ギルマスが焦ったような声を出す。
「いや、俺はもう、今の仕事に満足してるんで」
「わ、わかった…!給料に問題があるんだな!戻ってこれば、お前の給料を以前の2割ましにしてやる!これでどうだ?」
「お話にならないですね。帰ってください」
無論、たとえ以前の十倍と言われたって俺はもう青銅の鎧に帰るつもりはない。
彼らに見限られたときに、俺も同時に青銅の鎧を見限ったのだ。
「おい…アルト!!強がるなよっ!!ごねてないでさっさと青銅の鎧に帰ってこいよ!!お前みたいな無能を再雇用してやるって言ってんだよ!!!」
先ほどまで俯いていたガイズが急に怒鳴り出した。
なんか知らんが恨みのこもった視線で俺を見てくる。
こいつら、いったいなんなんだ?
行動が色々と矛盾している。
自分たちで俺を追放しておいて、どうして今更戻ってこいなんて話になる?
俺がはいはいと付き従うとでも思ってるのか?
「身勝手すぎるぞあんたら。追放したのはそっちだろ?今更戻ってこいと言われてももう遅いんだよ。俺は今アルトリアに騎士として仕えている。給料も三倍以上だ。あんたらのところに戻る理由なんてない」
「さ、三倍、以上…だと…」
ガイズが目を丸くする。
「嘘をつけ…お前みたいな無能がそんな高給をもらえるはずがない…見栄を張ってるんだろう?どうせ安い給料で買い叩かれているんだろう?なぁ?」
「うるさいな。どっちでもいい。あんたら邪魔だから早く帰ってくれ」
俺がいい加減相手するのをうんざりしていたその時だった。
「いったい何事ですか?」
「む?なんだ、あいつらは。我が屋敷の門の前で」
「「げっ!?」」
屋敷の中から、ニーナとカイルが出てきたのだった。
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