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第四十三話
しおりを挟む「なんだお前達は…私の屋敷の前で」
屋敷から出てきたニーナとカイルが、俺たちの元へとやってくる。
カイルは、訝しむような視線でギルマスとガイズを見た。
2人は、どこか居心地が悪そうに体を動かしている。
「ん…?お前ら、どこかで…」
カイルが、ギルマスとガイズの2人を見て、怪訝そうに首を傾げた。
それを見た2人は、ごくりと唾を飲んでいる。
カイルと2人は、面識があるのだろうか。
「アルト様。いったいどうされたのですか?この方達は?」
一方でニーナが、2人が誰なのか尋ねてくる。
俺は彼女に、これまでの経緯を簡単に話した。
「そう、だったのですね…では、この方がアルト様をクビに…」
ニーナがじろっと2人を睨む。
2人が恐れ慄くように、一歩後ずさった。
一方で、何やらカイルが怒っているようだった。
みるみるうちに表情を険しくする。
「なるほど…!見覚えがあるわけだ。貴様ら、青銅の鎧の連中だったのだな!!」
「ひぃ!?」
「すみませぇえええん!!」
ギルマスとガイズが急に恐縮し出した。
「カイルさん?2人とは面識があるんですか?」
「あぁ…アルトくん。君に入ってなかったな。実は少し前に、我がアルトリア家は、彼らに依頼を出していてな」
「依頼…?」
「ああ。ダンジョン二十階層のボス、ミノタウロスを討伐してほしいという依頼だったのだが」
聞けば。
俺が追放された直後、アルトリア家が『青銅の鎧』にミノタウロス討伐の依頼を出していたらしい。
『青銅の鎧』のこれまでの功績を見て、確実に達成してくれると思ったそうだ。
しかし、『青銅の鎧』はしくじった。
カイルの期待を裏切り、依頼を達成することが出来なかったのだ。
これには俺も驚いた。
まさか俺の知らないところでそんなことになっていたとはな。
「よく我が屋敷にのこのこと顔を出せたな?えぇ?」
「「ひぃ!?」」
カイルが睨み、ギルマスとガイズが引き攣った声を出した。
「貴様らのせいで、我が家の重要な取引が一つ、白紙になった。そして貴様らのギルド丸ごと買収できるほどの損失を計上した……貴様らを信用した自分が悪かったと、損害賠償請求はせずにいたが…今気が変わった」
「えぇ!?」
「なっ!?」
「ギルド『青銅の鎧』!!私は貴様らを訴える!!裁判の場に引き摺り出してやる!!」
「「ひぃいいいい!?」」
「我々が出した損失…必ず補填させるからな?覚悟しておけ…?」
「お、お助けを…!」
「それだけはどうか…」
ギルマスとガイズはすっかり青ざめていた。
絶大な権力を持つアルトリアに訴えられたとなれば、彼らは確実に敗訴し、破滅するだろう。
どのぐらいの賠償金を請求されるのかはわからないが、多分、もう金を支払った後にギルドを運営するだけの資金は残らないんじゃないだろうか。
気の毒だな。
が、俺にはもはや関係ない。
「あ、あああ、アルト!!頼む!彼を説得してくれ!!」
「なぁ!?アルト!!助けてくれ!!無能だなんて言って悪かった!!俺たち仲間だよな!」
ギルマスとガイズがすがるように俺に助けを求めてきた。
そんな彼らの手を振り払って、俺は言った。
「今更もう遅い。報いを受けろ」
「「うわあああああああああ!!!」」
2人が発狂する。
後日、ギルド『青銅の鎧』はアルトリア家によって訴えられ、敗訴した。
そしてギルド保有資金の二倍の額の損害賠償を命じられ、一気に巨額の借金を背負うこととなった。
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