今までの功績を改竄され、役立たずのお荷物認定されてギルドを追放されたけど、国一の貴族の令嬢に拾われ無事勝ち組人生

taki210

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第五十七話

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「ど、どうしてモンスターが…!?」

ニーナが狼狽える。

「あ、あの数…」

「我々だけで捌き切れるか…」

馬で馬車を護衛していた騎士たちが、馬から降りて武器を構える。

だが、その人数はたったの四人で、あの数のモンスターを倒し切ることが出来るほどの実力者にも見えない。

「おい御者っ!!なぜここまで接近されるまで報告しなかったんだっ!!モンスターが近づいてくるのが見えれば事前に回避もできただろう!!」

「し、知りませんっ…い、いきなり目の前に現れて…!」

「はぁ!?何意味わからないこと言ってんだっ!!」

騎士の一人が御者に詰め寄る。

彼が御者を責めているのは、本来、草原地帯におけるモンスターの遭遇は、容易に回避できることだからだった。

草原地帯は広々としていて、視界も明瞭だ。

故に遠くから接近してくるモンスターをいち早く察知できるため、少し進路をずらすだけで回避できるのだ。

それが、今日の護衛がここまで少なかった理由。

だが今、俺たちはなぜかあれほど多くのモンスターに進路を阻まれている。

騎士は御者の過失だろうと疑っていた。

「本当ですっ!!まるで召喚したかのように、突然モンスターが現れたんですっ!!」

御者は必死に捲し立てる。

そうこうしているうちに、モンスターが俺たちの元へ接近しつつあった。

「どどど、どうしましょう!?」

ニーナがアタフタとする。

「おい、あんたら。争っている場合じゃないだろう」

俺は御者の胸ぐらを掴む騎士に声をかけた。

「あんたたちは、ニーナと、それから後ろのカイルの馬車を守ってくれ。あれらは俺が処理する」

俺が前方のモンスターを指差しながらいった。

「一人じゃ無理だ。俺も一緒に…」

「だめだ。カイルやニーナの命を守るのが最優先だ」

「…っ」

騎士たちは頷き、ニーナを連れて交代する。

「に、ニーナっ!!こっちだっ!!」

背後では、カイルの馬車が停車して、ニーナたちを待っている。

少なくとも馬車が方向転換をするまでは時間を稼がないとな。

「この数を相手にするのは久しぶりだな」

俺は剣を構え、モンスターの群れと対峙する。

ざっと見たところ、五十匹はいる。

これほどの数でモンスターが群れるのも珍しい。

まるでモンスターの暴走…スタンピードのようだ。

「アルトリアの騎士として…ニーナやカイルは俺が守る!!」

「アルト様っ!!」

刹那、ニーナの俺を呼ぶ声が聞こえたような気がした。

俺は剣と共に、モンスターの群れへと突っ込んでく。



「ふぅ…案外なんとかなったな」

一息つくとともに、俺は地面に座り込んだ。

周囲にはモンスターの死骸が転がっている。

動いているものは一つとしてなかった。

あれだけいたモンスターの群れを…俺はなんとか一人で片付けていた。

「あぁ…疲れた…」

出し惜しみしている暇はなかった。

今や体内の魔力はほとんど枯渇状態。

回復魔法を発動する余地すらない。

「よっと…」

剣を支えにして俺は立ち上がる。

向こうから、距離を置いていた馬車が戻ってきていた。

俺がよろよろと歩いていくと、馬車からニーナが降りてきて駆け寄ってきた。

「アルト様っ!!!」

「うおっ!?」

バッと俺に抱きついてくる。

疲れていた俺は受け止めきれずに、後に倒れた。

「お怪我はありませんかっ…」

「特には…」

「ご無事で何よりです…っ」

「おう」

ぎゅううっとニーナが抱きついてくる。

まるで俺が生きていることを確かめるように。

俺は振り解く力もないので、されるがままだ。

決して、胸に押し当てられる感触が柔らかかったからとか、そういう理由ではない。

「嘘だろ…」

「あの数を一人で…」

「アルト…あんた、マジで何者なんだ…」

やがてこちらへと歩いてきた護衛騎士が、モンスターの死骸を見てそんなことを呟いた。

その後、俺は騎士に肩を貸してもらって馬車に担ぎ込まれ、体力と魔力の回復するポーションを提供してもらった。

そして俺たちを乗せた馬車は、再び王都へ向けて走り出したのだった。



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