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第五十八話
しおりを挟む突然前方に現れたモンスターの群れを、アルトはたった一人で退けた。
騎士たちがアルトに肩を貸して馬車に担ぎ込み、御者が鞭を鳴らす。
遠ざかっていく馬車を見ながら、フードの男はひとりごちる。
「まさかモンスターが全て倒されてしまうとは…」
「あの男…強いな…」
「久々にあそこまでの使い手を見た…」
「あの数を一人で捌くとは、かなり名の通った戦士に違いない…」
「不穏分子としてマークしておく必要がありそうだな…」
「しかし、実験は成功…」
「この装置を使えば…どんな時にどこへでもモンスターの軍勢を送り込める」
「くふふ…また一歩、我らの勝利が近づいた…」
「何はこの大陸にのさばる人間ども全てを駆逐して…我ら魔族が天下を取るのだ…!」
「私の研究はその礎となるだろう…!」
風で男のフードが脱げて、その素顔が露わになる。
額の角。
紫色の肌。
多大な魔力を秘めた体躯。
男は、かつて人間に負け、滅んだとされる魔族だった。
「おぉ…ここが王都か…!」
モンスターの群れを殲滅した数時間後。
俺たちを乗せた馬車は、王城のある王都へと辿り着いていた。
見たこともないような規模の建物群、人の多さに、俺は目を奪われる。
「うふふ…私も始めても時は驚きました」
ニーナはというと、驚く俺を少しおかしそうに眺めている。
馬車は街道を進んでいき、坂を登り始める。
窓の外からは露天商たちの客呼びの声が聞こえてきている。
窓から顔を出して前方を見ると、王都の中心の高台に建てられた王家ルミナスの巨城が確認できた。
「あれが王城か…」
見たこともないような規模の建物だ。
あの中に、二十名に登るルミナスの王族が暮らしているのだという。
「大きいですよね…生誕祭はあの城のメインホールで行われます。それはもう、すっごいんですよ!!」
「だろうな」
俺はまだ見ぬパーティー会場に想いを馳せて、ごくりと唾を飲み込んだ。
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