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第三話
しおりを挟む「ォオ!?ォオオオオオオオ!?!?」
魔王が低い悲鳴と共に右腕を押さえて地面に膝をつく。
切断面から思い出したかのように鮮血が流れ、地面を濡らす。
「き、貴様ぁああああああ!!!!何をしたぁああああああ」
魔王が血走った目で俺を睨んでくる。
「私の右腕はどこ行ったぁあああ!?!?」
「ここだが?」
俺は自分が唯一使える魔法によって収納した魔王の右腕を取り出して外気に晒す。
魔王がなくなった自分の右腕が俺の元にあるのを見て、驚愕に目を見開く。
「い、一体どうやって…人間如きにこの私が…こんな深傷を負わされるはず…」
「さっきも言っただろう?俺は勇者パーティーの荷物持ちだ。俺に出来ることは収納することだけだ」
「まさか収納魔法だと…?馬鹿な…!収納魔法如きで私の右腕を奪えるはず…」
「つい最近まで、俺の魔法はただ荷物を収納できるだけのせいぜい便利な魔法だった」
俺は呻き声を漏らしながら必死に腕を修復している魔王を見下ろしながら進化した自分の力の正体を明かす。
「だがあの3人に酷使されたせいで…いや、おかげというべきか……俺の収納魔法は進化したんだ。物体収納から、空間収納へと」
「空間…収納、だと…?」
「ああ、そうだ。空間収納は、物体収納と違って……物体を空間ごと収納することができる。ここまで言ってわからないか、魔王」
「ま、まさか…貴様は…」
魔王が何かを理解したような顔になる。
俺は口元を歪ませ、種明かしをする。
「俺はお前の右腕とその周りの空間ごと収納したんだ。結果としてお前の右腕は切断され…こうして俺の手元にある」
俺は魔王の右手をプラプラと掲げた。
魔王の表情が憎しみに満ちる。
「貴様ぁあああああああ!!!この卑怯な人間がぁああああ!!!そのような力を持っていながら雑魚のふりをするなどぉおおおお」
「すまんな。だが、油断しているお前でなければ通用しないと思った。俺はあくまで荷物持ちだからな」
「人間の分際でぇえええええええ!!!この私に膝をつかせるとはあああああ!!やってくれたな勇者!!消し炭にしてやるぅううううううううう!!!」
「悪いが、消し炭になりたくはないのでお前にはここで死んでもらう。人類を救うためではなく……あくまで俺自身のために」
俺は空間収納へと進化した自身の魔法を三回連続で発動した。
「ギィヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!?」
つんざくような魔王の悲鳴が周囲にこだます。
俺の魔法によって残った左腕、両足を切断された魔王がダルマとなって地面に転がる。
魔族は人族よりも生命力が圧倒的に高いため、その状態でも魔王は生きているらしかったが、しかし想像を絶する痛みが襲っているらしかった。
「ァアアアアアアアア!?!?ォオオオオオオオオオオオオオオ!?!?」
「悪いな。別にお前を余計に苦しませる意図はない。だがお前たち魔族は生命力が強いからな…首を落としただけでは死なないことが多い。こうして生命力を削ってからトドメを刺さないと安心できない。勘違いするなよ?これは俺の嗜虐趣味なんかじゃない」
「グォオオオオオオオ!?!?ォオオオオオオオオオオオオオ!?!?」
魔王に俺の言葉は届いていないようだった。
両手足を奪われてダルマ状態になった魔王は、白目を剥き、口から泡を吹き、ガクガクと痙攣している。
とても気の毒だったので、俺はさっさと終わらせてやることにした。
「空間収納」
魔王の首から上が消失し、絶叫がぴたりとやんだ。
首を刈り取られ、残った胴体は、糸が切れたようにぴくりとも動かなくなる。
最果ての孤島に、しんとした静寂が降りた。
「勝った、のか…?」
あまりにもあっけない最後に俺は本当に自分が魔王を倒したのか自信がなくなってきた。
思わず自分のステータスを確認してしまう。
「どうやら…本当に魔王は死んだようだな…」
見違えるように向上した自分のステータスを見て、俺は魔王が本当に死んだことを確認する。
災厄と呼ばれた魔王を倒したことで、莫大な経験値がもたらされたようだ。
俺のレベルは一気に桁が二つもアップして、千へと到達していた。
かつてたった一人で世界を守ったと言われている伝説の勇者ですらレベルが500だったと言われている。
また俺の仲間……いや、元仲間であるアイザックたち3人の平均レベルもせいぜい300だ。
俺は災厄の魔王をたった一人で倒したことで、過去から現在までのあらゆる勇者たちを一瞬にして凌駕してしまった。
「案外こんなものか…」
世界最強の力を手に入れたはずなのだが、特に感慨は湧いてこなかった。
魔王を倒した今、俺の頭の中にあるのはたった一つの事柄だけだった。
復讐。
「待っていろよアイザック、タイラー、ハーナ。俺を奴隷のようにこき使い、最後には囮として見捨てた代償を支払わせてやる…」
俺は3人への復讐を果たすために、最果ての孤島を後にして3人が退却した場所へと向かうのだった。
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