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第十四話
しおりを挟むオークやその他のモンスターを倒しながら進んでいった俺たちの前に、巨大な両開きの扉が立ちはだかった。
各フロアに一つずつ存在するボス部屋。
この先に、フロアボスと呼ばれる強力なモンスターが潜んでいる。
ボス部屋に一度入ると、ボスを倒すまで出ることは出来ない。
故に軽い気持ちで立ち入ることは許されない。
「クエスト達成に必要な討伐数はすでに超過している。引き返したほうがいいだろう」
リーダーのガレスがそう判断を下す。
「そうね」
「それがいいでしょうね」
ガレスの意見に、ソフィアとエレナも賛成する。
だが俺としては、ここで引き返してしまうわけにはいかなかった。
今のままだと、俺が『彗星の騎士団』に新メンバーとして迎え入れてもらえる可能性はゼロだ。
なので、前衛ができることを彼らに証明し、少しでも有能であると思い込ませたい。
食い扶持を得るために、俺は必死だった。
「いえいえ、ここまできたのですから、ぜひボス部屋に入りましょう!大丈夫です!前衛は俺が担当しますし、皆さんには魔力と体力回復の魔法をかけますから」
「なっ…体力と魔力の回復…アルトさん、あんたそんなことも出来るのか…?」
「ええ、当然です。サポーターとして、魔力と体力と傷の回復はできて当然でしょう…あと、呼び捨てでいいですよ」
「あれほどの支援魔法に加えて…そんなことまで…」
「ガレスさん…?」
「ああ、すまん…じゃあ、アルトさん…じゃなくてアルト。俺たちの体力と魔力を回復してもらってもいいか?」
「了解です」
俺は3人の体力と魔力を、魔法によって一気に回復させる。
「か、体が軽い…」
「ダンジョンに入る時とほぼ同じ…いえ、下手したらそれ以上に体の調子がいい…?」
ガレスとエレナが自分の体を見つめたり、ぴょんぴょんと飛び跳ねたりして驚いていた。
た、多少は評価してもらえただろうか…?
回復系の魔法にはそれなりに自信があるのだが…
「あれほどの支援魔法に、これほどの回復魔法まで…どうしよう、私の存在意義が…」
一方で、魔法使いのソフィアは何やら俯いてた。
俺の魔法のレベルの低さを笑っているのだろうか…?
くそ、ますます前衛としての力量でカバーアップするしかないぞ。
「で、では…ボス部屋に入りましょうか…戦闘は基本俺が担当するので、皆さんの手は煩わせませんから…」
俺がそういうと、ガレスが笑った。
「いやいやいや、流石にそれはないだろう。無理しなくても、俺たちも加勢するよ」
「…」
お前みたいな雑魚一人じゃ、ボスいっぴき倒せないだろうと、そういうことだろうか。
う…すでに泣きそうだが…ここでめげるわけにはいかない。
「い、いえいえ…お願いですから、俺に任せてください…はい…一応3人に俺の前衛としての力を見てもらいたいんです…はい…」
3人からすると、俺の前衛としての実力なんてとるにたらないものだろうがな…
それでも、少しでも彼らにアピールするしかない。
「わ、分かった」
ガレスが頷いたので、俺はいよいよボス部屋へと足を踏み入れていった。
扉を開けると、壁にくくりつけられていた松明に火が灯った。
同時に、巨大な空間が顕となり、その中心にいた大きなモンスターがゆっくりと立ち上がる。
『ブォオオオオオオオオオ!!!』
ビリビリと空気を震わせ、咆哮したのは、このフロアのボスモンスター、オーク・キング。
見た目自体は先ほど倒したオークとに通っているが、スケールは三倍近くある。
体長は10メートルに迫ろうかという勢いだ。
「やるか…」
俺は剣を握りしめ、オーク・キングに向かって進んでいこうとする。
そんな俺を、ガレスが呼び止めた。
「ちょっと待て。アルト。これを」
ガレスが自身の大剣を俺に差し出してくる。
「え?なぜです?」
「いやいや、そんな剣じゃ、あいつにダメージを入れられないだろ。オーク・キングの皮膚は硬いぞ」
俺のギルドから貸し出された剣を見ながらそんなことをいうガレス。
…悲しい。
お前程度の雑魚は、そんなナマクラじゃボス一匹倒せないと、暗にそう言っているのだろう。
俺は悔しくなり、ガレスの申し出を断った。
「いえ、俺にはこれで十分ですから…」
そう言って、オーク・キングに向かって突っ込んでいく。
「あ、アルト!?」
背後でガレスが声を上げるが、振り返らない。
俺はオーク・キングの足元に肉薄し、剣を横薙ぎにする。
斬ッ!
ドサ。
『ブォオオオオオオオ!?!?』
オーク・キングの太い左足が切り落とされ、地面に落ちた。
ドバドバと血を流しながら、オーク・キングが絶叫する。
俺はなるべく力の差を見せつけるために、出来る限り迅速に、オーク・キングを仕留めにかかる。
ズバババン!!
『ブォオオ…』
数秒ほどで四肢を失ったオークは、力ない鳴き声とともに倒れ、絶命した。
俺は剣を納めて、3人の元へと戻る。
「い、一応こんな感じです…どうですか?」
少しは力をしめすことが出来たんじゃないだろうか。
まぁ、オーク・キング如きを倒したからってなんだってことではあるかもしれないが。
「「「…」」」
あれ。
なんでみんな黙ってるんだ?
ひょっとして俺の実力が絶句するほどにしょぼかったってことか…?
俺が反応を待つなか、3人は1分ほど口をぽかんと開けて時を止めていたが、やがて…
「ひ、一ついいか?」
「は、はい…なんでしょう…」
「その剣は…ギルドで貸し出しているものだよな…?そこまで高級な装備じゃないはずだ…なぜ硬い筋肉で覆われたオーク・キングの体を切断できたんだ?」
「え?そんなの、武器に強化魔法を使ったからに決まってるじゃないですか」
なぜそのような当たり前の話を聞いてくるのだろうか。
戦闘の始まる前に、武器には強化をかけておくのは、常識だと思うのだが…
「「「…」」」」
俺の答えをきいた3人はまた、しばらく時を止めた。
だが、やがてガレスが前に歩み出てきて、右手を差し出すと共に…
「アルト。君を俺たちのパーティーに歓迎する。これからよろしく頼む……ヤベェな…俺たち足を引っ張らないように頑張らないと…」
「…っ!?」
まさかのセリフに、俺は一瞬何を言われたのか理解できなかった。
そして、最後にガレスがボソボソと何かを付け加えたのだが、小さすぎて聞き取れなかった。
俺の悪口とかでないことを願うばかりだ。
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