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第二十五話
しおりを挟む「こいつ一人だけかよ…?」
「え…?」
それから数時間後。
新メンバーを一人、迎え入れることにした『緋色の剣士』の面々は、ギルドで臨時メンバーを募集していた。
唯一のSランクパーティーとして知名度のある『緋色の剣士』の臨時メンバー募集。
たくさんの応募者が集まるだろうと思っていた彼らのもとにやってきたのは、たった一人の冒険者のみだった。
「なんでこれだけなんだよ…?」
呆然と目の前の冴えない男を見つめるカイル。
応募してきた男冒険者は、カイルの眼差しにたじろいで目のやりどころに困っている。
「…っ」
耐え難い屈辱を感じて、カイルは表情を歪める。
2度もクエストに失敗するという醜態が冒険者の間で噂となって広まり、そのせいで臨時メンバーを募っても応募者が一人しか現れないほどに実力を疑われてしまっている。
そのことが、プライドの高いカイルを暴れたくなるほどに苛立たせた。
「…っ…ふぅ…」
ギリギリのところで叫ぶのを堪えたカイルは、目の前の男に言い捨てた。
「ついてこい。実力を試してやる」
それから半時間後。
彼らはモンスターの出現する草原へときていた。
カイルは、今からこの応募してきた冴えない男の実力を試すつもりでいた。
足手まといになるようなら、容赦なく応募を蹴るつもりだった。
「今からお前の実力が俺たちのパーティーにふさわしいか試す」
「はい!ひ、緋色の剣士の皆さんとクエストに出られるように、精一杯頑張ります!」
「うるせぇ!大声を出すなっ!」
「ひぃ!?すみません!」
プライドを傷つけられた苛立ちを男にぶつけるカイル。
応募者の男は、Sランクパーティーのリーダーに怒鳴られたことで、引き攣った声を出す。
「はぁ…まぁいい…お前、名前はなんだ?」
「け、ケルトと言います」
「ケルト、か…ふん…まずは支援魔法からだ」
カイルは苛立ちをなんとか抑え、男の実力を見極めることにした。
「ここにいる全員に支援魔法をかけろ。肉体強化と魔法強化、どっちもだ」
「は…?」
カイルのオーダーに、男が固まってしまう。
「何してる?さっさとしろ」
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!!全員一気になんて無理です!」
「はぁ?」
カイルが苛立った声を出す。
「出来ねぇってどういうことだ?」
「ひとりずつなら出来ますけど…全員は無理ですよぉ…」
「なんだそれ。使えねぇやつだな」
「いやいやいや、3人全員に支援魔法かけるなんて、僕でなくとも無理だと思うんですが…」
「お前の前任者は普通にやってたぞ?」
「えぇ…それってその人が異常なだけだと思いますけど…ち、ちなみにその人は今どこに…?」
「役に立たないからパーティーから追放したが?」
「…」
ケルトが絶句する。
なぜそんな有能な男をパーティーから追放するのか。
このリーダーは馬鹿なのか?
そんな意味が込められた視線だったのだが、もちろんカイルは気づかない。
「まぁいい。全員一気にができないんだったら、一人ずつ支援魔法をかけろ」
「わ、わかりました…」
ケルトは、カイルとミシェルとアンリに順番に支援魔法をかけていった。
「よし…じゃあ、次は探知魔法だ。この森に潜んでるモンスターを探知してもらう。まずは100メートル先からだ。やれ」
「はあああ!?」
カイルからの無茶苦茶なオーダーに驚くケルト。
「ひゃ、100メートルの探知魔法なんて無理ですよ!!僕は探知魔法が得意ですけど…10メートルが限界です!!」
「なんだとお前!?俺を馬鹿にしてるのか!?」
カイルがケルトの胸ぐらを掴む。
「ひぃいいい!?」
Sランク冒険者に掴みかかられてケルトが涙目になる。
カイルはケルトを持ち上げて、睨みつける。
「10メートルの探知魔法だぁ!?てめーは駆け出し冒険者か!?Sランクの俺たちを冷やかしに来たのか!?」
「冷やかしになんて来てません!!ぼ、僕は一応、前はAランクのパーティーに所属していたんです!探知魔法は普通数メートルが限界です!!僕の10メートルはかなり距離が長い方なんです!!」
「…なんだと?」
カイルは目を細める。
ケルトが嘘を言っているようには見えなかったからだ。
すると本当に世間一般では、数メートルの範囲の探知魔法が常識なのか。
「おいおい…レベル低すぎるだろ…」
本当はアルトが異常だっただけなのだが、彼らはそれに気が付かない。
「ち、ちなみになんですけど…その前任者はどのぐらいの距離の探知魔法を使えたんですか…?」
「最大は500メートルだったか?」
カイルがミシェルに確認を取る。
「ええ、確かそのぐらいだった気がするわよ。その先になると、曖昧な探知になるんですって…本当に無能よね」
「ああ、全くだ」
「…」
その前任者の有能さが全く理解できていないカイルとミシェルに、ケルトは哀れみにもにた視線を向けた。
「この人たち…何かがおかしい…そんな有能な人の実力も見抜けないなんて…本当にSランクの実力があるのだろうか…」
ケルトは早くも『緋色の剣士』の実力を疑い始めていた。
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