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第三十一話
しおりを挟む「うおおおおおおお!!」
「いけ、いけ、いけ、いけ!!」
「ルイン!!そんないけすかないSランクなんて倒しちまえ!!!」
冒険者ギルド内が怒号と歓声に満ちている。
冒険者たちの作る輪の中で、二人の男が向かい合っていた。
SランクのカイルとBランクのルインである。
「後悔させてやる…!」
ランクが格下の冒険者に舐めた態度を取られ、完全に堪忍袋の尾がきれているカイルが、ルインを殺さんばかりに睨みつける。
一方でルインも負けてはいない。
「へっ。後悔するのはどっちかな?」
臆することなく、負けじとカイルを睨みつける。
「あわわわわ…どーするんですか、これぇ…」
騒ぎを収めにきた受付嬢のルーナがどうしようもなくなって頭を抱える。
そんな中、ついにカイルとルインが激突する。
先に仕掛けたのはカイルだった。
「おらああああああああ!!!」
雄叫びをあげ、ルインに向かって剣を振り下ろす。
「うおおおっ!!」
ガキッ!!
「…っ!?」
鈍い音とともに、カイルの攻撃がルインの大剣によって受け止められる。
格下のはずの冒険者に全力の一撃が簡単に止められて、カイルは目を見開いた。
一方で、周囲の冒険者にざわめきが広がる。
「うおおお!!ルインのやつ、Sランクの攻撃を受けとめやがった!!すげぇ!」
「いや、すごい…のか?今の、俺でも受けられそうな攻撃だったが…」
「Sランクってこんなものなのか…?」
攻撃を受けとめたルインよりも、カイルの一撃が軽かったと評価する声が多い。
そんな中、攻撃を受け止めたルインは驚きにしばらくの間動きを止めていた。
「…(おいおいおい、なんだこのヤワな一撃は!!こんなのがSランクか…?)」
彼はカイルの攻撃が予想の何倍以上もしょぼかったことに驚いていた。
「おいおい、たった一発で固まっちまって…もう実力の差を思い知ったのか…?面白くねぇ!もっと俺を楽しませろ!」
一方で、ルインが動きを止めたのは自分の攻撃にビビったからだと勘違いしたカイルが好き勝手に吠える。
「ほら、次だ!受け止めてみろ!!」
自信満々にルインに向かって二撃目を繰り出す。
パリィン!
「は…?」
甲高い音と主にカイルの剣が手を離れて宙をまった。
ルインの大剣が、カイルの剣を完璧に弾いたのだ。
「「「…」」」
あまりの出来事に、一瞬の静寂が周囲を支配した。
そんな中、徐に繰り出されたルインの拳が、カイルの腹を捕らえた。
ドゴッ!!
「がふっ!?」
真正面から拳を喰らったカイルの体が吹き飛んだ。
宙を舞い、ドサっと地面に叩きつけられる。
「ごほっ!!がはっ!!」
体から無理やり空気を吐き出されたことでむせるカイル。
そこに、ゆっくりとルインが歩いてきた。
「ひぃ!?」
カイルが悲痛な声をあげる。
ルインは、先ほどとは打って変わって恐怖の表情で自信を見上げるカイルに向かって、吐き捨てるように言った。
「なんだ、ただの雑魚じゃないか」
ピキッと。
カイルの心で何かが砕ける音がした。
冒険者ギルド内に白けた雰囲気が漂っていた。
「おいおいおい、マジかよ…?あのSランクパーティー『緋色の剣士』のリーダーがBランクのルインに負けやがったぜ…?」
「ルインが強い…っていうか、カイルが弱すぎだろ…なんだあいつ…あんなんでSランク名乗ってたのか…?」
「下手したらBランクの実力すらないんじゃね…?どうやってSランクまで上がったんだよ…?」
「他のメンバーが優秀だったとか…?それかギルドに金でも積んだんだろ」
散々好き放題に言われるカイル。
だが、カイルは何も言い返せない。
自分は負けた。
Bランク冒険者に。
その事実が、今、完全に彼の自尊心を破壊したのだ。
「あ…あぁ…あ…」
やがて、ゆっくりと立ち上がったカイルは、虚な瞳でとぼとぼと出口の方へ向かって歩き出した。
「おい、負け犬!謝れよ!」
「なんとか言えよSランク!」
「逃げんのか!?」
「最高ランクの冒険者なんだろ!!お前の実力はこんなもんかよ!!」
背中から屈辱的な言葉を浴びせられるが、もはやカイルには何も聞こえていなかった。
カイルは世界から一気に色が失われていった気がした。
とぼとぼと出口まで歩いたカイルは、そのまま冒険者ギルドから姿を消した。
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