この恋は狂暴です

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この恋は狂暴です①

この恋は狂暴です①

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バンッ!!

「・・・っとに、なんなんだ!あの女っ!!!」
俺は部屋につくなりカバンを壁にぶちつけた!


「まあまあ、そこがいいじゃん♪」
後ろでそうつぶやく俺の親友。
「は?信じられね、お前、あんな言われ方されてっ・・!」
俺の激怒は止まらない。

「ん-・・・まぁ俺・・、あーゆートコロも含めて好きになったんだし♪」
と、ニコニコ笑う。
「―――――――・・・っ!!!」


俺、藤木薫。
この激語の発端は、ほんの30分前。
俺の親友、火野桃弥(このニコニコ笑っている奴。)が片思いしているという女に告るという所から
始まった。
なんでも中学時代の同級生で3年間も片思いしていたらしい。
(俺には無理!)
同じ高校に通うなんて思ってもみなかったらしく、又さらに、高校1年間片思いは続いたらしい。
(俺には絶対絶対無理!!)

だが、さすがに桃弥にも我慢の限界があるらしく(笑)
・・・今年、高校2年目にして、やっと告る決意を決めた。

そして、放課後。
桃弥の想い人のクラス前に俺は来た。
桃弥とその片思いの彼女が二人になれるよう、俺はセッティングを頼まれたんだ。



「なな。」

一瞬、そのクラスの女共が騒ぐ。
「きゃ藤木くん!!」 「え?やだ超、カッコいい~」
俺は一応、外見がいいらしく女から人気がある。

「いや~ん、薫くん♪なになに?」
名前を呼んだそいつも、俺のファンらしく常につきまとっては「なな」 「ななね~」って
自分の事を言うから名前を覚えてしまった・・だけの女。

女なんて皆、同じ顔・・同じ声だし。

「ちょっと頼まれてくんない?」
そんな俺のセリフにこれでもかといわんばかりに首を縦にふる。


「はたの・・って子いる?」

「え?あ、え?乃野さんの事?」

へ―、桃弥の片思い女、乃野って言うんだ。

ん?

乃野・・ ?
・・・ってどっかで聞いたことある・・なぁ

「薫くん?」
「あ、うん。そいつ。」
「が――――んっ・・・そりゃ乃野さんはキレーだけど、・・薫くんやめといた方がいいよ?」
何を誤解したのか、ななは俺にそう言った。
「ふっ。いや俺じゃなくて、はたのさんに用があるのは他の奴。」
そう言うと、ななはパーッと笑顔を見せた。

「で、薫くん。ななは何をすればいい?」
「ん―。とりあえず、はたのさんをこの教室に一人にしといてくれれば。」
「了解。」
「助かる。」

こうして俺は、ななにまかせ自分の教室へと戻った。
桃弥は教室の壁にもたれて外を眺めていた。
顔はこわばっている。
だよな。なんてったって4年間も片思いしてたヤツに告るんだもんな。
緊張もするよな。

そんな事を考えながら教室に入ると、桃弥が俺に気づいた。
「薫。」
「今、彼女、教室に一人でいる様にしてもらってるから、もう少し待って」
「サンキュ・・。」
桃弥の顔に又、緊張が加わった気がした。

「桃弥~緊張してるっしょ!かわいいな~♪」
俺はわざとちゃらけた。少しでも緊張をとけるように・・
「ばっ!ばっか!ちげーよっ、全然っ。」
そう反論して桃弥は顔を赤めた。

「でもさ、なんでわざわざ学校で告るん?彼女の家でも良かったんじゃね?幼なじみなんだし、
部屋とかも、上がったこともあんだろ。」
「あ、ああ・・しょっちゅう・・な。」
「俺だったら2人っきりの方が落ち着くけどなー」

「ふ。俺も相手が姫じゃなければ、そうしたかもな。」
「そ、そんなに強敵なのかよっ?」
「ああ、ハンパなく♪だから、・・学校だったら返事がNOでも逃げ場があるかなーと思ってさ」
「はー?バッカ!何そんな心配してんだよっ!桃弥なら100%大丈夫だって!!」

「薫・・」

「4年だもんな、がんばれよ。」

「お・・う。」


こんなに思って・・こんなに一途に想い続けて・・こんなにがんばってきた桃弥。
絶対に大丈夫だ。うまくいくにきまってる。

そんな話をしていると、俺らのいる教室にヒョコっと、ななが顔を出した。
「薫く~ん。OKだよ~ん♪」
  

いよいよだ―!!

「なな、ありがと」
「どういたしまして♪ななは、薫くんのためだけに生きているから♪」
「はは・・」

「じゃね薫くん!なな帰るね~」


「お、おう。またな」

ななのすごいところは見返りを望まないところ。普通の女であれば、頼みごとをすれば、しただけ何かを求めてくる。
だからななは楽だ。
だからついつい人を選んで頼みごとをしてしまう。

ずるいな・・俺。 


「薫、じゃ俺も行ってくる。」
壁から体を離して、桃弥は彼女の教室へと向かった。

俺はというと、
やはり親友の事は気になるワケで。
でも人の恋路はジャマしたくないし
・・・で。
結局、彼女の教室前廊下にしゃがみこんでの待機!


「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」


窓が開いているせいか、2人の会話はよく聞こえない。
ぼんやりしていると、突然、

「ばかじゃね!」
女の声が張りあがった。
(へ?・・・女の声って事は・・例の畑野さんだよな?)

と、次に
「なに言っちゃってるワケ?!」

(は?あぁ?あ?????)

や、やっぱ、桃弥の言うとおりハンパなく強敵っ??一体どんな女
・・・って、
「わっ!」
扉にかけた手が滑って、俺は前のめりで教室の中に入ってしまったっ!!


「!!!!」

すぐさま俺の方を向いた畑野さんという女!!
スゲ・・っ、目ヂカラっ・・・

「あ、ーっと、桃弥、・・悪ィ・・その、スゲーセリフが聞こえたもんでさ」
ぷっと笑う桃弥。   (?????)


「な、んで・・藤木・・薫が?!」

(へ?ってか何?この畑野さん、俺の事知ってる?あ、そっか。女子達からでも聞いてたんか。)

「薫は俺の親友だから、心配してくれたんだよ、姫」

「・・ふ、~~~~ん」 そう言って畑野さんはうつむいた。

?なんか、さっきとイメージが?
ワケわかんね――な、この女!
超、不機嫌な顔で俺は桃弥を見る。それに気づいた桃弥はニコッと笑って、
「薫、終わったから帰ろ」と言い、教室を出ようとした。

「え?桃弥?言ったのか?あ?なんだよ」

「言った・・」
桃弥は振り向かない。

俺は畑野さんの方を向いた。

その時・・・俺は初めて畑野さんを見た。
セミロングの茶色の髪が・・風にゆれて・・細い首に巻きつく

その上にある顔は
キレイな・・・て、つい見とれてしまった。

女の顔をこんなにまともに見たのは何年ぶりだろう。


―――――はっ・・っ!
(ちっ!不覚にも・・この俺が女に見とれてしまったっ!)

そんな俺を無視して畑野さんは桃弥の方へと歩いていった。
そして・・

「桃、私に惚れるなんてウザイ事しないで!」

――――っなっ!!はっ?!

「ああ、ごめん姫。」

あやまるかっ?桃弥っなんでっ?!!

「じゃーね。」
笑って教室から出ようとする畑野さん

ブチッ

「コラ!てめ――っ!一体、何様なんだよっ!」 マジでブチぎれた!
「桃弥が、今までどんな想いでお前の事見てきたと想ってんだっ!!!」


「あんたに、言われたく・・・ない。」


「―――― は ・ ・?」



その意味不明な言葉についボーゼンとしてしまって、次の言葉が出てこなかった。
(な、何?言ってんだ?こいつ、マジでワケわかんねぇ女っ!!)

その間に畑野さんはスタスタと教室から出て行ってしまっていた。

――――― で。

今に至る。


「つ――かっ!!マジ、ムカつく!!!!」
「ははっ、薫にしてはめずらしくハイテンションだな」
「だ―――――っ!!桃弥はくやしくねぇのかよっ!あんだけコケにされてっ!」

「・・俺は、昔から姫の事知ってっから。 あーゆー言い方も慣れてるし」

「は?―――――っつ!」

俺から見ても桃弥はなかなかのイケメンで、俺とはタイプが違うけど、背も俺と同じくらい高いから二人して歩くとかなり目立つ。
けっこう告白もされてるみたいだし 
・・それに
俺と違って桃弥は優しい。
こんないい奴が、なんで
なんで

「なんであんなワケわかんねぇ女に惚れたんだっ?!」
つい言葉に出てしまった。

「なんで?って、うー・・ん
姫は中学時代から皆のあこがれだったし、あの顔であの口調だからおもしろいだろ?」

う、う――・・ん ・ ・たしかにあの顔(で)は反則だよな。

「俺ら全員の姫だったんだ乃野は。だれが抜け駆けするのも許されないくらい」

「・・・」

「だけど高校に入れば、中学とは違う。もう姫も、俺たちも自由になる。
はぁ―――――でもさ、そうは言っても、なかなか踏み出せないもんでな
自分の気持ちを伝えるのに又、1年もかかっちまった。ははっ・・」

「・・桃弥」

「でも、今日やっと俺の気持ちを姫に言えたしっ!」
そう言ってニカッと笑う桃弥。

「伝えるだけで良かったのか?桃弥」

「・・ああ。それにOKがもらえるなんて思ってなかったし」

「っえ?!」
桃弥の表情が曇る。  (なんだよっ?それっ!)
「そんなのわかんねぇだろ!」

「俺さ、実は確かめたかった・・ーってのもあって」
 
「は?」 意味が・・

「中学の仲間からの情報で・・」

え?
なに?

「あの姫に付き合ってる男がいるっていう・・ウワサが流れてるって」


「へ?」


「それも確かめたかった。 今まで誰のものにもならなかった姫に、マジでそんな男が居るのかって、っつ!」
拳を握りしめて顔を歪めていく桃弥。


「・・で。わかったのかよ
桃弥が4年間の想いと引き換えにまでして聞き出した答えってーのは」

桃弥は、俺の言葉に 「いいや。・・何も」 と静かに首を横に振った。

さっきまで、なんともない顔して笑っていたのに
本当はスゲー辛かったんだと実感させられる
「桃弥・・」

「ははっ悪ィ薫、俺帰るわ。 やっぱ正直、かなりダメージくらってるみたい(笑)」

「桃弥・・」
「今日はセッティング、サンキュな。」

「・・」

俺はそれ以上、何も言えなかった

・・何も言葉が見つからなかった。
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