3 / 143
二話
しおりを挟む「おはよう、ジーナ、ナツ」
食堂に入って座る場所を探していると
大きい声ではないが
良く通る声が聞こえてきた
昨日の会議で会った
少しつり目で銀髪の
なんだか強そうな女性、タリアがいた
「おはよ、
タリアも今から朝ごはん?
一緒に食べようよ」
食事を乗せたトレーを持ちながら私は聞いた
「あぁ、今から食べるところだ
かまわない、ここに座りな」
私とジーナは全く表情の変わらない
タリアの向かいにトレーを置き座った
タリアは真面目な性格で
あまり無駄なことは喋らない
冷たく見えるが実は人一倍
人のことを見ている人だ
「おっはよ!
珍しく時間が合ったよね!
今日何かあるのかい?」
言い終わるや否や
パクッとご飯を口に運ぶジーナを
冷めた目で見てからタリアは
はぁ、とため息をついた
「今日は討伐隊と救護班の
新入隊がくる日だろう
盗賊を退治して一躍有名になりたいやつらに
いらいろ説明などしなければならないから
この時間なんだ」
あっ、それ昨日の会議でも
少し話に出てたな‥と思い出しながら
私は食事を続けた
「あー!そうだったね!
考えることがあったから忘れてたよ!」
あっはっはと笑いながら
頭の後ろに手を回している
きっと私のことを考えていたのだろう
「どうせくだらんことでも考えてたんだろう
まぁいい、時間は余裕で間に合うからな」
タリアは言い終わると食事を口に運ぶ
「今回は何人ぐらいいるの?」
「訓練校を卒業したのは26名、
そのうち上位に食い込んだ10名全員くる」
残りは街の中の警備隊などになる
私は分からないが
頭の中では分かっている
私たちは盗賊を退治する警察みたいなもので
討伐隊と呼ばれている
討伐隊の中には
討伐をメインで行うものと
救護班と言って救護をメインに行う
部隊に分けられている
退治すると言ってもお互いが
気持ちよく過ごせる為に行動することや
この街から隣の街までは
馬を走らせて丸1日ほどかかるので
その荷物運びの護衛なんかも
引き受けたりするらしい
盗賊は街の周りにどんどん湧いてくるので
中には悪いやつもいて
襲われることもある
私の足の傷は襲われた時の怪我みたいだ
私たちが基本的には
盗賊たちの1番前に出るが
街の警備隊たちも
その後に続くことになるので
訓練校を卒業することが必須
討伐隊を目指す人が多いので
上位10名と言う決まりらしい
まぁ、給料も待遇も結構いいからね
「10人丸々来るのは珍しいね
ギリギリになってやめる人も出てくるから
いつも7人ぐらいなのに」
「ありがたいことにな」
私とタリアが話していると
目をキラキラと輝かせて
ワクワクする気持ちを
隠せない声が聞こえてきた
「どんな子たちが来るだろうねぇ!
石に興味ある子はいるかなぁぁ!?」
どうやらジーナは石が好きらしい
誕生石とか詳しいみたい
確かに部屋にたくさんあったな
「‥ごちそうさま
では、私は先に行くから」
いつの間にか食べ終えてたタリアは
ジーナを無視して食堂を出ていった
私たちも朝食を食べ終え、
いつも着ている隊服の上に
腰までの短めのマントのようなものを羽織る
正装って感じで
一応ナツは偉いさんみたいだ
頑張ったんだろうな
広場に着くと
集まっていた10人が
私服で一列に並んでいた
この後に隊服の授与があるから
まだ私服なのだ
私も新入隊の10人の前に
タリアやジーナと共に一列に並び
授与を見守る
新入隊の比率は男7.女3
もともと討伐隊は男の比率が多い
タリアはまとめ役だが1番上ではないし
ジーナとナツはタリアより下
タリアより上になると男しかいない
「それでは今から隊服の授与を始める」
上官の声が響き、1人1人手渡しする
キラキラと目を輝かせる子
気合を入れ直す子
いろんな表情を見せてくれた
若いなぁ‥いいなぁ、と
ほのぼのしてみていたら
1人の子に目を奪われた
髪は短くて
背は高めだけど体格は細めで‥
目つき悪くて無愛想なかんじだけど、
隊服をもらったときに
少し口角が下がっていた男の子
嬉しくないのだろうか…
それから全員分の隊服授与が終わり
上官からのお言葉が終わるまで
私はその男の子から目が離せなかった
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる