巡り合い、

アミノ

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七話

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ガチャガチャガチャガチャ

「あっれー?
おかしいなぁー
ナツー! 扉が開かないよー!」

次の日の朝
前日に鍵が開いてるからとかいう
よく分からない理由で
突撃してきたジーナを回避すべく
鍵をかけておいた

結局そのガチャガチャって音と
ジーナの声で目覚めるから
変わりない気もするけど‥

鍵を開けて出迎える

「おっはよ、ナツ!」

鍵のことには特に触れず
元気に挨拶された

「おはよ、ジーナ」


そしてじぃっと目の色を覗き込む

「今日もナツだね!」

目の色は少しだけ違うと言うので
近づいてよく見ないと分からない程度
なんだろうけど、
本当にジーナはすごいと思った

「そうだね
今日もよろしくね」

このやり取りがここにいる間の
毎朝の日課になりそうだ




ジーナと2人で
朝食を取ろうと食堂へ行った

10人増えたこともあって
食堂は朝から賑やかだ

食事を乗せたトレーを持ちながら
辺りを見渡していると、
シオンとリクの姿を見つける

ジーナを連れて2人が座っている場所に
向かった

「おはようございますっ」
リクは私たちに気づくと
立ち上がって元気な声で挨拶してくれた

シオンもリクにつられて立ち上がり
小さい声だが
おはようございます‥と頭を下げていた

「おはよっ!
元気があってよろしい!」

ジーナはうんうん頷きながら
嬉しそうに笑顔になっていた

「おはよう
ここ、いいかな?」

私、結構大胆だな、と思う

「どうぞっ」
リクが答えてくれた

「ありがとう
シオン、昨日の服の汚れは落ちた?」

シオンと話をしたい私はトレーを置き、
まだ完全に座ってない状態なのに
早速洗濯の話を持ち出した

「あ‥まぁ、はい
リクがよく取れるって石鹸貸してくれたんで
綺麗になりました」


「へぇ、どんな石鹸なんだい?」
「固形の石鹸で」
と、なぜか石鹸の話で
会話が弾むジーナとリク

あまり話すタイプではないのかと
思いながらも話したい欲がある私は
シオンへと話を続けた

「綺麗になってよかったね
結構泥がついてたし、範囲も広かったから
気になってたんだよね」

私が気になってるのは
泥じゃなくてシオンだろうに‥

「まぁ、はい
リクがすごく手伝ってくれたんで‥」

「リクはいい子だね」

「そうですね
リクはすごくイイ奴です」

少し口角が上がり
表情が柔らかくなったように見えた

「トキワもいい子だと思うよ?」

「あいつはいい子とは違います」

口角は完全に下がってる
さっきまでなかった
眉間にシワまで刻まれていた

「トキワとは仲良くないんだ?」

「仲良いか悪いかって
聞かれたら分かんないっす
訓練の時の連携なんかは結構合うんで」

「そうなんだ
昨日の取っ組み合い見た時
びっくりしちゃってさ」

「あー‥すんません」
そう言い終わると残りの水を飲み切り
コップをトレーに置いていた

な、なんか会話が続かない‥?

終わらしたがってるのかな?

すると気づいたリクが

「こらシオン!
せっかくナツさんが心配して
話してくれてるんだから
そんな態度じゃダメじゃないかー!

ナツさんすみません
シオン、慣れてくると
結構話すタイプなんですけど
慣れるまではこんな感じなんです」

眉毛が下がり、
申し訳なさそうに説明してくれた


「あっ、気にしないで
私がベラベラ話しちゃっただけだから」


慣れてくれると話してくれるんだ
話すことが嫌いってわけではないのに
なんとなく安堵した

「すんません」

「すみません、でしょ!」

「すみません」

ハハッとジーナの笑い声がした

「君たちいいコンビだねっ、
まるで私とナツみたいじゃないか!」

そう言いながらジーナは
私の肩を引き寄せ、
シオンとリクに笑顔を見せていた

「ジーナさんとナツさんは
仲良しなんですね」

何だかリクも嬉しそうにしている

「仲良しだとも!
親友さ!」

その言葉を聞いて
私は自然と微笑んでいた

「そうだね、私たちは親友だよ」

私もジーナの肩に手を乗せ、そう答えた

触れた肩が一瞬
ビクッとしたのが分かった

だけど表情はなにも変わっていない

「素敵ですね
僕もシオンとは親友なんですっ
ねっ、シオン!」

「ばっ‥! おまっ‥! またっ‥!」

シオンは昨日と同じで
少し顔を赤くして
言葉にならない声を出して
うろたえていた

そんな様子を見てリクはニコニコしていた

リクはきっと
シオンの気持ちが分かっているんだろう


友情って‥いいな

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