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十話
しおりを挟む「おはよう、ございます」
廊下を歩いていたら
たどたどしく挨拶をされた
振り向くとシオンが
段ボールを抱えながら
ぺこっと頭だけ下げてくれた
「あっ、おはよう、シオン
どうしたの?その段ボール」
「次の講義で使うからって
デイスさんから頼まれて運んでます」
デイス、ザ・先生って感じ
救護班のリーダー的な存在の
女子から人気がある人で
青いサラサラな髪をなびかせ
眼鏡をかけている
若い男の子たちから見たら
女子の視線集めるから
疎まれたりとかたまにあるみたい
「あれ?
シオンって救護班として
討伐隊に入ってきたの?」
「いえ、違いますけど‥
昨日のことがあったので
全員強制で受けるんです」
「あっ、そうなんだ」
「急に入った講義だったので
朝から借り出されて荷物運ばされてます」
いつもより無愛想度が
増してるような気がする
なんだか言葉にも棘がある
「‥なんすか?」
見つめていると問いかけられた
「あっ、ごめんごめん」
なんで機嫌悪いのか、とは聞きづらいから
デイスに怒ってると仮定して話そう
「デイスは勘違いされることもあるけど
イイ奴だよ
実力もあるし、頼れるから
しっかり講義受けてね」
「‥はい」
私はデイスに良い事をしたと思いながら
シオンとは別れた
そういえばシオンから話しかけてくれたし
もしかして、
少し慣れてくれたのかもしれない
気づくと私は笑顔が溢れてきて
ニコニコのまま廊下をスキップしてた
「ナツ、廊下は普通に歩かないと
タリアに怒られるぞ」
昨日のことを思い出し、
急いでスキップをやめる
「ありがとう、
昨日も怒られたばっかだから
見つかる前でよかったよ」
振り向いてお礼を言うと、
教えてくれたのはデイスだった
シオンと同じく段ボールを抱えながら
声をかけてくれた
「へぇ、ナツが怒られるとか珍しいなぁ、
俺と同じで教官を絵に描いたような
真面目ちゃん、なんて言われてるのに」
フッと笑いながら私を見つめてきた
「えっ、そんなこと言われてるの?」
「知らなかった?
君は何事にも全力で取り組み
卒なくこなすタイプだ
指揮も取れるし、
いつだって冷静で
感情に左右されないじゃないか
そしてどの立場の人にも平等に話す
それが教官や真面目ちゃんと
言われてる理由だよ」
「一応、褒めてくれて
ありがとうと言っておくわ
‥で、私とあなたが同じだと?」
「そうだね
俺も何でもこなせてしまうから
頼られてしまうけど、
たまに誰かに頼りたくなるときもある
ナツに頼ってもいいかな?なんてね」
「‥力になれることなら
頼ってくれても構わない、
けど、力になれないことで
頼ってこられても無理だから」
スッと言葉が出た
これはこっちのナツの言葉だな
「笑顔でスキップなんて初めて見たからさ
機嫌が良い今ならって思ったんだけど‥
やっぱりナツはナツだね、残念だ」
パチンとウインクして歩いて行った
「お、シオン
運んでくれてありがとうな
助かったよ」
後ろから声がした
シオンもまだ廊下にいたようだ
「‥はい」
さっきより低いシオンの声に
違和感を覚えながらも私は歩き出した
デイスが言ってた
笑顔でスキップは初めて見たって
感情に左右されないって
その言葉が気になった
新しいナツを知るたびに
私とは正反対で
早く戻らないと、と気持ちが焦った
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