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十一話
しおりを挟む夜眠る前に
目を擦ったり、鼻をかんだり、
髪の毛をぐちゃぐちゃにしてみたり‥
いろいろやれることの案を出して
一つずつやってみる予定をしているけど
一日に一つしか出来ないし
どの行動で元に戻るかも分からないから
さようならの挨拶も出来ないかもしれない
そう思うとちょっと怖かった
でもこっちの人と話して
ナツを知るたびに
戻らないとって焦るから
ふぅ、ため息が出た
「ナツ!
今会議中よ、ちゃんと聞いてるの?」
タリアの声が部屋の中で響く
「あっ、ごめんね
ちゃんと聞くよ」
そう、今は会議中だ
1.最近南西に新しい盗賊団が
出来たかもしれないことについて
2.北東の盗賊は何者か
この2つが議題の会議
1つ目の議題は、「かもしれない」ではなく
ほぼ確定で盗賊団が出来たとみて
いいだろうとのこと
血気盛んなのが心配だが
後日偵察に何名か行くことが決定した
2つ目の北東の盗賊については
個人で動いてるだけか
グループとして動いているかが
まだ特定できていない
こちらについては
多数怪我人を出しているので慎重だ
とりあえず力のあるものを中心に
警備隊を配置し様子を見る事になった
会議が終わり、
机の上の書類をまとめていると
「ナツ、偵察に行くことについてだが‥」
タリアが書類を持ったまま
私を見つめながら近づいて来た
南西と北東、そちらに人員を割いている為
今回偵察に行くにあたり人手が足らず
私も行く事になったのだ
「何人か新人隊の中からも
連れて行ってほしいと思っている
成績や救護を鑑みて
こちらでリストアップするから」
「分かった」
普段の私はこの場所を守る為に
討伐隊として外に出ることは少ない
みんなが出払ってしまうと
この討伐署が襲われた時に困るから
死ぬことはないと思うけど、
死なないように気をつけなくちゃ
ナツとナツが不完全な状態のままで
死んじゃったりしたら
どうなるのか想像もつかない
会議室を出て
ふと顔を上げるとナロンの姿が見えた
‥忘れてた
化粧を変えたってことになってるけど
ナロンにいつもと違うと言われていたんだ
次の盗賊団の偵察はナロンも行く
どうしたって話をしないで済む方法はない
もし、ナロンがこっちの
ナツのことが好きなら
なんて説明したらいいのか分からない
バレたらしょうがないけど
出来るだけバレないようにすると決めた
「よっ!」
きっと私は考えながら
ナロンを凝視してたのだろう
私に気づいて距離を詰めてきた
「今度の偵察、ナツも行くんだってな?」
「行くよ
ナロンも行くよね?」
「当たり前だ
俺は力に自信があるもんでね」
自信満々に
力こぶを入れて見せてくれた
「頼りにしてる」
そう伝えると
うんうんと頷きながら
私の頭をポンポンとした
そしてジッと見つめてくる
あっ、バレる!?と思った瞬間
優しい目をして
「お互いかましてやろうぜ」と言って
頭から手を離し背を向け歩いて行った
その姿からしばらく目が離せなかった
その後私はジーナのところへと向かった
「ジーナなら部屋に帰ったよ」
そう聞いたので部屋へ向かう
コンコン
‥待ってみる
するとはーい、と返事と共に
ジーナが扉を開けてくれた
「あれ?ナツじゃん
いつも普通に入ってくるのに
どうしたんだよ?」
「‥なんとなくね
入っていい?」
「もちろん、
どうぞお姫様~」
執事の様に部屋の中のソファへ促された
「何かあった?」
私が座ると、
お茶を入れながら聞いてくれた
「‥うーん‥
ナロンに私がこっちのナツじゃないって
バレそうなんだけど、
バレないようにしようと思ったので報告」
「あのマッチョナロンが気づいたの?」
コポポポ、とお茶が入る音が聞こえている
「いや、気づいてはないと思うけど、
なんかいつもと違うって
前に言われたんだよね
なんて言うか、ナロンってさ
ナツのこと好きなのかな?って思う
ところがあって‥
違うって分かっちゃったら
上手く説明も出来ないし‥」
「あー、なるほどね」
ジーナはいつもより少し
覇気がないような返事をし、
入れたお茶を私の前に置いて
向かいのソファに腰をかけ足を組んだ
「確かにマッチョナロンは
ナツのこと好きだよ
ナツ以外にあんな触ることしないし
分かりやすいよな」
私はジーナを見つめていたが、
何故か目が合わなかった
「やっぱりそうなんだ」
入れてもらったお茶を飲む
「ちなみにデイスもナツのこと好きだよ」
ブッ!
せっかくのお茶を吹き出してしまった
「あーはっは!
何やってんだい、ナツ!
これで拭きな」
笑いながらタオルを渡してくれたので
それを受け取り拭きながら謝る
「気にしなくていいって!
デイスのことも気づいてるかと思ったけど
そっちは気づいてなかったのか!」
「一回しか話したことなかったし‥
でもそれっぽいこと言ってたし
ウインクしてたから気づくべきだったな」
「うへぇ、気持ちわるぅ~」
と言いながらもジーナは組んだ足を
バシバシ叩きながらゲラゲラ笑ってた
「ナツってモテるんだね?」
「そうだねー、
ただ、ちょっと変わってるやつに
モテてるって感じだけど」
「デイスが私が笑顔でスキップしてるとこ
初めて見たって言ってた
機嫌が良い今ならって‥
デイスにもそのうち何か違うって
言われるかも‥」
「別にいいじゃん
悪いことしてるわけじゃないんだし
ここにいる間は
ナツはナツの好きな様に行動したらいいよ
いくらでもフォローできるし」
「ありがとう、ジーナ‥」
感動して目がうるんだ
本当にジーナがいてくれてよかった
「で、なんで
笑顔でスキップしてたんだい?」
「えっ!?」
「理由があるだろう?
笑顔でスキップなんて」
ズイっと身を乗り出して
私に尋ねてくる
「あるけど‥
誰にも言わない?」
うんうんと笑顔で頷くジーナ
「シオンから話しかけてくれた
私に慣れてくれたのかも」
「あぁー、タイプだって言ってた子だね
よかったじゃん」
「うん、ありがとう
あっ、そろそろ行くね
会議の書類、片付けなきゃ」
そう言って私はジーナの部屋から出た
「あー、終わらせたつもり
だったのになー」
ジーナは悲しく笑いながら
独り言を呟き、お茶のカップを片付けた
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