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五十三話
しおりを挟む外から聞こえる街の人々の声が
少しずつ小さくなっていき
街のお店が閉まる時間が近づいてきた
私はネクタイのない隊服で討伐署を出て
キトとライハがアジトを作っている
北東の門へと怪しまれないよう
いつも通りに歩きながら進む
北東の門の近くに着くと
警備隊がたくさんいた
南西が襲われたことにより
こちらの警備隊の人数もいつもより多い
夜までには帰るつもりをしているが
タリアにも、ましてやその上の人たちにも
了承を得ているわけではない
どうやって門の外に行けばいいのか
そこまで考えていなかった自分を
浅はかだと思いながら、
どうしようか途方に暮れている私の上で
カラスが飛翔していた
北東の門から60メートルほど
離れたところにある雑貨屋の前に
2つの影がある
その影の1つは北東の門の近くに
立ち尽くしているナツを見つけ動かない
「どうしたの?」
声をかけられハッとしたように
2つの影が向き合うと夕陽で顔が見える
その影は私服のシオンとリクだった
「あー‥あそこにナツさんがいて‥」
シオンはナツのいる方向を小さく指差す
「あっ、本当だ‥
今日は見回りお休みになったんでしょ?
何であんなところに
隊服でいるんだろうね?」
2人はナツの方に顔を向けながら話している
シオンは険しい表情を見せた
「‥もしかしたら
あの2人に会いに行こうとしてるのか?」
「あの2人って?」
「盗賊の2人だよ、前に話しただろ?
ナツさんと追いかけた時に会ったってこと」
「あ、覚えてるよ
でも1人でわざわざ会いに行く理由なんて
あるのかな?」
「‥‥」
シオンは口をつぐんだ
盗賊に会ったことは伝えたが
ナツの目については伝えていないし
ジーナにも軽く口止めされていたから
話していいものか考えていた
「‥なんか理由がありそうだね?」
リクは何かを察し
眉間に皺の寄せ考え込んでいる
シオンを見つめ、優しい声で言った
「言わなくても大丈夫だよ
言いたくなったら言ってくれたらそれでいい
ただ、なにか理由があるのなら、
ナツさんに協力しようか」
雑貨屋の前で商品を見るフリをしながら
2人はコソコソと話し始めた
「協力‥?」
「もしシオンの言う通り
盗賊に会いたいなら
門の外に行きたいはず
だって今日は街の外からの人間は
1人も通さないって決めたから
盗賊は街の中に絶対入ってこないもん
朝方の事件のせいで
門の前はいつも以上に人がいて
頼んで行けるほど優しくはなさそうだし
あそこで立ち尽くしてるってことは
誰にも言わずに来たんだろうなって思う
つまり、許可を取っていない」
シオンは驚きの表情をしながら
感心したように頷く
「門は鉄格子で隙間から見えるし、
門を挟んだ街側にも外側にも警備隊はいる
適当な理由で門から出て
街に近いところで盗賊に会ってたら
目的としてることには辿り着かないし
下手したら諜報員だと思われかねない」
「諜報員‥」
「常に門には馬が2頭繋いである
馬を使って少し遠くに行ければ、と
僕は思うんだ
進めば進むほど外は危険ではあるけれど」
リクは言い終わるや否や空を見上げる
シオンもつられて空を見上げた
そこには先ほどと変わらず
カラスが数羽飛んでいる
「?」
つられて空を見たのはいいが
何なのか分からず、リクに視線を戻す
眩しいのか少し目を細めながら
空を見上げるリクは
シオンがいつも見ているリクより
大人びて見えた
「カラスは頭が良くて
遊ぶという行動を取ることがあるんだ
その対象が光ものだという説がある
それを利用すれば‥」
そこまで話したところで視線を感じ
振り返ったリクは
ナツがこちらを見ていることに気づいた
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