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百三十四話
しおりを挟む食事を終えるとジーナは仕事の為に
部屋へ戻って行った
私には仕事はないので、
何となく中庭へ向かう
ナツって偉いさんのはずなのに
仕事あんまりないのが不思議
ジーナはあんなに忙しそうなのにな
中庭に着くと木や花のおかげなのか、
空気を吸うと気持ちが軽くなる
一度深呼吸をし辺りを見渡すと
誰もいないと思っていたが、
何個かあるベンチの内の1つに
見覚えのあるローツインテールの
後ろ姿があった
「ユナ?」
ベンチに近付き、声をかける
こちらを振り返った顔を見ると
やはりユナだった
驚いていたようだが、
私だと分かるとすぐに微笑んでくれた
「ナツさん、おはようございます
今日もいい天気ですねっ」
ベンチの真ん中に腰掛けていたユナが
笑顔のまま挨拶し、端っこに移動したので
私もベンチに腰掛ける
3人ほど腰掛けられるベンチに
2人なので、自然と真ん中に隙間が出来た
見回り班としての仕事も終わり、
ユナと会うのは久々だ
ユナが体調不良で見回り班を
休んだ事を思い出した
「体調不良で見回り班休んでたけど、
もう平気?」
一瞬暗い表情が見えた気がしたが、
笑顔のままだったので
もしかしたら勘違いかもしれない
「大丈夫です!
最後の日にお休みしちゃってごめんなさい」
「気にしないで
体調が戻ったならそれで良いんだから」
「ありがとうございます」
少しの間、沈黙が訪れた
髪の毛が少し揺れるぐらいの
風が吹いていて心地良い
雲一つない青い空に顔を向け、
瞬きをする時に
長めに目を瞑ったままにしてみる
ベンチじゃなくて芝生で寝転がりたい
「気持ち良い、ですね」
ふとそう呟いたユナの横顔は
とても大人っぽく、
いつもの可愛らしさより
色っぽさが優っているように見えた
「そう、だね」
人には踏み込まれたくない事情が
1つや2つは必ずあると思う
私だって
あの時に思い出した
元の自分の身に起きた事、
言いたくない‥
こっちにいるからか
そこまで落ち込んではないけど
やっぱりショックだし怖かったから
だから、
どうかしたのかと聞きそうになったが
なんとなく聞かない方がいいような気がして
言葉を飲み込んだ
「私、すぐにはまだ無理かもしれないけど、
必ず前に進みます」
「え?」
「誰かに聞いてもらってないと
気持ちがまた揺れそうなんで‥
聞いてもらう相手を勝手にナツさんに
決めちゃいましたっ」
「うん?」
よく分からなくて、曖昧な返事をする
「私っ、絶対に
いい男と付き合うんだからー!」
ベンチから立ち上がり
空に向かって叫んだユナは
そのまま空へ1つ息を吐いた
私が驚いているとこちらを振り向き、
くしゃっとした笑顔でニコッと笑う
「えへへっ」
今日、中庭に来てから
じっくりと正面からユナの顔を見たのは
この時が初めてだった
目が少し腫れぼったく思う
私はユナの視線を受け止め
微笑みながら頷いた
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