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学園生活篇
15 行方不明
しおりを挟む夕暮れ間近の住宅街、ピアノのレッスンが終わった。乃亜はいつもと違って何だか気が重かった。もうすぐ発表会も近いので、レッスンは厳しいし、他に習い事もあり、最近友達とも遊んでない。
母親は今日はパートの日で、帰りが遅くて迎えは無し。おまけに今朝は喧嘩をしてしまった。だから、今日は少しだけ公園のブランコに乗ってから帰ろう。最近、遊んでないし、五分間だけブランコに乗る事にした。
公園に行くと、隣のクラスの男の子が何人かでで遊んでいる。
時計の針はもうすぐ5時。男の子達は一人二人と帰って行き、最後に一人だけになった。乃亜はブランコに乗り、眺めていると女子高生が来て、その子に話しかける。
「弘海、帰るわよ」
「あれ?姉ちゃん、部活は?」
「今はテスト近いから早く終わるの」
女子高生は男の子と公園を出る。公園からは誰も居なくなり、乃亜の貸し切り状態になった。
「へへっ。なんだがお嬢様みたい」
少しだけ嬉しくなり、ブランコを漕いだ。
「可愛いお嬢さん…」
ブランコを夢中で漕いでいると、誰かに声を掛けられた気がして、一回漕ぐのをやめる。
ブランコを止めると、袈裟を着たお坊さんがいた。
「誰?」
「宿を貸してくれるかい?」
家に帰ってくるなり、蛍は女の子に抱き着かれる。と言っても、これは決して嬉しい事では無かった。女の子は蛍より、ずっと歳下で、それも自分の妹だからである。
「お前……何でいるの?」
ため息混じりに、妹のネリネに尋ねる。
「何よ?せっかく妹が顔を見に来てあげたのにそんな言い方」
妹が来たという事は、世話係も一緒の筈だ。まだ、一人で人間界来れない筈だ。
「瑠璃は?」
瑠璃というのは、ネリネの世話係で雪女である。
「え?瑠璃は家でお留守番…」
どうも歯切れが悪い。これは三吉にも尋ねる必要があるとキッチンに行く。
三吉は相変わらず似合わないフリフリのエプロンを身につけていたが、もう蛍は見慣れてしまった。
「三吉、ネリネなんでいるの?」
「ああ。実はお嬢は…」
「三吉!」
ネリネは三吉の尻を叩く。
「いたた!いや、お嬢。言っておいた方が…」
「いいの!」
ネリネは冷蔵庫からジュースを取り出して、リビングへと行く。
「…何でもいいけど、ネリネの相手頼んだぞ」
「え?坊っちゃんがすればいいでしょ?」
三吉は忙しいと言って、酒を飲みながら料理を始める。蛍は舌打ちをして、リビングへ向かう。
そう言えば、あの子名前何だっけ?公園で一人でいた女の子、確か合唱コンクールでピアノを弾いていたなと思い出す。弘海は学校の宿題をやりながら、考えていた。
しばらくすると、電話の音が聞こえて姉が電話をとる。
「…そうですか。うちには…弟にも聞いてみます。はい、気を付けます」
電話を終えて、姉が話しかけてきた。
「乃亜ちゃん…。よく知らないな…」
「ならいいけど。家に帰ってきてないんだって」
もうすぐ夜八時。弘海の同級生がまだ家に帰って来てないという。電話は弘海の友達真人の母親かららしく、乃亜と言う女の子がまだ家に帰っていない。
真人の母は乃亜の母親と仲がいいらしく、今知っている同級生に確認している。
「警察にも相談してるみたいだけど…」
弘海は思い出した。あの公園にいた子確か…。
とりあえず、なずなにその事をなずなに伝え、なずなは真人の母に連絡する。
その日は、結局何の手かがりもなく、次の日を迎えた…。
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