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学園生活篇
14帰り道
しおりを挟むガラムはただ、蛍が泳ぎを見るしかなく、プールに浮かんでいた。
「ど、どうしよう?」
蛍達がいる向こう岸まで行きたいのだが、上手くて足を動かす事が出来ない。
不意に何かが足を引っ張る。まるで手のようだ。
「ひっ…!」
ガラムは余りの恐ろしさにその場に固まる。
「まずはお前からだ!」
そう水中から聞こえ慌てて逃げ出そうとするが、足を掴まれていて、上手く足が使えない。必死に逃げようと足をばたつかせた。
「宗ちゃん!蛍君!助けて!」
「ガラム!今行く…」
宗治はプールに飛び込もうとするが、蛍に制止される。
「た、助けて…‼︎」
ガラムは足だけでなく、手も動かし進む。
向こう岸が遠く遠く感じる。だけど、逃げなきゃと水が口や鼻、耳に入ろうと気にせずガラムは必死で手足を動かした。
力強く足を掴まれるが、それでも必死で蹴飛ばし、遂に縁までたどり着き、蛍と宗治がガラムの身体を引っ張り上げ、その勢いで水虎も地上に上がる。
「黒筒変化〝縄“」
蛍は水虎を逃すまいと縄でキツく縛り上げる。
「ち、畜生!折角、人間界に来たのに!」
水虎は喚いたが、蛍に頭を蹴飛ばされる。
「おい。閻魔手形がないみたいだな!」
「へっ!そんなもんねえよ!俺は鬼門が開いた時、逃げ出したんだ!」
とにかく、こいつに詳しい話を聞きたいが…。
「お前の他にどいつが逃げ出したんだ?」
「そ、それはよ…ひっ!」
水虎が天を仰ぎ、目を見開いて苦しみ出す。
「グェッ…グッギャアアア!」
「おいっ!」
あっという間に、水虎の身体は消え去る。
「なっ…」
突拍子もない出来事に、一同唖然とするが、すぐに我を取り戻す。
「………田中蛍!」
蛍は呼ばれたかと思うと、宗治に顔面を殴られていた。
「何?いきなり…」
挑発するように蛍は、ニヤニヤしながら指で口端を拭う。
「貴様!次は許さんぞ!」
蛍には何故そんなに、宗治が怒るかがわからなかった。
「あーあ。結局泳ぎの練習出来なかった」
ガラムは大きなため息を吐く。
校庭は日頃の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
「…でも、君は泳げてよかったじゃん」
蛍に言われて、ガラムは手をポンと叩く。
「お?田中、一ノ瀬。今帰りか?」
途中で担当の山野に出会う。
「ええ。まあ…」
「そうか。気をつけて帰れよ」
山野は資料を沢山抱えていて、まだ仕事が残っているようだった。
「先生も無理しないでよー」
「大丈夫!俺はタフなんだ!お化けが出ないうちに帰れよー」
「子供じゃないんだから、お化けなんて怖くないよ」
ガラムは笑いながらそう言った。山野に手を振り、校門から出る。
「…って、何で僕まで君んちまで送らなきゃ行けないんだ」
さっき山野に言っていた事は何だったのか。とは言え、本物の妖怪を見た後には仕方がない。
蛍は律儀にガラムをうちまで送り、ついでに近くのなずなの家をゆっくりと見る。
明るい笑い声が聴こえて、蛍は安心する。
通り過ぎる時、背の高い男に打つかる。
「すみません」
蛍は軽く謝るが、男は聞こえていないようだった。だが、男がこう言ったのだけは聞こえた。
「紅菊…」
その時は何の事だか、分からなかった。
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