蛍地獄奇譚

玉楼二千佳

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二学期地獄編

83 帰還

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「ちょ……どうすんだよっ?」

閉じてしまった境界面。これでは、蛍達は帰って来れない。

「……あのガキが消えタか。あと……鬼と化け猫」
「俺は?…………ひっ!」

翔一は、巨大ねずみの頼豪に睨まれ、三吉の後ろに隠れた。

「お前、引っ込んでろ。どっかで坊ちゃんに……その必要は無いか」

三吉は、何も無いところに目をやると、少しづつ境界面が開いてくる。

「え?」
「蛍か」

境界面は大人が入る大きさになると、ゆっくりと蛍がなずなを抱えて出てくる。

「……坊ちゃん。ご無事で」

蛍はなずなを下ろした。

「しょうけら、今すぐペンペンと人間を避難させろ」
「わ、分かった!なずなちゃん!」

翔一はなずなの手を引っ張っり、走り出す。

「行かせるか!」
「させるか!」

又三郎は瞬時に身体を大きくして、頼豪の前に立ち塞がる。

「貴様……ただの化け猫ではないヵ……」

頼豪の体は次第に縮んでいき、ネズミの大きさになると、走り出していく。

「くそ!追いかけるぞ!」





 



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「……一体、何のためだ」

土帝は、境内を作るために木材を運び、ネズミ達に働かされている。

「さあ。でも、奴らここを本拠地にするみたいよ」

梔子くちなしも土帝と同じく木材を運ばされていた。

会田と美亜もいるが、彼らは洗脳されているようで眼は虚ろ。

土帝達2人は、打開策を練るために、敢えてネズミ達に従っている。

「とにかく、蛍が助けてくれるわ」
「あいつが……」
「蛍に助けられるのは嫌そうね?」

図星だった。土帝は我ながら短略的な考えだと思ったが、確かにいい気はしていない。

「大丈夫よ。私もアンタと同じ気持ち。あの2人がくっつくかもって考えるだけで、嫌になる……」

梔子は目を伏せて、そういった。

「だから、これからは協力しない?アンタはあの子と、私は蛍と……」 
「今はそんな時じゃない」

梔子は不満そうだが、今はそんな場合ではないのは確かだ。

「とにかく、この建物……完成させる訳にはいかない」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 なずなと翔一が下に降りると、すでに大騒ぎになっていた。

あるものは、ねずみに襲われ、またあるものは引っ掻き傷だらけだ。


「どうしよう?」
「……くそ。待てよ……こいつらだけなら」

翔一は何やら腕を組んで考え始めた。

「翔一さん!どうしたの?」
「なずなちゃん!なるべく1箇所にねずみ達を集めてくれ!」

なずなは翔一が何をするか分からなかったが、今は従うしかない。

「な、なずな!」

階段の近くに、みのりとガラムが息を切らしてやってくる。

「もう大変なのよ!」
「ねずみだらけだ!気持ち悪い」

ガラムとみのり、2人に事情を話して2人にも協力を要請した。

「待って!」

桃が駆け寄って来る。

「私も手伝う」
「水瀬さん……」
「多いと助かるぜ!」

そう言って、四人はばらばらにねずみ達を追いかけ始めた。

「さて、俺は準備するか!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……小豆婆、軽く処置だけはして置く。しかし、外が騒がしいな」


経国つねぐには、保健室で小豆婆の応急処置を終えると、外が騒がしいのに気付いた。

「私の事は後でいいです。外を……」

小豆婆は、術が解けてしまい、しわくちゃの身体になっていた。

「うむ……」

経国は、保健室に結界を貼り、外に飛び出していく。















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