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温もり
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麗子を抱いた星児が出て行き静かにドアが閉まると、スタジオは保の息づかいとみちるの嗚咽のみが聞こえる静寂の空間となった。
「みちる」
みちるは保の胸に埋めていた顔を上げた。優しい、ブラウンがかった暖色の瞳と視線がぶつかる。瞬間、堪えていたものが一気に奥底から込み上げた。
唇を引き結ぶみちるに保は優しく語り掛けた。
「我慢してたんだろ? いいぞ、もう、誰もいない。思い切り泣いていい」
「あ……っ、う……」
わぁあっ、とみちるは声を出して泣き出した。保はみちるを抱き締め静かに囁く。
「怖かったろ、ごめんな。姉貴が」
みちるは保の腕の中で首を振った。
謝らないで下さい。
言いたい言葉も嘆きに呑み込まれて出てこない。みちるは何も言えず泣き続けた。
「みちる」
保の胸に顔を埋めて暫し泣いていたみちるは、包み込むような優しい声にそっと顔を上げた。保はみちるの涙を指で拭う。
頬に手を添え、唇を重ねた。
「……ん」
余計な言葉などいらない。キスが、身体に残っていた微かな恐怖と悲哀と澱をゆっくりと拭っていった。
みちるの腕が求めるように保にしがみついた。
込み上げる激情は呼応する。絡めた舌を離し、唇が離れ目を見詰めた。
「保さん、抱いて下さい」
「……みちる」
今は肌が欲しい。一人でいられない。ダイレクトな温もりがなければ崩れてしまう。
微かに目を見開いた保だったが、瞳は直ぐに優しい色に変わった。
保さんの優しさを温もりに変えて、沢山下さい!
スーツの上着を脱ぎ捨てネクタイの結び目に指をかけ緩めた保はみちるを抱き締め、唇を重ねた。
数時間前の事だ。保は夕刻、劇場のメンテナンスに入っていた業者から一日目の作業が終了した旨の連絡を出先でもらった。その時、業者の男が気になる事を言ったのだ。
『支配人さんという方がみえて、鍵は後で自分が締めますと仰ってまして。何でも、これから踊り子さんと会う約束があるとか』
業者の男の報告を聞いた保は違和感を覚えた。
姉貴が? 誰と会う?
確かめる必要がありそうだ、と思った保は、どちらにせよメンテナンス作業の点検もあった為、劇場に足を向けた。
劇場に着くと裏口で龍悟と会い、全てを察知した。
誰もが激情を抱えて生きている。
激情は何処で生まれ、何処へ流れてゆくのかなど、誰にも分からない。
「保さん、保さん……っ!」
激しく求めしがみつくみちるの躰に応える保は、嬌声の漏れる唇を塞ぐようにキスをした。
澱む感情を洗い流して――!
保さんしか出来ないの。どんな時も私を受け止めてくれた保さんしか!
「みちる、みちる!」
愛してる。
喉元まで込み上げるその言葉を保は呑み込んだ。
言葉にしなくとも、触れ合う肌が、絡めた指が、繋がる躰が呼応していた。
「あぁ……っ!」
ビク……ッと震えたみちるの躰を逃さないように保はしっかりと抱き締めた。
「寒くないか?」
「大丈夫」
みちるは保に身体を委ね、胸に顔を寄せて目を瞑った。二人は板張りの床に寄り添ったまま座っていた。
熱を帯びた身体から、少しずつ体温が下がりつつあった。保は脱ぎ捨ててあった自分のスーツのジャケットをみちるの肩に掛けた。
冬の入口にある季節。エアコンの入っていない館内は、少しばかり冷気を漂わせている。保は優しくみちるの手を取り、握った。
「温かい」
みちるは保を見上げ微笑み、保はそっとキスをした。
「みちる」
「ん?」
静寂の空間で保は静かに話し始めた。
「みちるにはまだ、俺達の過去話してなかったな。少し話そうか。特に、姉貴と星児の話を」
みちるは保を見上げたまま、ゴクリと固唾を呑んだ。
「話そうな」
みちるは静かに頷いた。
「みちる」
みちるは保の胸に埋めていた顔を上げた。優しい、ブラウンがかった暖色の瞳と視線がぶつかる。瞬間、堪えていたものが一気に奥底から込み上げた。
唇を引き結ぶみちるに保は優しく語り掛けた。
「我慢してたんだろ? いいぞ、もう、誰もいない。思い切り泣いていい」
「あ……っ、う……」
わぁあっ、とみちるは声を出して泣き出した。保はみちるを抱き締め静かに囁く。
「怖かったろ、ごめんな。姉貴が」
みちるは保の腕の中で首を振った。
謝らないで下さい。
言いたい言葉も嘆きに呑み込まれて出てこない。みちるは何も言えず泣き続けた。
「みちる」
保の胸に顔を埋めて暫し泣いていたみちるは、包み込むような優しい声にそっと顔を上げた。保はみちるの涙を指で拭う。
頬に手を添え、唇を重ねた。
「……ん」
余計な言葉などいらない。キスが、身体に残っていた微かな恐怖と悲哀と澱をゆっくりと拭っていった。
みちるの腕が求めるように保にしがみついた。
込み上げる激情は呼応する。絡めた舌を離し、唇が離れ目を見詰めた。
「保さん、抱いて下さい」
「……みちる」
今は肌が欲しい。一人でいられない。ダイレクトな温もりがなければ崩れてしまう。
微かに目を見開いた保だったが、瞳は直ぐに優しい色に変わった。
保さんの優しさを温もりに変えて、沢山下さい!
スーツの上着を脱ぎ捨てネクタイの結び目に指をかけ緩めた保はみちるを抱き締め、唇を重ねた。
数時間前の事だ。保は夕刻、劇場のメンテナンスに入っていた業者から一日目の作業が終了した旨の連絡を出先でもらった。その時、業者の男が気になる事を言ったのだ。
『支配人さんという方がみえて、鍵は後で自分が締めますと仰ってまして。何でも、これから踊り子さんと会う約束があるとか』
業者の男の報告を聞いた保は違和感を覚えた。
姉貴が? 誰と会う?
確かめる必要がありそうだ、と思った保は、どちらにせよメンテナンス作業の点検もあった為、劇場に足を向けた。
劇場に着くと裏口で龍悟と会い、全てを察知した。
誰もが激情を抱えて生きている。
激情は何処で生まれ、何処へ流れてゆくのかなど、誰にも分からない。
「保さん、保さん……っ!」
激しく求めしがみつくみちるの躰に応える保は、嬌声の漏れる唇を塞ぐようにキスをした。
澱む感情を洗い流して――!
保さんしか出来ないの。どんな時も私を受け止めてくれた保さんしか!
「みちる、みちる!」
愛してる。
喉元まで込み上げるその言葉を保は呑み込んだ。
言葉にしなくとも、触れ合う肌が、絡めた指が、繋がる躰が呼応していた。
「あぁ……っ!」
ビク……ッと震えたみちるの躰を逃さないように保はしっかりと抱き締めた。
「寒くないか?」
「大丈夫」
みちるは保に身体を委ね、胸に顔を寄せて目を瞑った。二人は板張りの床に寄り添ったまま座っていた。
熱を帯びた身体から、少しずつ体温が下がりつつあった。保は脱ぎ捨ててあった自分のスーツのジャケットをみちるの肩に掛けた。
冬の入口にある季節。エアコンの入っていない館内は、少しばかり冷気を漂わせている。保は優しくみちるの手を取り、握った。
「温かい」
みちるは保を見上げ微笑み、保はそっとキスをした。
「みちる」
「ん?」
静寂の空間で保は静かに話し始めた。
「みちるにはまだ、俺達の過去話してなかったな。少し話そうか。特に、姉貴と星児の話を」
みちるは保を見上げたまま、ゴクリと固唾を呑んだ。
「話そうな」
みちるは静かに頷いた。
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