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お正月の過ごし方
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あたしとママは、あたしが物心ついた頃から年越しはパパの実家。パパはいません。
パパは、富士山に登りに行っちゃうの。それは、あたしが生まれる前から――ううん、ママと出会う前からって聞いてる。
だから、パパは自分の留守が心配だからって、年末からお正月は実家に帰るようにママに言ったみたいなんだけど。ママは、自分の実家じゃなくて、パパの実家を選んだ。
パパの実家は大きなお寺さんです。お寺さんの年末年始は大忙し。ママは、お手伝いすることを選んだんだって、あたし、最近分かったよ。
あたしも、母屋のお掃除とかお正月の準備とかできることは頑張ってお手伝いしてました。でも、今年は――、
「松葉杖のひよちゃんが行ったら心配かけちゃうし、気を遣わせちゃって、かえって迷惑かけちゃうものね。
今年はお家でお正月しましょう」
そう言ったママは、少し迷っていたパパに優しく笑って言った。
「パパは、いつも通りでいいのよ。私達は大丈夫だから」
あたしも、パパに。
「あたしが生まれる前からパパがずーっと続けてきたことを、あたしのせいで止めちゃうのはイヤだよ。あたしもママも大丈夫だよ」
ママとあたしの言葉に、パパはなんだかまるで男の子みたいに笑ったの。ありがとな、って、ちょっと照れくさそうに言って、あたしの頭をクシャッと撫でて、ママの額にキスをした。
パパは、やっぱりカッコいい。ママが嬉しそうに笑って、あたしもうれし――、
「ひよ」
パパが改まった感じであたしを真っ直ぐに見て言った。
「パパがいないからって、遼太と二人きりになったりしたら駄目だぞ。ひまりもちゃんと見ておいてくれ」
「……」
前言撤回です。
パパ、ぜんぜんカッコよくないです。どうしてどうしてパパは遼ちゃんをそんなにあたしから遠ざけたいの?
遼ちゃんに手を伸ばすあたしの前に、パパがどーんと立ちはだかってます。
ひどいよ、パパ……。
会えなければ会えないほど、あたしの中で遼ちゃんを呼ぶ気持ちが大きくなって、胸が、一杯になって、苦しくなっていくのに。
遼ちゃん、もうすぐあたしのそばからいなくなっちゃうかもしれないのに。
改めて考えると、ますます苦しくなって。不安に潰されちゃいそうなのに。
パパ、どうして分かってくれないの?
あたしの顔がほっぺ膨らませてどんどんひどい顔になる。
「そんな顔したって駄目だ」
膨らんだほっぺをパパの大きな手に挟まれて、しゅう、と縮まる。ほっぺ、挟まれたまま、泣きそうな顔でパパを睨むと、パパは困った顔をした。
「遼太はひよの学校の先生だろ。その辺はちゃんとわきまえなきゃ駄目なんだ」
「パパ」
ママの優しい声があたしとパパの間に割って入った。
「遼ちゃんはお友達が多いから、年末年始は忙しいみたいよ。ここ数年、年越しもお正月も家族と過ごしてないんですって。今年だってきっと忙しくて私達と一緒には過ごせないわよ」
柔らかい笑顔でママはそう言って、パパは。
「そうか、それならそんなに心配はいらないか」
「そうよ。それにしても、パパったらひよりと遼ちゃんのこと、どうしてそんなに神経質になるの? 遼ちゃんはひよりのお兄ちゃんよ」
「……あのなぁ、ママ」
パパ、困った顔。首を傾げてパパを見上げるママは、きょとんとしてる。パパ、ママにはどうにも説明しにくいみたいです。
パパはママにはホントに弱い。しどろもどろ、大げさな身振り手振りしてママに説明。いつものパパと全然違う。
もう……漫画みたいです。
あたしは、仲良くかみ合わない言い合いをするパパとママからそっと離れて、自分のお部屋に戻った。
カーテン少しだけ開けて、遼ちゃんのお家を見る。
真っ暗になったお外。遼ちゃんのお家が、お庭の外灯に照らされて暗闇に浮かび上がって見えた。でも、お家にはどのお部屋も電気が点いていなくて、誰もいないことが分かった。
ママが言ってた。遼ちゃんは年末年始は忙しいって。今年もきっと、遼ちゃんはお家にいないのかな。
遼ちゃん、遼ちゃん。会いたいよ。
どうして、遼ちゃん。
どうして、お家出ちゃうの?
もしかして、あたしの側にいるの、イヤになっちゃったの?
どうしよう。
あたしは、遼ちゃんがプレゼントしてくれたペンダントを握りしめて、カーテンに掴まったままずるずると座り込んでうずくまった。
もしかしたら、あたしはもう、この先ずーっと遼ちゃんに会えないのかもしれないって思ったら、涙が止まらなくなってしまった。
「遼ちゃん、遼ちゃん……」
窓辺にうずくまったまま、あたしはしばらく泣いていた。
遼ちゃん、胸が痛くて、苦しい、そんな年越しになちゃいそうです――。
パパは、富士山に登りに行っちゃうの。それは、あたしが生まれる前から――ううん、ママと出会う前からって聞いてる。
だから、パパは自分の留守が心配だからって、年末からお正月は実家に帰るようにママに言ったみたいなんだけど。ママは、自分の実家じゃなくて、パパの実家を選んだ。
パパの実家は大きなお寺さんです。お寺さんの年末年始は大忙し。ママは、お手伝いすることを選んだんだって、あたし、最近分かったよ。
あたしも、母屋のお掃除とかお正月の準備とかできることは頑張ってお手伝いしてました。でも、今年は――、
「松葉杖のひよちゃんが行ったら心配かけちゃうし、気を遣わせちゃって、かえって迷惑かけちゃうものね。
今年はお家でお正月しましょう」
そう言ったママは、少し迷っていたパパに優しく笑って言った。
「パパは、いつも通りでいいのよ。私達は大丈夫だから」
あたしも、パパに。
「あたしが生まれる前からパパがずーっと続けてきたことを、あたしのせいで止めちゃうのはイヤだよ。あたしもママも大丈夫だよ」
ママとあたしの言葉に、パパはなんだかまるで男の子みたいに笑ったの。ありがとな、って、ちょっと照れくさそうに言って、あたしの頭をクシャッと撫でて、ママの額にキスをした。
パパは、やっぱりカッコいい。ママが嬉しそうに笑って、あたしもうれし――、
「ひよ」
パパが改まった感じであたしを真っ直ぐに見て言った。
「パパがいないからって、遼太と二人きりになったりしたら駄目だぞ。ひまりもちゃんと見ておいてくれ」
「……」
前言撤回です。
パパ、ぜんぜんカッコよくないです。どうしてどうしてパパは遼ちゃんをそんなにあたしから遠ざけたいの?
遼ちゃんに手を伸ばすあたしの前に、パパがどーんと立ちはだかってます。
ひどいよ、パパ……。
会えなければ会えないほど、あたしの中で遼ちゃんを呼ぶ気持ちが大きくなって、胸が、一杯になって、苦しくなっていくのに。
遼ちゃん、もうすぐあたしのそばからいなくなっちゃうかもしれないのに。
改めて考えると、ますます苦しくなって。不安に潰されちゃいそうなのに。
パパ、どうして分かってくれないの?
あたしの顔がほっぺ膨らませてどんどんひどい顔になる。
「そんな顔したって駄目だ」
膨らんだほっぺをパパの大きな手に挟まれて、しゅう、と縮まる。ほっぺ、挟まれたまま、泣きそうな顔でパパを睨むと、パパは困った顔をした。
「遼太はひよの学校の先生だろ。その辺はちゃんとわきまえなきゃ駄目なんだ」
「パパ」
ママの優しい声があたしとパパの間に割って入った。
「遼ちゃんはお友達が多いから、年末年始は忙しいみたいよ。ここ数年、年越しもお正月も家族と過ごしてないんですって。今年だってきっと忙しくて私達と一緒には過ごせないわよ」
柔らかい笑顔でママはそう言って、パパは。
「そうか、それならそんなに心配はいらないか」
「そうよ。それにしても、パパったらひよりと遼ちゃんのこと、どうしてそんなに神経質になるの? 遼ちゃんはひよりのお兄ちゃんよ」
「……あのなぁ、ママ」
パパ、困った顔。首を傾げてパパを見上げるママは、きょとんとしてる。パパ、ママにはどうにも説明しにくいみたいです。
パパはママにはホントに弱い。しどろもどろ、大げさな身振り手振りしてママに説明。いつものパパと全然違う。
もう……漫画みたいです。
あたしは、仲良くかみ合わない言い合いをするパパとママからそっと離れて、自分のお部屋に戻った。
カーテン少しだけ開けて、遼ちゃんのお家を見る。
真っ暗になったお外。遼ちゃんのお家が、お庭の外灯に照らされて暗闇に浮かび上がって見えた。でも、お家にはどのお部屋も電気が点いていなくて、誰もいないことが分かった。
ママが言ってた。遼ちゃんは年末年始は忙しいって。今年もきっと、遼ちゃんはお家にいないのかな。
遼ちゃん、遼ちゃん。会いたいよ。
どうして、遼ちゃん。
どうして、お家出ちゃうの?
もしかして、あたしの側にいるの、イヤになっちゃったの?
どうしよう。
あたしは、遼ちゃんがプレゼントしてくれたペンダントを握りしめて、カーテンに掴まったままずるずると座り込んでうずくまった。
もしかしたら、あたしはもう、この先ずーっと遼ちゃんに会えないのかもしれないって思ったら、涙が止まらなくなってしまった。
「遼ちゃん、遼ちゃん……」
窓辺にうずくまったまま、あたしはしばらく泣いていた。
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