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カルテ15 わたしの選択~過去編~
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わたしが、弁護士になりたい、と思ったのは高校1年の時。
祖母が亡くなった時だった。
いわゆる二号さん、お妾さんだった祖母は、財力ある男性に(顔も名前も知らないけれどわたしの祖父にあたる男性)に見受けされ、家を与えられ、そこで母を生み、孫、ひ孫まで育てた。
その祖母が亡くなった時、家と土地を巡る騒動が起きた。
当然、祖母の名義となっていると思っていた屋敷の中で、祖母名義のものは、上物のみだった。
要するに、家屋のみだったのだ。
土地は、祖父の名義のままだった。
祖母の葬儀の後、母の元に乗り込んで来たのは、祖父であった男性の〝本当の〟親族達。
つまり、正規の相続人達。
祖父はとっくの昔に亡くなっており、その子、孫であった彼らは〝正当な相続人〟という法的事実を笠に着て、わたし達の生活基盤を崩しにかかった。
祖母は、名妓と呼ばれる誇り高き芸者だったという。
その、芸者としてのプライドを持って生きていた祖母を、祖父は見初め、引かせて見受けしたのだ。
祖母は祖父の家庭を壊そうとしたことなど一度もない。
慎ましやかに、誇り高く、女手一つで家を、家族を守って来た人だ。
それなのに、そんな女性に司法は少しも優しくなかった。
世の司法なんて、弱者の味方ではなかったのだ。
全てを手離さなければならないのか、と困り果てていた母を助けてくれたのが、祖母のお弟子さんの一人だった女性弁護士だった。
彼女はクライアントである母の為に奔走し、集めた証拠を駆使し〝法〟を味方に闘ってくれた。
今、わたし達が安穏と暮らせるは、彼女のお蔭と言ってもいい。
わたしはあの時、世の中を律する筈の〝法〟は万人の味方ではないことを知った。
使いようによっては、弱者に刃を向けるものとなる。
人が人として人らしく生きる為のものの筈なのに。
けれど、母を救ってくれた弁護士先生が教えてくれた。
その〝法〟を、弱者を守る為の武器に出来るのは、弁護士なのだ、ということを。
わたしはあの時、絶対に弁護士になるって、決めたの。
わたしの人生の礎、柱はあの時に出来たの。
猛勉強の末、やっと司法試験に合格できたわたしが何より嬉しかったのは、玲さんと同じ土俵で仕事をする権利を得たこと。
これから、どんどんキャリアを重ねて行こう。
少しでも、玲さんに近づけるように。
そんな気持ちを胸に、弁護士としての一歩を踏み出していた。
「菊乃、愛してるよ」
「あ……ぁんっん……」
玲さんの指が、スッと入ってくる感覚に、躰が震えた。
「菊乃も、ほら、言って」
「……だめ、言えな……んん」
突き抜ける快感を逃そうとした口を玲さんに塞がれた。
舌がするりと滑り込む。
〝言え〟って言ったくせに――。
年の瀬の膨大な仕事量を普段と変わらないクールな表情で淡々ときっちり片づけた玲さんは、しっかりと休みを取り、わたしをイタリアはシチリア島まで連れてきてくれた。
東京の今時期とは違う温暖な陽気の、美しい地中海の風景を堪能し、歴史を刻みながらも洗練された街並みを作ってきたパレルモの街を見て歩いた。
夜は、玲さんに、シチリア在住の知人を紹介されて一緒に食事をしたりもした。
今晩は、イタリア最後の夜だった。
夜、ホテルの部屋に戻ったわたし達はベッドに直行。
キスをして、服を脱がされて――ワインの火照りが抜けきらない酔いと、快楽が溶け合う燃えるようなひと時を過ごした。
厚いカーテンの隙間から覗く月を玲さんの肩越しに時折見つめて、愛撫がもたらす快楽の泉に溺れていった。
ひとしきり肌を重ねて、ゆっくりと起き上がった玲さんがわたしを抱き上げた。
「菊乃」と囁くように呼びながら、玲さんはわたしの頬にそっと手を添えた。
心地よい体温と、頬に触れる少し冷たい手が芯まで痺れさせて、わたしは首を竦めた。
そんなわたしを見て玲さんがフワリと笑った。
「手、出して」
「手?」
「そう、左手」
わたしは言われるままに左手を出した。
玲さんは、わたしの手を大きな手でそっと包み込んだ。
すると。
「玲さん……!」
どこから出して来たの、これは!?
玲さんの手が開くと、わたしの薬指に大きなダイヤ。
薄暗い間接照明を目一杯取り込んだ石がキラキラと光り輝いていた。
玲さん、いつのまに忍ばせていたの?
言葉も出ずに指輪がはめられた手を凝視していたわたしの顎にすっと指が掛かり、顔をクイッと上に向けられた。
視線の先に、玲さんの切れ長の涼やかな目。
その中に、いつもより少し、熱を感じた。
「菊乃、僕と結婚するんだ」
ストレートな言葉。
というか、完全に命令形?
相変わらず、わたしに拒否権を与えないつもり?
それに、今?
ロマンチックな時間はいくらでもあったのに、こんな……
セックスの後に?
ちょっぴり呆れたけれど。
わたしに、断る理由は――、と考えた時、フッと脳裏に過る姿にわたしは内心で狼狽えた。
遼太だったら、こんな風にはしない。
――いけない。
そう思った。
でも、止まらなかった。
遼太もまっすぐで強い感情を率直にぶつけてくるタイプだったけれど、玲さんとは違う。
結果的に引っ張っていく形になるけれど、そうなって当然、という態度を取った事はなかった。
駄目だ。
考え出したら切がない。
遼太はもう、人のもの。
そんなこと分かってる。
分かっているけど。
分かっているのに未練が捨てられない自分が嫌になる。
「菊乃?」
玲さんに目の中を覗き込まれて、ハッと我に返った。
慌てて脳内のもやもやを掻き消し、わたしは微笑んだ。
「ごめんなさい、びっくりしちゃって。
だって、玲さんたら、突然なんだもの」
玲さん、フッと笑う。
「こういうのは、突然の方がいいんだ。
冷静に熟考させないうちに頷かせる」
その言葉が玲さんの全てを物語っていている。
わたしは肩を竦めてフフと笑った。
「もしかして、返事は今すぐ?」
「そういうこと」
玲さんとなら、一緒に働いていける。
そう思った。
尊敬、しているもの。
玲さんの傍でなら、すっと働きたいって思える。
結婚の形は人それぞれ。
わたしは、この形を選ぼうって思った。
結婚は、心から愛している、とかそんな単純な事ではないって。
見つめ合っていたら、玲さんの顔が近づいて、唇が重ねられた。
柔らかく甘く、触れる唇。
そっと離れて、目が合うと。
「菊乃の答えは?」
わたしは、頷いた。
玲さんと一緒に生きていこうって決めた。
頷くわたしを確認した玲さんは何も言わず抱き締めた。
そして、耳元に囁く。
「僕は今年中に独立する。菊乃はどうする」
だいたい想像はついていて、そろそろかな、と思ってはいた。
イタリアに来て年明けを迎えて、玲さんは改めて決意したのだろう。
〝独立〟という言葉はわたしの胸にズシンとくる。
玲さんは「どうする?」と聞いているけれど、暗に「付いて来い」という意味が込められていることが伝わった。
今いる事務所を離れ、玲さんに付いていく、という事は、これから先、わたしは仕事も玲さんと運面共同体となることを意味している。
この選択は、結婚以外に、仕事面でも一つの賭けでもあった。
「付いていく。わたしは玲さんに、付いて行くわ」
普段クールで微笑む以上の笑顔を見せた事のない玲さんが、結婚の承諾、付いていく、というわたしの意思を確認した事で〝心からの安堵〟という隙をその顔に表した。
無防備な、という表現がピタリと来る、と言ったらいいのだろうか。
そんな笑顔。
「菊乃!」
強く抱き締められて、わたしは玲さんの身体を全身で感じながら。
この選択は間違ってない、きっと大丈夫よ、菊乃、
と自身の心に言い聞かせていた。
玲さんのスリムな身体に、腕を回して、わたしも玲さんを抱き締めた。
「愛してるわ、愛してる」
玲さんの耳に、そう囁いた。
そうよ、今のわたしは玲さんを、愛してる。
でもこの言葉が、なんだか自らに呪縛を課すような、そんな風に感じた気持ちを心の片隅から消す事ができなかった。
わたしはこの時、自分で自分に呪いを掛けたのかもしれない。
自分の心を縛る、そんな呪いを。
☆
半年後、玲さんの独立はとんとん拍子で進んだ。
玲さんを贔屓にしていた企業がいくつも顧客に付き、新しい事務所の運営はほんの数か月で落ち着いて回せるようになっていた。
結果、新事務所の所長は司法業務だけでなく、商売の腕も一流だった、と周囲を驚かせる事となった。
その頃、わたしと玲さんは両家の顔合わせも終え、結納を交わし、正式に婚約した。
両家の挨拶からここまでの経緯として、玲さんがお母様を亡くしていることを知った。
わたしも同じく父がいない片親。
そんな事もあってか、婚約までの運びはそれほど大きな反対も障害もなく、滞りなく進んでいた。
「お幸せな翠川先生、お帰りなさいませ」
クライアントのところを回って事務所に戻ったわたしを受付嬢が冷やかし半分でお出迎え。
わたしは軽く睨んで、笑う。
「リア充弁護士、戻りました」
冗談混じりにそう言うと、きゃあ、と受付嬢の女の子が両手で頬を挟んだ。
わたしは彼女を見、肩を竦めた。
この子はまだいい。
事務所の奥で、電話をしたり書類を見たり、忙しそうに動いている先生達の姿があったが、彼らは一切わたしを見ようとはしない。
わたしにとってここは決して居心地の良い場所とは言えなかった。
この事務所にいる先生達は皆、玲さんが直々引き抜いてきた百戦錬磨の優秀な弁護士ばかり。
ここでわたしは〝玲さんの婚約者〟という認識くらいしかされていない。
キャリアも浅く、それほどの実績もないわたしが大きな顔ができるわけがない。
心中でため息を吐きながらデスクに戻ろうとした時。
「翠川先生」
受付嬢がわたしを呼び止めた。
「手塚先生からの伝言がありました」
「手塚先生から?」
玲さんはいつでも何処でも「菊乃」と呼んでいたけれど、わたしは事務所では絶対に「玲さん」とは言わなかった。
「今、クライアントさんが見えているんですけど、手塚先生、他のクライアントさんのとの打ち合わせが押していて、約束の時間にちょっと遅れてしまうそうなんです。
なるべく早急に戻る努力はする、とおっしゃっていたのですが、場繋ぎのためにも翠川先生がクライアントさんのお話しを聞いておくように、との事でした」
玲さんとわたしのコミュニケーション手段は電話だってメールだってある。
けれど玲さんは、仕事関係の、特にこういった大切な要件は必ず事務所の誰か、第三者を通してわたしに伝えるようにしている。
馴れ合いを生まない。
だから玲さんは冷徹なまでに仕事が熟せるのかもしれない。
「分かりました。そのクライアントさんはどちらの部屋にお通ししているの?」
「第二応接室です」
受付嬢は奥の扉を指さした。
わたしは「ありがとう」と言って一度デスクに戻って荷物を置き、聴取する為の道具一式を持って応接室へ向かった。
ノックをして中に入ると、応接室のソファーに二人の中年男性が座っていた。
ビシッとスーツを着、落ち着いた雰囲気。
会社名は受け付けで聞いておいたけれど、わたしはスーツの襟章にサッと目を走らせ、再確認した。
玲さんが顧問を務める大手住宅総合メーカーの社員。
この二人はそこの重役という話しだった。
二人は立ち上がって挨拶をしたけれど、わたしの顔を確認した瞬間、彼らが顔に戸惑いの表情が浮かべたのを、わたしは見逃さなかった。
それを見て、直ぐにピンと来た。
持って来た案件は、恐らく女性の弁護士さんには話しづらいものなのだろう。
お掛け下さい、と手を差し出したわたしに、上役と見られる方の男性が遠慮がちに聞いた。
「あのう今日は、手塚先生は……」
わたしは極めて事務的に返答をする。
「手塚はもう間もなくこちらに戻ることになっております。
それまで、ただお待ちいただくのも、と思いまして、わたくしがご用件をお伺いしておくことにいたしました。
手塚が戻り次第、すぐに引き継ぎますので」
手塚に、と聞いた途端二人の男性はあからさまに安堵の表情を浮かべた。
玲さんがどれだけクライアントさんから信頼を勝ち得ているか、よく心得ている。
わたしなんて、まだまだ玲さんの足元にも及ばない。
でも、ここまで歴然と態度に表されると……一応、わたしも弁護士なんですけれど、なんて思ってしまう。
「では、まず今回はどのような――」
一呼吸置いてわたしは二人の男性に話しを促した。
彼らは一旦顔を見合わせ、部下と思われる男性の方が口を開き、話し始めた。
「実は、先月退職した女性社員が、わが社を告訴いたしまして――」
男性がわたしにしてくれた説明は、話し難そうではあったものの非情に分かり易いものだった。
けれど内容は、わたしにとっては当方として理解してあげたいものではなかった。
要するに会社は、不当解雇、として訴えられたのだ、一人の女性社員に。
いや、元、女性社員に。
「では、要点をおまとめいたしますと。
まず、その女性社員は、妊娠をきっかけにそれまでいた開発プロジェクトチームから、一般事務に移動となり、そこに不満を抱き退職、ということですね。
しかし、そこまでの経緯を不服として、彼女は今回告訴に踏み切った、と」
二人の男性社員は頷く。
少々髪が薄いずんぐりとした風貌の、話しをしていた男性は、地肌の見えるその頭から拭き出す汗をアイロンのかかったハンカチでしきりに拭いていた。
何をそんなに焦る事があるの?
後ろめたいの?
この案件、話しを聞く弁護士が女だとまずい?
そうね。女であるわたしは、この案件、出来る事なら原告の話しも聞きたいわ。
原告の彼女はきっと、自分の仕事を誇りに思い、生きがいを感じていた女性。
開発プロジェクトチームの一員として一線で活躍していたという。
そんな女性が、妊娠を機に、一般事務の庶務へと移動させられた。
その時彼女は、どんなショックを?
詳しい事情は、知らない。
けれど、女性を雇う限り、結婚妊娠、という女性にとっての一大転換期に会社は理解を示すべきではないの?
それを、掃き捨てるような真似を――。
隠さなければいけない、押し殺さなければいけない不快感を、わたしは知らず知らずのうちに顔を出していたようだ。
二人の男性の顔が次第に強張っていく。
その証拠にすっかり口を噤んでしまった。
我慢できずに口火を切ったのは、わたしだった。
「この、元社員の女性は、本当に望んで退職したのでしょうか?」
沸々と込み上げてくる怒りは、声に現れてしまう。
低い声で言ったわたしの顔を見て、男性二人も挑むような目を見せた。
「当然です。
だから、こちらの正当性を先生に証明してもらおう、とお願いにあがったのではありませんか」
完全に開き直られてしまった。
「でも、ですね――」
「余計なお時間を取らせてしまってもうしわけありません」
ドアが開き、玲さんが詫びながら入って来た。
あからさまに「助かった」という顔をした二人のクライアントを見てわたしは内心でムッとした。
玲さんはわたしの傍に来て耳元でそっと言う。
「菊乃、君はもう下がっていい」
わたしは玲さんに、聴取で書き取った書類を渡して引き継ぎ、応接室を後にした。
☆
「今回彼らが持ってきた案件の内容を知っていたら、僕は君にあんな事を頼まなかったよ」
クライアントが帰ってから直ぐに、わたしは玲さんのところに行った。
そして、自分なりに気に掛かった事を伝えたのだが、返ってきた言葉がこれだった。
大抵は、連絡を貰った時点で依頼の内容を聴取する。
けれどここ数日多忙だった玲さんは、依頼の電話を貰った時にここに来てもらう約束を取り付け、時間だけを伝えるにとどまっていたのだ。
玲さんの言葉にわたしは過剰に反応してしまう。
「だからなに?
わたしはあの件には首を突っ込んじゃいけないって言いたいの?」
あっさりと「そうだよ」と答えた玲さんに、わたしはカチンと来てしまった。
反論せずにはいられない。
「原告はわたしの同性よ。
女性の権利の観点からこの案件はもっとじっくり見てみたい。
訴えられた会社側にだって必ず非があると思うの。
一方からしか見ない、考えないなんて、フェアじゃないわ」
まくし立てたわたしを玲さんは表情も変えずにジッと見据えていた。
わたしが言い終わると、小さく息を吐いて口を開く。
「こちらのクライアントはあくまでも会社だ。
なぜ、相手方の立場に立ってそちらの気持ちまで汲まなければいけない?
相手方のことを考えるとしたら、こちらを少しでも有利にるする為の証拠資料を集める時だけだ。
弁護をする、ということはそういう事だろう。
菊乃、君はもう一度勉強し直した方がいいんじゃないか?」
屈辱的とも言える辛辣な言葉にわたしは二の句を告げず、押し黙ってしまう。
咄嗟には上手い切り返しが思いつかない。
仕事中の玲さんは、プライベートの時やわたしと二人きりで過ごす時の玲さんとは別人のようになる。
良く言えば仕事に真摯。
しかし、悪く言えば、
「この世界は、勝った者が正義なんだよ」
冷酷で、冷徹――。
玲さんには敵わない。
「分かりました」
頭を下げて自分のデスクに戻ろうとしたわたしに玲さんが言った。
「君は、君に与えられた仕事をするんだ」
この時にわたしが胸に抱いたのは〝わたしは、この人とは共にやって行く事は出来ないかもしれない〟という不安だった。
この案件との出会いは、その不安を現実のものとし、わたしの運命を変えるものとなった。
祖母が亡くなった時だった。
いわゆる二号さん、お妾さんだった祖母は、財力ある男性に(顔も名前も知らないけれどわたしの祖父にあたる男性)に見受けされ、家を与えられ、そこで母を生み、孫、ひ孫まで育てた。
その祖母が亡くなった時、家と土地を巡る騒動が起きた。
当然、祖母の名義となっていると思っていた屋敷の中で、祖母名義のものは、上物のみだった。
要するに、家屋のみだったのだ。
土地は、祖父の名義のままだった。
祖母の葬儀の後、母の元に乗り込んで来たのは、祖父であった男性の〝本当の〟親族達。
つまり、正規の相続人達。
祖父はとっくの昔に亡くなっており、その子、孫であった彼らは〝正当な相続人〟という法的事実を笠に着て、わたし達の生活基盤を崩しにかかった。
祖母は、名妓と呼ばれる誇り高き芸者だったという。
その、芸者としてのプライドを持って生きていた祖母を、祖父は見初め、引かせて見受けしたのだ。
祖母は祖父の家庭を壊そうとしたことなど一度もない。
慎ましやかに、誇り高く、女手一つで家を、家族を守って来た人だ。
それなのに、そんな女性に司法は少しも優しくなかった。
世の司法なんて、弱者の味方ではなかったのだ。
全てを手離さなければならないのか、と困り果てていた母を助けてくれたのが、祖母のお弟子さんの一人だった女性弁護士だった。
彼女はクライアントである母の為に奔走し、集めた証拠を駆使し〝法〟を味方に闘ってくれた。
今、わたし達が安穏と暮らせるは、彼女のお蔭と言ってもいい。
わたしはあの時、世の中を律する筈の〝法〟は万人の味方ではないことを知った。
使いようによっては、弱者に刃を向けるものとなる。
人が人として人らしく生きる為のものの筈なのに。
けれど、母を救ってくれた弁護士先生が教えてくれた。
その〝法〟を、弱者を守る為の武器に出来るのは、弁護士なのだ、ということを。
わたしはあの時、絶対に弁護士になるって、決めたの。
わたしの人生の礎、柱はあの時に出来たの。
猛勉強の末、やっと司法試験に合格できたわたしが何より嬉しかったのは、玲さんと同じ土俵で仕事をする権利を得たこと。
これから、どんどんキャリアを重ねて行こう。
少しでも、玲さんに近づけるように。
そんな気持ちを胸に、弁護士としての一歩を踏み出していた。
「菊乃、愛してるよ」
「あ……ぁんっん……」
玲さんの指が、スッと入ってくる感覚に、躰が震えた。
「菊乃も、ほら、言って」
「……だめ、言えな……んん」
突き抜ける快感を逃そうとした口を玲さんに塞がれた。
舌がするりと滑り込む。
〝言え〟って言ったくせに――。
年の瀬の膨大な仕事量を普段と変わらないクールな表情で淡々ときっちり片づけた玲さんは、しっかりと休みを取り、わたしをイタリアはシチリア島まで連れてきてくれた。
東京の今時期とは違う温暖な陽気の、美しい地中海の風景を堪能し、歴史を刻みながらも洗練された街並みを作ってきたパレルモの街を見て歩いた。
夜は、玲さんに、シチリア在住の知人を紹介されて一緒に食事をしたりもした。
今晩は、イタリア最後の夜だった。
夜、ホテルの部屋に戻ったわたし達はベッドに直行。
キスをして、服を脱がされて――ワインの火照りが抜けきらない酔いと、快楽が溶け合う燃えるようなひと時を過ごした。
厚いカーテンの隙間から覗く月を玲さんの肩越しに時折見つめて、愛撫がもたらす快楽の泉に溺れていった。
ひとしきり肌を重ねて、ゆっくりと起き上がった玲さんがわたしを抱き上げた。
「菊乃」と囁くように呼びながら、玲さんはわたしの頬にそっと手を添えた。
心地よい体温と、頬に触れる少し冷たい手が芯まで痺れさせて、わたしは首を竦めた。
そんなわたしを見て玲さんがフワリと笑った。
「手、出して」
「手?」
「そう、左手」
わたしは言われるままに左手を出した。
玲さんは、わたしの手を大きな手でそっと包み込んだ。
すると。
「玲さん……!」
どこから出して来たの、これは!?
玲さんの手が開くと、わたしの薬指に大きなダイヤ。
薄暗い間接照明を目一杯取り込んだ石がキラキラと光り輝いていた。
玲さん、いつのまに忍ばせていたの?
言葉も出ずに指輪がはめられた手を凝視していたわたしの顎にすっと指が掛かり、顔をクイッと上に向けられた。
視線の先に、玲さんの切れ長の涼やかな目。
その中に、いつもより少し、熱を感じた。
「菊乃、僕と結婚するんだ」
ストレートな言葉。
というか、完全に命令形?
相変わらず、わたしに拒否権を与えないつもり?
それに、今?
ロマンチックな時間はいくらでもあったのに、こんな……
セックスの後に?
ちょっぴり呆れたけれど。
わたしに、断る理由は――、と考えた時、フッと脳裏に過る姿にわたしは内心で狼狽えた。
遼太だったら、こんな風にはしない。
――いけない。
そう思った。
でも、止まらなかった。
遼太もまっすぐで強い感情を率直にぶつけてくるタイプだったけれど、玲さんとは違う。
結果的に引っ張っていく形になるけれど、そうなって当然、という態度を取った事はなかった。
駄目だ。
考え出したら切がない。
遼太はもう、人のもの。
そんなこと分かってる。
分かっているけど。
分かっているのに未練が捨てられない自分が嫌になる。
「菊乃?」
玲さんに目の中を覗き込まれて、ハッと我に返った。
慌てて脳内のもやもやを掻き消し、わたしは微笑んだ。
「ごめんなさい、びっくりしちゃって。
だって、玲さんたら、突然なんだもの」
玲さん、フッと笑う。
「こういうのは、突然の方がいいんだ。
冷静に熟考させないうちに頷かせる」
その言葉が玲さんの全てを物語っていている。
わたしは肩を竦めてフフと笑った。
「もしかして、返事は今すぐ?」
「そういうこと」
玲さんとなら、一緒に働いていける。
そう思った。
尊敬、しているもの。
玲さんの傍でなら、すっと働きたいって思える。
結婚の形は人それぞれ。
わたしは、この形を選ぼうって思った。
結婚は、心から愛している、とかそんな単純な事ではないって。
見つめ合っていたら、玲さんの顔が近づいて、唇が重ねられた。
柔らかく甘く、触れる唇。
そっと離れて、目が合うと。
「菊乃の答えは?」
わたしは、頷いた。
玲さんと一緒に生きていこうって決めた。
頷くわたしを確認した玲さんは何も言わず抱き締めた。
そして、耳元に囁く。
「僕は今年中に独立する。菊乃はどうする」
だいたい想像はついていて、そろそろかな、と思ってはいた。
イタリアに来て年明けを迎えて、玲さんは改めて決意したのだろう。
〝独立〟という言葉はわたしの胸にズシンとくる。
玲さんは「どうする?」と聞いているけれど、暗に「付いて来い」という意味が込められていることが伝わった。
今いる事務所を離れ、玲さんに付いていく、という事は、これから先、わたしは仕事も玲さんと運面共同体となることを意味している。
この選択は、結婚以外に、仕事面でも一つの賭けでもあった。
「付いていく。わたしは玲さんに、付いて行くわ」
普段クールで微笑む以上の笑顔を見せた事のない玲さんが、結婚の承諾、付いていく、というわたしの意思を確認した事で〝心からの安堵〟という隙をその顔に表した。
無防備な、という表現がピタリと来る、と言ったらいいのだろうか。
そんな笑顔。
「菊乃!」
強く抱き締められて、わたしは玲さんの身体を全身で感じながら。
この選択は間違ってない、きっと大丈夫よ、菊乃、
と自身の心に言い聞かせていた。
玲さんのスリムな身体に、腕を回して、わたしも玲さんを抱き締めた。
「愛してるわ、愛してる」
玲さんの耳に、そう囁いた。
そうよ、今のわたしは玲さんを、愛してる。
でもこの言葉が、なんだか自らに呪縛を課すような、そんな風に感じた気持ちを心の片隅から消す事ができなかった。
わたしはこの時、自分で自分に呪いを掛けたのかもしれない。
自分の心を縛る、そんな呪いを。
☆
半年後、玲さんの独立はとんとん拍子で進んだ。
玲さんを贔屓にしていた企業がいくつも顧客に付き、新しい事務所の運営はほんの数か月で落ち着いて回せるようになっていた。
結果、新事務所の所長は司法業務だけでなく、商売の腕も一流だった、と周囲を驚かせる事となった。
その頃、わたしと玲さんは両家の顔合わせも終え、結納を交わし、正式に婚約した。
両家の挨拶からここまでの経緯として、玲さんがお母様を亡くしていることを知った。
わたしも同じく父がいない片親。
そんな事もあってか、婚約までの運びはそれほど大きな反対も障害もなく、滞りなく進んでいた。
「お幸せな翠川先生、お帰りなさいませ」
クライアントのところを回って事務所に戻ったわたしを受付嬢が冷やかし半分でお出迎え。
わたしは軽く睨んで、笑う。
「リア充弁護士、戻りました」
冗談混じりにそう言うと、きゃあ、と受付嬢の女の子が両手で頬を挟んだ。
わたしは彼女を見、肩を竦めた。
この子はまだいい。
事務所の奥で、電話をしたり書類を見たり、忙しそうに動いている先生達の姿があったが、彼らは一切わたしを見ようとはしない。
わたしにとってここは決して居心地の良い場所とは言えなかった。
この事務所にいる先生達は皆、玲さんが直々引き抜いてきた百戦錬磨の優秀な弁護士ばかり。
ここでわたしは〝玲さんの婚約者〟という認識くらいしかされていない。
キャリアも浅く、それほどの実績もないわたしが大きな顔ができるわけがない。
心中でため息を吐きながらデスクに戻ろうとした時。
「翠川先生」
受付嬢がわたしを呼び止めた。
「手塚先生からの伝言がありました」
「手塚先生から?」
玲さんはいつでも何処でも「菊乃」と呼んでいたけれど、わたしは事務所では絶対に「玲さん」とは言わなかった。
「今、クライアントさんが見えているんですけど、手塚先生、他のクライアントさんのとの打ち合わせが押していて、約束の時間にちょっと遅れてしまうそうなんです。
なるべく早急に戻る努力はする、とおっしゃっていたのですが、場繋ぎのためにも翠川先生がクライアントさんのお話しを聞いておくように、との事でした」
玲さんとわたしのコミュニケーション手段は電話だってメールだってある。
けれど玲さんは、仕事関係の、特にこういった大切な要件は必ず事務所の誰か、第三者を通してわたしに伝えるようにしている。
馴れ合いを生まない。
だから玲さんは冷徹なまでに仕事が熟せるのかもしれない。
「分かりました。そのクライアントさんはどちらの部屋にお通ししているの?」
「第二応接室です」
受付嬢は奥の扉を指さした。
わたしは「ありがとう」と言って一度デスクに戻って荷物を置き、聴取する為の道具一式を持って応接室へ向かった。
ノックをして中に入ると、応接室のソファーに二人の中年男性が座っていた。
ビシッとスーツを着、落ち着いた雰囲気。
会社名は受け付けで聞いておいたけれど、わたしはスーツの襟章にサッと目を走らせ、再確認した。
玲さんが顧問を務める大手住宅総合メーカーの社員。
この二人はそこの重役という話しだった。
二人は立ち上がって挨拶をしたけれど、わたしの顔を確認した瞬間、彼らが顔に戸惑いの表情が浮かべたのを、わたしは見逃さなかった。
それを見て、直ぐにピンと来た。
持って来た案件は、恐らく女性の弁護士さんには話しづらいものなのだろう。
お掛け下さい、と手を差し出したわたしに、上役と見られる方の男性が遠慮がちに聞いた。
「あのう今日は、手塚先生は……」
わたしは極めて事務的に返答をする。
「手塚はもう間もなくこちらに戻ることになっております。
それまで、ただお待ちいただくのも、と思いまして、わたくしがご用件をお伺いしておくことにいたしました。
手塚が戻り次第、すぐに引き継ぎますので」
手塚に、と聞いた途端二人の男性はあからさまに安堵の表情を浮かべた。
玲さんがどれだけクライアントさんから信頼を勝ち得ているか、よく心得ている。
わたしなんて、まだまだ玲さんの足元にも及ばない。
でも、ここまで歴然と態度に表されると……一応、わたしも弁護士なんですけれど、なんて思ってしまう。
「では、まず今回はどのような――」
一呼吸置いてわたしは二人の男性に話しを促した。
彼らは一旦顔を見合わせ、部下と思われる男性の方が口を開き、話し始めた。
「実は、先月退職した女性社員が、わが社を告訴いたしまして――」
男性がわたしにしてくれた説明は、話し難そうではあったものの非情に分かり易いものだった。
けれど内容は、わたしにとっては当方として理解してあげたいものではなかった。
要するに会社は、不当解雇、として訴えられたのだ、一人の女性社員に。
いや、元、女性社員に。
「では、要点をおまとめいたしますと。
まず、その女性社員は、妊娠をきっかけにそれまでいた開発プロジェクトチームから、一般事務に移動となり、そこに不満を抱き退職、ということですね。
しかし、そこまでの経緯を不服として、彼女は今回告訴に踏み切った、と」
二人の男性社員は頷く。
少々髪が薄いずんぐりとした風貌の、話しをしていた男性は、地肌の見えるその頭から拭き出す汗をアイロンのかかったハンカチでしきりに拭いていた。
何をそんなに焦る事があるの?
後ろめたいの?
この案件、話しを聞く弁護士が女だとまずい?
そうね。女であるわたしは、この案件、出来る事なら原告の話しも聞きたいわ。
原告の彼女はきっと、自分の仕事を誇りに思い、生きがいを感じていた女性。
開発プロジェクトチームの一員として一線で活躍していたという。
そんな女性が、妊娠を機に、一般事務の庶務へと移動させられた。
その時彼女は、どんなショックを?
詳しい事情は、知らない。
けれど、女性を雇う限り、結婚妊娠、という女性にとっての一大転換期に会社は理解を示すべきではないの?
それを、掃き捨てるような真似を――。
隠さなければいけない、押し殺さなければいけない不快感を、わたしは知らず知らずのうちに顔を出していたようだ。
二人の男性の顔が次第に強張っていく。
その証拠にすっかり口を噤んでしまった。
我慢できずに口火を切ったのは、わたしだった。
「この、元社員の女性は、本当に望んで退職したのでしょうか?」
沸々と込み上げてくる怒りは、声に現れてしまう。
低い声で言ったわたしの顔を見て、男性二人も挑むような目を見せた。
「当然です。
だから、こちらの正当性を先生に証明してもらおう、とお願いにあがったのではありませんか」
完全に開き直られてしまった。
「でも、ですね――」
「余計なお時間を取らせてしまってもうしわけありません」
ドアが開き、玲さんが詫びながら入って来た。
あからさまに「助かった」という顔をした二人のクライアントを見てわたしは内心でムッとした。
玲さんはわたしの傍に来て耳元でそっと言う。
「菊乃、君はもう下がっていい」
わたしは玲さんに、聴取で書き取った書類を渡して引き継ぎ、応接室を後にした。
☆
「今回彼らが持ってきた案件の内容を知っていたら、僕は君にあんな事を頼まなかったよ」
クライアントが帰ってから直ぐに、わたしは玲さんのところに行った。
そして、自分なりに気に掛かった事を伝えたのだが、返ってきた言葉がこれだった。
大抵は、連絡を貰った時点で依頼の内容を聴取する。
けれどここ数日多忙だった玲さんは、依頼の電話を貰った時にここに来てもらう約束を取り付け、時間だけを伝えるにとどまっていたのだ。
玲さんの言葉にわたしは過剰に反応してしまう。
「だからなに?
わたしはあの件には首を突っ込んじゃいけないって言いたいの?」
あっさりと「そうだよ」と答えた玲さんに、わたしはカチンと来てしまった。
反論せずにはいられない。
「原告はわたしの同性よ。
女性の権利の観点からこの案件はもっとじっくり見てみたい。
訴えられた会社側にだって必ず非があると思うの。
一方からしか見ない、考えないなんて、フェアじゃないわ」
まくし立てたわたしを玲さんは表情も変えずにジッと見据えていた。
わたしが言い終わると、小さく息を吐いて口を開く。
「こちらのクライアントはあくまでも会社だ。
なぜ、相手方の立場に立ってそちらの気持ちまで汲まなければいけない?
相手方のことを考えるとしたら、こちらを少しでも有利にるする為の証拠資料を集める時だけだ。
弁護をする、ということはそういう事だろう。
菊乃、君はもう一度勉強し直した方がいいんじゃないか?」
屈辱的とも言える辛辣な言葉にわたしは二の句を告げず、押し黙ってしまう。
咄嗟には上手い切り返しが思いつかない。
仕事中の玲さんは、プライベートの時やわたしと二人きりで過ごす時の玲さんとは別人のようになる。
良く言えば仕事に真摯。
しかし、悪く言えば、
「この世界は、勝った者が正義なんだよ」
冷酷で、冷徹――。
玲さんには敵わない。
「分かりました」
頭を下げて自分のデスクに戻ろうとしたわたしに玲さんが言った。
「君は、君に与えられた仕事をするんだ」
この時にわたしが胸に抱いたのは〝わたしは、この人とは共にやって行く事は出来ないかもしれない〟という不安だった。
この案件との出会いは、その不安を現実のものとし、わたしの運命を変えるものとなった。
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