空からのI LOVE YOU

奈津 柚亜里

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初めての喧嘩

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「私は延命しません」

次の日病院で私はそう言い放った。

「では、担当医を紹介します。白川恵梨香さんです」

「白川です。何か不安があれば言ってね」

第一印象は若くて綺麗でお姉さん。今日もお麗しい、って言葉が似合う。

「よ、よろしくお願いします」

「さて、取り敢えず薬を出しますね。痛み止めと、進行を遅める薬とかね。それと、なにかあった場合はきちんと私に連絡すること。いいわね」

病院できるだけ行きたくないんですが…。顔はにこやかなのに、まったく優しそうな感じじゃないです…。

「じゃあ、学校行っておいで」

「行ってきます」

菜緒になんて言おうかな…明にも言わないと…。どうしよう。

少し気が重くなったまま学校に行くと、菜緒が飛びついてきた。

「大丈夫だった?なにもない?」

どうしよう。言うべき?言わなきゃ…

「あ…大丈夫。なんともない。少し風邪が酷くなった感じ」

私の口から出たのは反対の言葉だった。でも、菜緒は信じてくれたみたいで、

「良かった、次移動だから早く行こ?」

ごめんね、菜緒。菜緒には一番に言うはずだった。でも、菜緒が悲しむ顔は見たくない。

お昼休み、私は屋上でご飯を食べることにした。菜緒は、彼氏さんと食べるらしい。

誰もいないようで大きく伸びをする。頬をくすぐる風が、心地いい。

雲ひとつない空。私の心の中とは反対。 

「なにしてんの」

「なんでもいいじゃん」

どうしてこいつは私のいるところに現れるのかなぁ。

「どっか行ってよ」

「ひどいな、おい」

「………。」

「なんか言えよ、傷つくだろうが。まあ、そんなこよみも嫌いじゃないけど」

…なんなんだよ、こいつは。地味にドキッとしてしまったじゃないか。まあ、明は友人としての意味で言ってるんだろうけど。

「今日の、こよみ変じゃね?」

「そ、そ、そ、そんなことは…ないよ??」

「…嘘つくの下手すぎだわ。菜緒と話してても上の空だしな」

そんな、顔に出てたんだろうか。だとしたら、私は相当正直者らしい。

「そ、そんなわけないじゃん」

「じゃあなんだ、そのうろたえようは。ずっとこよみを見てる俺が言うんだから間違いない」

明は少し赤くなって顔を伏せた。自分で言って照れてるの?
…あ、そういうことか。

「明は面倒見いいからね」

「馬鹿じゃねーの。ったく、どんだけ鈍いんだこよみは」

「はあ?ふざけないで。誰が鈍いのよ」

「…お前だよ。さぁ、そろそろ五限始まるな」

私は立ち上がろうとしたがバランスを崩して倒れ込む。

「え?わ、きゃあぁぁぁ!」

「おま、おい!!」

ドスンと鈍い音がしたと思えば、目を開けると、どアップの明。それに、この体勢…私、明に覆いかぶさっちゃってるんですけど!!俗に言う、床ドンってやつだ。

「いってー。こよみ、おま、どけろ…やばいから。…色々…」

明だと余計に恥ずかしいっ…。え、明っ?……まさか。


「わ、わたし…先行く!!じゃあね!!」

「おう…あれ、これデジャヴ…」


まさか、ね。恋なわけないよね。明じゃなくてもそうなるんだよね。

わたしは、また自分に嘘をつく。
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