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自覚
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菜緒と無事仲直りをした後日、私は病院に来ていた。
「さて、何か変わったことは?」
「ないです」
嘘です。この前の発作を言ったらまた検査されるじゃん…。
「ほんとに?」
案の定あっけなく見破られて、
「実は…」
まんまと話す羽目に。倒れたことを伝えると白川先生は難しい顔をしてうなった。
「一回検査してみよっか」
「え、いやだ」
「はい、駄々こねないの。採血から行くわよー」
なんでもいいから、早く終わってくれ…。私は思いっきり機嫌が悪くなった。
「うーん…やっぱりか。若いから進行早いのよね…。お薬、少しかえよっか。あと体育とかしたらダメよ?」
徐々に悪くなっているのは自分が一番よくわかる。あと、どれくらい生きられるのかなぁ…。
「こよみ、平気だった?次体育だけど、見学だよね?バスケなんだけど、こよみ強いのに…勿体ないわ」
やりたいけど出来ないよ、ドクターストップかかっちゃってるし。今日は合同体育みたい。ってことは、明もいるんだよね…?明は、バスケが得意で私も明の影響でバスケをやってた。
「はじめ!」
笛の合図で試合が始まる。体育館内に響くのは黄色い歓声と靴が床に擦れる音とボールの跳ねる音。
今、明の試合らしい。明のシュートが入る、と同時に女子達の頭が痛くなるくらいの黄色い叫び声。
明が一瞬こちらを見た気がしたので見てみると、
『す・ご・い・だ・ろ』
と口を動かし笑った。
何…これ。すごくドキドキ…。なんでこんなに嬉しいの?
明は瞬く間に女子の波に飲まれていった。そんな明をみると胸が苦しくなった。
もう、ごまかせない。隠せない…自分に、嘘をつけない…。
私は、明が好きだ。
この想いに気づいてはいけないと、ずっと思っていた。だから、ずっとごまかして自分に嘘をついてきた。
でも、もう限界だよ…。
不意に泣きそうになる。
何を今更…病気じゃなかったら良かったのに…なんて。
自然と顔が俯向く。
「こよみ、大丈夫?しんどいか」
顔を上げると私が今考えていた人がいて、目頭が熱くなった。
泣いているの…ばれた??
「ううん、平気よ」
「そうか…何かあったら言うんだぞ」
明は少し悲しそうな顔をして私の頭をくしゃっと撫でた。
「わかってるよ…」
「で、何話してたの?」
菜緒がアップルパイにフォークを突き刺しながら聞いてくる。カフェバーに誘われたのだ。
「あれ、見てた…?それに、菜緒食べ過ぎだよ。私のおごりだからまだいいけど、太っちゃうよ?」
「いいのー、美味しいから。見てたに決まってるでしょ。詳しく教えてもらおうか…?」
菜緒さん、なんか目がキラキラしてますよ…。
「私…明のこと好きみたい」
「自力で気づくなんて…。おめでとうって言ってもいいのかな?」
「わかんない、今更気づいても…遅いし」
「なんで?明のこと好きなんでしょう?しかも、もう告白されてるし…」
「そうなんだけどね…あれ、私告白されたって言った?」
「い、言われたわよ。ちゃんと聞いたから!」
きょどりすぎですよ、菜緒さん。
「…ごめん、明から聞いたの」
まぁ…いいけどさぁ。ちょっと、あからさまにホッとしないでよ菜緒。
「どうせ私はもう死ぬ。死ぬ人間がまだ生きる人間を好きなってはいけない。ましてや、恋人なんか作っちゃいけない。その相手を傷つけるだけで終わってしまう。苦しませたく…ないから」
菜緒は黙って聞いていたけど、突然机を叩いた。
「なんなの?さっきから黙って聞いてれば…。誰が死ぬ人間が生きる人間を好きになったらいけないって決めたのよ!?どうしてそんなにマイナス思考なの?残りを楽しむって選択はこよみの頭の中にはないわけ?!相手を傷つけるとか、そんなの関係ないでしょ!?明はそれでも側にいてくれるって言ってるんだから。どうして自分から離れていこうとするの、私だってずっとこよみといるに決まってるじゃない!!」
「さて、何か変わったことは?」
「ないです」
嘘です。この前の発作を言ったらまた検査されるじゃん…。
「ほんとに?」
案の定あっけなく見破られて、
「実は…」
まんまと話す羽目に。倒れたことを伝えると白川先生は難しい顔をしてうなった。
「一回検査してみよっか」
「え、いやだ」
「はい、駄々こねないの。採血から行くわよー」
なんでもいいから、早く終わってくれ…。私は思いっきり機嫌が悪くなった。
「うーん…やっぱりか。若いから進行早いのよね…。お薬、少しかえよっか。あと体育とかしたらダメよ?」
徐々に悪くなっているのは自分が一番よくわかる。あと、どれくらい生きられるのかなぁ…。
「こよみ、平気だった?次体育だけど、見学だよね?バスケなんだけど、こよみ強いのに…勿体ないわ」
やりたいけど出来ないよ、ドクターストップかかっちゃってるし。今日は合同体育みたい。ってことは、明もいるんだよね…?明は、バスケが得意で私も明の影響でバスケをやってた。
「はじめ!」
笛の合図で試合が始まる。体育館内に響くのは黄色い歓声と靴が床に擦れる音とボールの跳ねる音。
今、明の試合らしい。明のシュートが入る、と同時に女子達の頭が痛くなるくらいの黄色い叫び声。
明が一瞬こちらを見た気がしたので見てみると、
『す・ご・い・だ・ろ』
と口を動かし笑った。
何…これ。すごくドキドキ…。なんでこんなに嬉しいの?
明は瞬く間に女子の波に飲まれていった。そんな明をみると胸が苦しくなった。
もう、ごまかせない。隠せない…自分に、嘘をつけない…。
私は、明が好きだ。
この想いに気づいてはいけないと、ずっと思っていた。だから、ずっとごまかして自分に嘘をついてきた。
でも、もう限界だよ…。
不意に泣きそうになる。
何を今更…病気じゃなかったら良かったのに…なんて。
自然と顔が俯向く。
「こよみ、大丈夫?しんどいか」
顔を上げると私が今考えていた人がいて、目頭が熱くなった。
泣いているの…ばれた??
「ううん、平気よ」
「そうか…何かあったら言うんだぞ」
明は少し悲しそうな顔をして私の頭をくしゃっと撫でた。
「わかってるよ…」
「で、何話してたの?」
菜緒がアップルパイにフォークを突き刺しながら聞いてくる。カフェバーに誘われたのだ。
「あれ、見てた…?それに、菜緒食べ過ぎだよ。私のおごりだからまだいいけど、太っちゃうよ?」
「いいのー、美味しいから。見てたに決まってるでしょ。詳しく教えてもらおうか…?」
菜緒さん、なんか目がキラキラしてますよ…。
「私…明のこと好きみたい」
「自力で気づくなんて…。おめでとうって言ってもいいのかな?」
「わかんない、今更気づいても…遅いし」
「なんで?明のこと好きなんでしょう?しかも、もう告白されてるし…」
「そうなんだけどね…あれ、私告白されたって言った?」
「い、言われたわよ。ちゃんと聞いたから!」
きょどりすぎですよ、菜緒さん。
「…ごめん、明から聞いたの」
まぁ…いいけどさぁ。ちょっと、あからさまにホッとしないでよ菜緒。
「どうせ私はもう死ぬ。死ぬ人間がまだ生きる人間を好きなってはいけない。ましてや、恋人なんか作っちゃいけない。その相手を傷つけるだけで終わってしまう。苦しませたく…ないから」
菜緒は黙って聞いていたけど、突然机を叩いた。
「なんなの?さっきから黙って聞いてれば…。誰が死ぬ人間が生きる人間を好きになったらいけないって決めたのよ!?どうしてそんなにマイナス思考なの?残りを楽しむって選択はこよみの頭の中にはないわけ?!相手を傷つけるとか、そんなの関係ないでしょ!?明はそれでも側にいてくれるって言ってるんだから。どうして自分から離れていこうとするの、私だってずっとこよみといるに決まってるじゃない!!」
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