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看護師の知識を使って、看護過程を展開していきます。
ナーシングプロセス その① 【情報収集】
しおりを挟む…さてさて。
この子、全体的に垢と埃と排泄物まみれな訳だが、生活魔法で自分の体をクリーンにする様子が全く見受けられない。
生活魔法が使えない。
または、使い方を知らない可能性がある。
どちらにしろ、生活魔法は普通、3才頃から日常の基本動作として、歯磨きや着替え、整髪などと一緒に教えられる訳だから、この年でできないなんて、あり得ない事だ。
それに、臭いからして1ヶ月以上は風呂に入っていないはず…。
「今、キレイにしてあげるからね」
自分の体に薄く感染予防の結界を展開し、いまだ泣き叫ぶ少女の背中に軽く触れる。
そして、生活魔法を少しずつかけて、ゆっくりと体から汚れを消し去った。
「…おぉ…」
「…さすが聖者様の娘…」
「…聖女様…」
周りで事の成り行きを、固唾を飲んで見守っていた人達が、有難や…とばかりに口々に言う。
普通一般的な人間は、自分自身にしか魔法が使えない。
他者に対して使えるのは、神法。
神法は神の力で、心が善意の塊でなければ使えない。
ゆえに人々は、神法が使える男性を"聖者"、女性を"聖女"と呼んでいる。
の、だが…。
ーーー…善行を少しでも多くやんなきゃならないだけであって、聖女じゃないから。むしろ、禁忌を侵した罪人なんだってば…。
聖女と呼ばれる度に、なんだか詐欺を働いている罪悪感が生じる…。
彼らに訂正と説明をしたいが、なんと説明したら良いのか分からず、結局はそのままにしていた。
だんだんと汚れが、粒子に分解されてサラサラ落ちていく。
涙と汗でふやけて、ドロドロに溶けた垢で黒かった顔や体は、白いふっくらとした肌になり、赤黒茶色だった頭皮付近の髪も汚れが落ち、全体的に柔らかで金糸の様なサラサラな髪となった。
ネグリジェにこびりついていた汚れも、排泄物もろとも落ちて、ピンクの可愛らしい花柄模様の清潔な寝衣となった。
汚れはキレイになったので、まずは情報収集を開始する。
パッと見て…。
うん、完璧にネグレクトだ。
しかも、身体的虐待付きだ。
まず、アタマジラミは頭と頭がくっつくか、枕や頭を拭いたタオルをちょっとでも共有したりすると感染する。
そしてヒゼンダニは、アレルギーっ子の天敵であるヒョウヒダニやチリダニと違って、長く肌と肌が触れあうか、疥癬患者が使ったベッドを使ったり、衣類を使ったりすると感染する。
つまり、どちらも近親者に感染者がいない場合は、故意的に感染させた疑いが浮上してくる訳だ。
ーーー…悪意しか、感じない…。
私は膝をついて、そっと少女の肩を抱き締めた。
「ふ…、ふぎぃ…?」
少女は、ガリガリと頭に爪を立てていた手を離すと、不思議そうに私に視線を合わせる。
焦点が合い、瞳が正気の光を取り戻した。
私は安心させる為に優しく笑いかけてから、少女の頬に自分の頬をくっつけた。
「もう、大丈夫だよ。大丈夫だから、安心して。ここは大丈夫な所だから、絶対に大丈夫」
大丈夫、大丈夫。と、繰り返し少女に教える。
「あ…。あぁう…、あぅ、…うおお…」
少女は私の服を握り締め、必死に口を動かして何かを訴い始めた。
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