14 / 34
看護師の知識を使って、看護過程を展開していきます。
ナーシングプロセス その① 【情報収集】
しおりを挟む…さてさて。
この子、全体的に垢と埃と排泄物まみれな訳だが、生活魔法で自分の体をクリーンにする様子が全く見受けられない。
生活魔法が使えない。
または、使い方を知らない可能性がある。
どちらにしろ、生活魔法は普通、3才頃から日常の基本動作として、歯磨きや着替え、整髪などと一緒に教えられる訳だから、この年でできないなんて、あり得ない事だ。
それに、臭いからして1ヶ月以上は風呂に入っていないはず…。
「今、キレイにしてあげるからね」
自分の体に薄く感染予防の結界を展開し、いまだ泣き叫ぶ少女の背中に軽く触れる。
そして、生活魔法を少しずつかけて、ゆっくりと体から汚れを消し去った。
「…おぉ…」
「…さすが聖者様の娘…」
「…聖女様…」
周りで事の成り行きを、固唾を飲んで見守っていた人達が、有難や…とばかりに口々に言う。
普通一般的な人間は、自分自身にしか魔法が使えない。
他者に対して使えるのは、神法。
神法は神の力で、心が善意の塊でなければ使えない。
ゆえに人々は、神法が使える男性を"聖者"、女性を"聖女"と呼んでいる。
の、だが…。
ーーー…善行を少しでも多くやんなきゃならないだけであって、聖女じゃないから。むしろ、禁忌を侵した罪人なんだってば…。
聖女と呼ばれる度に、なんだか詐欺を働いている罪悪感が生じる…。
彼らに訂正と説明をしたいが、なんと説明したら良いのか分からず、結局はそのままにしていた。
だんだんと汚れが、粒子に分解されてサラサラ落ちていく。
涙と汗でふやけて、ドロドロに溶けた垢で黒かった顔や体は、白いふっくらとした肌になり、赤黒茶色だった頭皮付近の髪も汚れが落ち、全体的に柔らかで金糸の様なサラサラな髪となった。
ネグリジェにこびりついていた汚れも、排泄物もろとも落ちて、ピンクの可愛らしい花柄模様の清潔な寝衣となった。
汚れはキレイになったので、まずは情報収集を開始する。
パッと見て…。
うん、完璧にネグレクトだ。
しかも、身体的虐待付きだ。
まず、アタマジラミは頭と頭がくっつくか、枕や頭を拭いたタオルをちょっとでも共有したりすると感染する。
そしてヒゼンダニは、アレルギーっ子の天敵であるヒョウヒダニやチリダニと違って、長く肌と肌が触れあうか、疥癬患者が使ったベッドを使ったり、衣類を使ったりすると感染する。
つまり、どちらも近親者に感染者がいない場合は、故意的に感染させた疑いが浮上してくる訳だ。
ーーー…悪意しか、感じない…。
私は膝をついて、そっと少女の肩を抱き締めた。
「ふ…、ふぎぃ…?」
少女は、ガリガリと頭に爪を立てていた手を離すと、不思議そうに私に視線を合わせる。
焦点が合い、瞳が正気の光を取り戻した。
私は安心させる為に優しく笑いかけてから、少女の頬に自分の頬をくっつけた。
「もう、大丈夫だよ。大丈夫だから、安心して。ここは大丈夫な所だから、絶対に大丈夫」
大丈夫、大丈夫。と、繰り返し少女に教える。
「あ…。あぁう…、あぅ、…うおお…」
少女は私の服を握り締め、必死に口を動かして何かを訴い始めた。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる