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オールド国
オバーを訪ねて ☆
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アンティーク影山には、骨董品の中に住んでいる四人の妖精たちがいる。
彼等は、家でもある各々の骨董品に愛着を持ち、近頃では、その物になりきっているようである。
そして、彼等も一般的な妖精と同様に、通常は小さな人に羽がついているという姿なのだが、オールド国の妖精である彼等は、“ツボの種”を食べると人型に変身できるのであった。
更に言えば、変身時のファッションをその時々で選べるから、実に便利なのだ。
通常の妖精の姿は、人間には見えないし、声も聞こえないが、人型モードになった時は、姿も見えるし会話もできる。
新米店主の影山 美紗子は、人型モードの妖精だと言われても、テレビのドッキリ企画だと思い込んでいた。
だがしかし、先程、ようやく妖精だと信じはじめたところなのだった。
……………………
(タヌ爺と時計君……あっ、名前を言っていたけど忘れちゃった!まあ、いいわね。
タヌ爺と時計君は、あの木を触ってから消えた……。もしかして、私も触れたら異次元空間に行ってしまうのかしら?なんてね。
不思議な世界……本当にあるんだな)
美紗子が窓際の席に座り、ボーッと外を眺めていると、骨董品コーナーへと行ったはずの人型ルシェが戻ってきた。
「あのね、言い忘れたことがあったわ。
新米さん、偵察スズメが自動ドアをコツンと突いたら、外に人が来たわよって合図なの。そしたら、外と店内に曲を流して、窓際の照明をつけて、新米さんが外に出て、お客さんを連れてくるのよ。
今日は既に曲は流れているし、照明もついているからいいけど、お客さんを待っているだけじゃダメですからね。
では、頼みましたわよ」
そう言ってルシェは、骨董品コーナーへと行ってしまったのだった。
(え?どっちが店主だと思ってんの?
……自動ドアに偵察スズメ? 何言ってんの?
そういえば、この前、雀が突進していたけど、もしかして、アレがそうだったの?
じゃあ、向こうに、レジの方に行かないとね)
………………………
ここは、オールド国にある“チャージの森”の入口である。
茶器が入った木箱を抱えた庄三郎とタムが飛んでやって来て、入口に立っているのだった。
二人は通常の妖精の姿となっており、オールド国の中では、木箱も小さな妖精姿に合わせて小さくなっているのだ。
「タム、そろそろ、一人でもオバーの所へ行けるようにならなきゃいかんぞ。
後からついて行くから、ワシを案内してみろ」
「はーい、庄三郎さん、この森の奥にある岩屋にオバーが住んでいるんだよね?
もう、覚えたから大丈夫!こっちだよ!」
そう言って、タムは飛び立つ。
「……そうか、目印は何だ?」
「ああ、折れたカツラの大木!かな?」
「それは岩屋にあるだろう!行く方向にある
目印のことだ!何か覚えているか?」
庄三郎から言われたタムは、首を傾げて考え、ハッとする。
「あー、わかった!松だ!松の木の横の道を通るって、ルシェちゃんが言ってたんだ!」
「ワシも教えておるわい!して、この道で合っていると思うのか?」
「あ!」
タムは、間違えた事に気がつき、正しい道に向けて飛んで行く。
ガタガタ、ガタガタ……。
木箱は、黒いモヤを出しながら暴れている。
しっかりと持ちながら、庄三郎がタムに問う。
「タム、わかっていると思うが、ツボの種をちゃんとに持ってきたか?
オバーは、結構 強欲だから“闇の深さ”で、ツボの種を要求してくるからな!」
「はい、お任せください!このペンダント袋の中に入っているよ」
「出せー!出せー!うぅぅぅ……」
相変わらず木箱の中で、邪悪精が騒いでいる。
「もうすぐ助けてやるから、大人しくしろよ!アンティーク影山は、お客さんがなかなか入らない店だから、ツボの種は貴重なんだぞ!
何たって店の売り上げないと、ツボの種が増えないんだから、困ったもんだぞ!」
「だから、ルシェちゃんが可愛いメイドになって、頑張っているんだって言ってたよ。
そうだ、あのね、庄三郎さんが狸の置物姿でウェイターをやれば、着ぐるみ名物店員になるから、お客さんが来るよってルシェちゃんが言ってたよ。僕、楽しみだな」
「はあ?何だって!誰がやるかっ!あの人形女め、言いたい事を言いやがって!」
(……待てよ、俺がウェイターをやれば、人気店になるかもな……その辺の人間の爺さんよりかは、男前だからな……ロマンスグレーのおじ様とかなんとか……ぐはは)
二人が、そんな話しをしながら奥に進んで行くと、これまでの緑豊かな森の雰囲気がガラリと変わり、裸の木々が並ぶ場所へ着いたのだった。
「ほら庄三郎さん、岩屋に着いた!
僕、もう道を覚えたよ。凄いでしょ?」
「入口で間違えていただろうが!まあ、これで覚えただろう。忘れるなよ!
さてと、オバーは、いるかな?
おや、いないのか?少し座って待つとしよう」
ここの岩屋というのは、ゴロゴロとした岩が沢山あって、その中の大きな岩の上に一枚岩がドンと乗っかっていて、まるで屋根の様だから、そう呼んでいるのだ。
まあ、実際にオバーの家だから間違いではない。
庄三郎は、岩屋の下にある苔むした石に ちょこんと座り、タムは一枚岩の上に乗り、辺りを見渡してオバーを探している。
「お前ら、あっしに何の用じゃ?」
「おう、オバー……おや、どこだ?いないぞ?」
「こら、庄三郎、お前の目の前にいるだろう?家の中を見ろ!ここじゃ」
「えっ?オバー、屋根の下にいるの?
えっ、どこどこ?」
タムが屋根から降りて、オバーを探していると、中にある石が動いた。
「おっ、庄三郎とヘナチョコじゃないか。
あっしに何用じゃ?」
彼等は、家でもある各々の骨董品に愛着を持ち、近頃では、その物になりきっているようである。
そして、彼等も一般的な妖精と同様に、通常は小さな人に羽がついているという姿なのだが、オールド国の妖精である彼等は、“ツボの種”を食べると人型に変身できるのであった。
更に言えば、変身時のファッションをその時々で選べるから、実に便利なのだ。
通常の妖精の姿は、人間には見えないし、声も聞こえないが、人型モードになった時は、姿も見えるし会話もできる。
新米店主の影山 美紗子は、人型モードの妖精だと言われても、テレビのドッキリ企画だと思い込んでいた。
だがしかし、先程、ようやく妖精だと信じはじめたところなのだった。
……………………
(タヌ爺と時計君……あっ、名前を言っていたけど忘れちゃった!まあ、いいわね。
タヌ爺と時計君は、あの木を触ってから消えた……。もしかして、私も触れたら異次元空間に行ってしまうのかしら?なんてね。
不思議な世界……本当にあるんだな)
美紗子が窓際の席に座り、ボーッと外を眺めていると、骨董品コーナーへと行ったはずの人型ルシェが戻ってきた。
「あのね、言い忘れたことがあったわ。
新米さん、偵察スズメが自動ドアをコツンと突いたら、外に人が来たわよって合図なの。そしたら、外と店内に曲を流して、窓際の照明をつけて、新米さんが外に出て、お客さんを連れてくるのよ。
今日は既に曲は流れているし、照明もついているからいいけど、お客さんを待っているだけじゃダメですからね。
では、頼みましたわよ」
そう言ってルシェは、骨董品コーナーへと行ってしまったのだった。
(え?どっちが店主だと思ってんの?
……自動ドアに偵察スズメ? 何言ってんの?
そういえば、この前、雀が突進していたけど、もしかして、アレがそうだったの?
じゃあ、向こうに、レジの方に行かないとね)
………………………
ここは、オールド国にある“チャージの森”の入口である。
茶器が入った木箱を抱えた庄三郎とタムが飛んでやって来て、入口に立っているのだった。
二人は通常の妖精の姿となっており、オールド国の中では、木箱も小さな妖精姿に合わせて小さくなっているのだ。
「タム、そろそろ、一人でもオバーの所へ行けるようにならなきゃいかんぞ。
後からついて行くから、ワシを案内してみろ」
「はーい、庄三郎さん、この森の奥にある岩屋にオバーが住んでいるんだよね?
もう、覚えたから大丈夫!こっちだよ!」
そう言って、タムは飛び立つ。
「……そうか、目印は何だ?」
「ああ、折れたカツラの大木!かな?」
「それは岩屋にあるだろう!行く方向にある
目印のことだ!何か覚えているか?」
庄三郎から言われたタムは、首を傾げて考え、ハッとする。
「あー、わかった!松だ!松の木の横の道を通るって、ルシェちゃんが言ってたんだ!」
「ワシも教えておるわい!して、この道で合っていると思うのか?」
「あ!」
タムは、間違えた事に気がつき、正しい道に向けて飛んで行く。
ガタガタ、ガタガタ……。
木箱は、黒いモヤを出しながら暴れている。
しっかりと持ちながら、庄三郎がタムに問う。
「タム、わかっていると思うが、ツボの種をちゃんとに持ってきたか?
オバーは、結構 強欲だから“闇の深さ”で、ツボの種を要求してくるからな!」
「はい、お任せください!このペンダント袋の中に入っているよ」
「出せー!出せー!うぅぅぅ……」
相変わらず木箱の中で、邪悪精が騒いでいる。
「もうすぐ助けてやるから、大人しくしろよ!アンティーク影山は、お客さんがなかなか入らない店だから、ツボの種は貴重なんだぞ!
何たって店の売り上げないと、ツボの種が増えないんだから、困ったもんだぞ!」
「だから、ルシェちゃんが可愛いメイドになって、頑張っているんだって言ってたよ。
そうだ、あのね、庄三郎さんが狸の置物姿でウェイターをやれば、着ぐるみ名物店員になるから、お客さんが来るよってルシェちゃんが言ってたよ。僕、楽しみだな」
「はあ?何だって!誰がやるかっ!あの人形女め、言いたい事を言いやがって!」
(……待てよ、俺がウェイターをやれば、人気店になるかもな……その辺の人間の爺さんよりかは、男前だからな……ロマンスグレーのおじ様とかなんとか……ぐはは)
二人が、そんな話しをしながら奥に進んで行くと、これまでの緑豊かな森の雰囲気がガラリと変わり、裸の木々が並ぶ場所へ着いたのだった。
「ほら庄三郎さん、岩屋に着いた!
僕、もう道を覚えたよ。凄いでしょ?」
「入口で間違えていただろうが!まあ、これで覚えただろう。忘れるなよ!
さてと、オバーは、いるかな?
おや、いないのか?少し座って待つとしよう」
ここの岩屋というのは、ゴロゴロとした岩が沢山あって、その中の大きな岩の上に一枚岩がドンと乗っかっていて、まるで屋根の様だから、そう呼んでいるのだ。
まあ、実際にオバーの家だから間違いではない。
庄三郎は、岩屋の下にある苔むした石に ちょこんと座り、タムは一枚岩の上に乗り、辺りを見渡してオバーを探している。
「お前ら、あっしに何の用じゃ?」
「おう、オバー……おや、どこだ?いないぞ?」
「こら、庄三郎、お前の目の前にいるだろう?家の中を見ろ!ここじゃ」
「えっ?オバー、屋根の下にいるの?
えっ、どこどこ?」
タムが屋根から降りて、オバーを探していると、中にある石が動いた。
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あっしに何用じゃ?」
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