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ルシェは乗車前、気になるカーソルの容態をカボスに聞いた。
「はい、カーソル様は……伝染の恐れがある病気に罹っておいでです。ですから……お越しくださいましたが、御面会が叶わない可能性もございます……」
「えっ、伝染病ですって!それで、容態は?治る見込みはあるのですか?」
ルシェは、顔面蒼白になって聞いた。
「あっ、あ、大丈夫です。伝染すると言うのは、大袈裟でした!か、風邪の様なもの、そうです、風邪ですから!心配はいりません。はい」
「ああ、そうですの……。驚きましたわ……。面会が出来ない可能性があるのですね。承知致しましたわ」
……………………
ウィーン、ウィーン……
プランツ城執事のカボスが運転手に命じると、フライングモーターが動き出した。
(ああ、ひとまず安心しましたわ)
後部座席にルシェを挟むようにして、トキエとノナカが座っている。
空中を走行している中、前方にいるカボスの目を盗み、トキエは、風になびくルシェの髪を整え、縛ろうと奮闘していた。
そのカボスは、ルシェたちに向けプランツ国内の案内をしているから、ちょくちょく後ろを向いてくる。
そこで対応するのはノナカだ。
「おお、下は一面の緑ですな。プランツ国は、畑が多いのですね。この辺りは、何を栽培されているのですか?」
「向こうは、綿花畑です。ご存知の通り、ここで栽培された綿をオールド国へと輸出させていただいております」
ノナカは、チラッと横目でルシェを見る、次はこっそりとメイク直しをしていた。
(まだ、話しを引き伸ばさなければ)
「おお、カボス殿、あれが綿花畑ですか。プランツ国製綿入り布団には、いつもお世話になっております。
寝心地抜群で、たまに寝過ごす事も……あ、いや、失礼。で、左側の畑は色んな物が入り混じっているように見えますが、何を栽培しているのですか?」
助手席に座るカボスとその後ろに座るノナカの二人は、ルシェ達をそっちのけで盛り上がる。
「ああ、あれは雑草です。その種を取って人間界へと撒くのです。
人間は、雑草を嫌がりますが、それなりの役割というものがありますから、プランツ国の者が、種を撒きに行くのです」
「えっ?わざわざ草の種を撒くのですか?」
「はい、土が剥き出しになった斜面に種を撒くのです。そして、草が生え、根を張るようになれば、少しは土の流れを留める事ができるし、草を食する者が来て、草むらを住処にする者もいるし、そして、それらを食する者も現れ、命を繋いでゆく。
我々は、小さな命の営みのお手伝いをしているわけです」
(それでも、その草を人間に刈られてしまうのも知っていますが、我国の民は、めげずに種を撒きます!)
「なるほど、プランツ国の方々は、命を育むための基礎を作っているのですね」
「え?いやぁ、ノナカ殿、そんな立派なことはしてませんよぉ。ハハハ」
カボスは、まんざらでもない様子で照れたのだった。
再び、ルシェの方をチラリと見たノナカは、トキエと目が合った。
(ルシェ様の身なりを整えました)
そう思いながらトキエは、ウィンクをした。つもりでいる。
(トキエさん、両目をつぶって、終了の合図を送ったのですね?了解です!)
メイク直しを終えたルシェは、辺りを見回して不思議そうな顔をした。
「ところでカボスさん、なかなかお城が見えてきませんわ。湖からそう離れていなかったような、そんな記憶があったのですが……」
「えっ?ルシェ様、ああ、あのですね。
実は我が王より、せっかくお越しになられたのだから、いろいろと見ていただこうと言われまして……。
その、カーソル様は只今、眠っておられまして……」
「あ……。それもそうですわね。眠っていて当然ですわ。安静にしないといけない時に伺ってしまい、申し訳ありません」
「いえいえ、お心遣いがとても嬉しいと、王も 大変お喜びになっておられます。ですので、この機会にプランツ国自慢のハッシュヌーボ滝などを是非、ご覧頂きたいとの仰せにございます」
カボスの必死さがビシビシと伝わってきて、ルシェ達は観光を承諾したのだった。
……………………
ここは、プランツ国城。
「カーソルは、まだ見つからないのか」
腕組みをした王が苛立ち、従者に聞いた。
「はい!人間界へと捜索隊を派遣しましたが、未だ、報告がありません!」
「王子だというのに、勝手に消えてしまって!カーソルは、どこに行ってしまったのだ!オールド国から招待の連絡が来た時には、この城にいると思っているから、承知したのだ!なのに!後から断りを入れることになって、しかも仮病で!まったく恥ずかしい事だ!」
ウロウロウロウロ……。
(いつから姿を消したのだ?一昨日の朝、カボスと挨拶を交わしたというが、どこへ行ってしまったのだ?この城の跡取りでないから、甘やかしてしまったのだろうか。
カーソルは、オールド国との架け橋になる大事な息子だ!早く帰って来い!)
王は、じっと座っていることも出来ず、椅子に座る王妃の前を行ったり、来たりしている。
「ボード様、少し落ち着きあそばせ!今までも、出掛ける事なんて、よくありましたわよ。心配はいりませんわ」
見かねた王妃エンドラが、王に声をかけた。
「いや、これまで出掛ける時には、必ず誰かに伝えて行っていただろう。
それが、今回は突然、消えてしまったのだ。これは、何かあったに違いない!
まさか、事件に遭ったのか?
さ、探せ!皆、城中を再び探すのだ!」
プランツ城の従者達は、ありとあらゆる場所を探しはじめたのだった。
「はい、カーソル様は……伝染の恐れがある病気に罹っておいでです。ですから……お越しくださいましたが、御面会が叶わない可能性もございます……」
「えっ、伝染病ですって!それで、容態は?治る見込みはあるのですか?」
ルシェは、顔面蒼白になって聞いた。
「あっ、あ、大丈夫です。伝染すると言うのは、大袈裟でした!か、風邪の様なもの、そうです、風邪ですから!心配はいりません。はい」
「ああ、そうですの……。驚きましたわ……。面会が出来ない可能性があるのですね。承知致しましたわ」
……………………
ウィーン、ウィーン……
プランツ城執事のカボスが運転手に命じると、フライングモーターが動き出した。
(ああ、ひとまず安心しましたわ)
後部座席にルシェを挟むようにして、トキエとノナカが座っている。
空中を走行している中、前方にいるカボスの目を盗み、トキエは、風になびくルシェの髪を整え、縛ろうと奮闘していた。
そのカボスは、ルシェたちに向けプランツ国内の案内をしているから、ちょくちょく後ろを向いてくる。
そこで対応するのはノナカだ。
「おお、下は一面の緑ですな。プランツ国は、畑が多いのですね。この辺りは、何を栽培されているのですか?」
「向こうは、綿花畑です。ご存知の通り、ここで栽培された綿をオールド国へと輸出させていただいております」
ノナカは、チラッと横目でルシェを見る、次はこっそりとメイク直しをしていた。
(まだ、話しを引き伸ばさなければ)
「おお、カボス殿、あれが綿花畑ですか。プランツ国製綿入り布団には、いつもお世話になっております。
寝心地抜群で、たまに寝過ごす事も……あ、いや、失礼。で、左側の畑は色んな物が入り混じっているように見えますが、何を栽培しているのですか?」
助手席に座るカボスとその後ろに座るノナカの二人は、ルシェ達をそっちのけで盛り上がる。
「ああ、あれは雑草です。その種を取って人間界へと撒くのです。
人間は、雑草を嫌がりますが、それなりの役割というものがありますから、プランツ国の者が、種を撒きに行くのです」
「えっ?わざわざ草の種を撒くのですか?」
「はい、土が剥き出しになった斜面に種を撒くのです。そして、草が生え、根を張るようになれば、少しは土の流れを留める事ができるし、草を食する者が来て、草むらを住処にする者もいるし、そして、それらを食する者も現れ、命を繋いでゆく。
我々は、小さな命の営みのお手伝いをしているわけです」
(それでも、その草を人間に刈られてしまうのも知っていますが、我国の民は、めげずに種を撒きます!)
「なるほど、プランツ国の方々は、命を育むための基礎を作っているのですね」
「え?いやぁ、ノナカ殿、そんな立派なことはしてませんよぉ。ハハハ」
カボスは、まんざらでもない様子で照れたのだった。
再び、ルシェの方をチラリと見たノナカは、トキエと目が合った。
(ルシェ様の身なりを整えました)
そう思いながらトキエは、ウィンクをした。つもりでいる。
(トキエさん、両目をつぶって、終了の合図を送ったのですね?了解です!)
メイク直しを終えたルシェは、辺りを見回して不思議そうな顔をした。
「ところでカボスさん、なかなかお城が見えてきませんわ。湖からそう離れていなかったような、そんな記憶があったのですが……」
「えっ?ルシェ様、ああ、あのですね。
実は我が王より、せっかくお越しになられたのだから、いろいろと見ていただこうと言われまして……。
その、カーソル様は只今、眠っておられまして……」
「あ……。それもそうですわね。眠っていて当然ですわ。安静にしないといけない時に伺ってしまい、申し訳ありません」
「いえいえ、お心遣いがとても嬉しいと、王も 大変お喜びになっておられます。ですので、この機会にプランツ国自慢のハッシュヌーボ滝などを是非、ご覧頂きたいとの仰せにございます」
カボスの必死さがビシビシと伝わってきて、ルシェ達は観光を承諾したのだった。
……………………
ここは、プランツ国城。
「カーソルは、まだ見つからないのか」
腕組みをした王が苛立ち、従者に聞いた。
「はい!人間界へと捜索隊を派遣しましたが、未だ、報告がありません!」
「王子だというのに、勝手に消えてしまって!カーソルは、どこに行ってしまったのだ!オールド国から招待の連絡が来た時には、この城にいると思っているから、承知したのだ!なのに!後から断りを入れることになって、しかも仮病で!まったく恥ずかしい事だ!」
ウロウロウロウロ……。
(いつから姿を消したのだ?一昨日の朝、カボスと挨拶を交わしたというが、どこへ行ってしまったのだ?この城の跡取りでないから、甘やかしてしまったのだろうか。
カーソルは、オールド国との架け橋になる大事な息子だ!早く帰って来い!)
王は、じっと座っていることも出来ず、椅子に座る王妃の前を行ったり、来たりしている。
「ボード様、少し落ち着きあそばせ!今までも、出掛ける事なんて、よくありましたわよ。心配はいりませんわ」
見かねた王妃エンドラが、王に声をかけた。
「いや、これまで出掛ける時には、必ず誰かに伝えて行っていただろう。
それが、今回は突然、消えてしまったのだ。これは、何かあったに違いない!
まさか、事件に遭ったのか?
さ、探せ!皆、城中を再び探すのだ!」
プランツ城の従者達は、ありとあらゆる場所を探しはじめたのだった。
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