冥界の仕事人

ひろろ

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第六章: 新人仕事人 修行の身

再会

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 オストリッチは、従業員 冥界エレベーターに乗り込み、一か八かで、グレースのいる家に向かっている。

エレベーターが止まった。

 お爺さんの住んでいた家でありますように!

 この扉の開け方は、えーと、えーと……

 ここに来た あの日を思い出す。

 確か、猫さんが思いっ切り体当たりして、内扉を開けたんだ……それから、扉を手で押したかな?


 勢いつけて、よしっ、行くぞ!えいっ!


 スポッ!

「へっ?」

  とっ、とっ、とっ、ズッデーン!

 扉を開けようとしたら、通り抜けたらしい。

 思いがけない事だったので、つまずくように転んでしまったのである。

「誰だっ!」

 
 家の中にいた人が走って来た!


 盛大に転んでいる鳥を見て、驚く。

「オストリッチ君!どうして?ここに?」

 えっ?この声は……

 オストリッチは、やっと立ち上がった。

「蓮さん!わっ、どうして、ここに?」

 
「どうしてって……私の住んでいる所だからね。
 君こそ、何故ここに来たんだ?何か用?」

 
「あっ、はい。ここに住んでいたお爺さんと冥界で、最近会っていて、亡くなっている人だと思うのですが、病気だと聞いてしまいまして……。

 冥界の人は、病気になるわけ無いから変だと思って、猫さんに聞こうと思って、来ました」


「へー、孝蔵さんと知り合いだったとは、驚いた!
 これは、内緒なんだけど、仕方がないな!

 ここの主人あるじの森田孝蔵さんは、生きている人だ。

 ちょっと事情があって、冥界でアルバイトをしているんだよ。

 冥界で、生きている人間なんて、言ったらダメだぞ!」


「えーーー!生きている人が働けるんですかっ?
 ご褒美は、旅行ですか?

 僕たちと行けるんですか?」


 オストリッチ君、変な質問だな……
 そこが気になるのか……


「うん、特別に働けるようにしているんだよ!
 
  旅行?一緒に行くのは、難しいだろうな。
 ご褒美……お給料は少ないけど、ちゃんとに出ているよ。

 昔は、亡くなった人の棺に三途の川の渡し賃と言って、お金が入れてあったんだ。それを給料としていたんだが、最近では、入れてない事が多いと聞くけど……」


「じゃあ、冥界には、人間界のお金が無いですよ。
 どうするのですか?」


「そこで、神様は考えた!
大きな葬儀なら、その香典の一部を自動に冥界に吸い上げても判るまい、と!

 それが、お給料になるんだ!

たまに中身が空の香典があるのがそうらしいね。

 受付の人は、入れ忘れだと思うだろう?」


「えっ!それ悪い事なんじゃないですかっ?」


「まあ、そうだけど、人間の技術や能力も必要だからね!

 結局は、今、生きている人の為になるわけだから、理解して下さい」

 
 オストリッチには、理解は難しいけれど、わかった事にしたのであった。


「蓮さん、ニャにしていますか?
 礼人さんが呼んでいます……」

 
 オストリッチと蓮が金庫の部屋で、話している所へグレースがやって来たのであった。


「ニャんと!ツルノ君がニャぜ、ここに?」


「うーん、亡くなっているお爺さんが病気だと聞いて、不思議に思い、猫さんに聞きに来たのですが、生きている人だと知って、えーと混乱しております」


「?、ツルノ君、ニャにを言っているのか、わかりません。せっかく、来てくれましたけど、私は出かけます。すみません。

 蓮さん、礼人さんと先に行きますね」


 そう言って、グレースは部屋から出たのである。


「礼人さん?もしかして、死神管理官の?」


「そうだよ。礼人さんと優も ここに住んでいるんだ。孝蔵さんの家に転がり込んだって感じかな。

 オストリッチ君、せっかく来てくれたけど、孝蔵さんはいないんだ。

  今、病院にいるけど、心配しなくても大丈夫だから、悪いが 私も出かけるんだ。

 帰りは、瞬間移動をしなさい」 
 

「はい、すみません。 僕、戻ります」


「オストリッチ君、運転免許を取得しに教習所に通っているってね。

  努力家の君なら、きっと合格できるからね!
 応援している、頑張れ!」


「はい!ありがとうございます。さようなら」


……………………
 
 ここは、孝蔵の入院している病室である。


「 ! 」


「礼人さん……あんたが病院に来るって事は、どっちだ?俺は死ぬのか?見舞いか?」


「……お見舞いです……」


「……お、見舞いなら、もう少し明るく分かりやすく病室に入ってきてくれよ!
ドキッとするじゃないか!まったく、もう!」


「す、すみません。今後は、気をつけます」

 その様子を礼人の背後で静かに見ていたグレースは、驚いていた。

 
 常に上から目線の礼人さんが、謝っているニャんて!孝蔵さん、恐るべしです!凄いニャ!


「ニャー、孝蔵さん、入院してしまって驚きました!具合はどうですか?

 いつ戻れますか?」


 礼人の足元から、ひょっこり顔を出したグレースを見つけ、孝蔵は表情を緩めたのである。

 グレースが一緒なら、あの世のお迎えでは無いな!

「おー、グレース、よく来たなー!」

 グレースは、見舞い客用の椅子にピョンと飛び乗った。


「グレース、ごめんな。嘔吐下痢で脱水症状になっちまったからなー!

点滴しているから、すぐに治るさ。

 ご飯は、キャットフードだな。すまん」


「私の事は、心配いりません。
 早くニャおして帰ってきて下さい」

 グレースは、尻尾をだらりと下げて話しているのであった。


「孝蔵さん、具合はどうですか?

 あっ、元気そうですね!良かった」

 そこへ、蓮も現れた。

「おう、蓮か。心配かけて、すまんな。
 もう大丈夫だから、みんな帰っていいぞ。

  礼人さんも蓮も、仕事だろう。

 来てくれて、ありがとう。
 グレースを連れて帰ってくれな」


 今、来たばかりニャのにニャ!
 私の姿は、人間に見えるからニャ、病院にいたらマズイものニャ、仕方ニャいかー!

「じゃあ、孝蔵さん 帰ります。
 お大事に」
 
 
 蓮に抱っこされたグレースが言った、その時、病室のドアが開いたのである。


「お父さん、突然、入院だなんて、驚いたわよ」


「わあ、弥生!急に来るなよ」

 孝蔵は、グレースがいないか確認するためキョロキョロしている。

 良かった、いない。

 が、礼人がいて、孝蔵を見つめていたのであった。


 黙って見つめられていても、気味が悪い。

 孝蔵は、礼人に帰っていいぞと手を振ったのである。


 慌てたような孝蔵の姿を見て、不審に思った弥生は、布団の中に隠した物があるのではないかと、孝蔵の掛け布団を剥がしたのである。

「お父さん、ヘソクリがここにあるの?」
…………………

 一方、冥界にいる あおいは、今日も白札用 罪状測定室にいるのであった。


「やっと休憩、この仕事は、力が必要なんですね」


「そうよ、結構、大変な所なのよねー!
 ねえ、ねえ、この前の話だけど!

 あのあと、いろんな人に情報収集したら、有力な情報をゲットしたわよ!」


「えっ?何の話でしたっけ?」


「あら、やだ、痩せる水の話よ!
 そんな水は、この冥界にはなくて、どうやら人間界にあるらしいの」


「えー、マジですか?誰の情報ですか?」

 あおいは、少しウキウキしながら聞いたのである。


「ここの受付にいる子が、天界にいた時に妖精に聞いたとかって、私は、妖精を見た事はないけど、何だか本当のような気がして……。

 ねえ、天界に行って、妖精を探して聞いてみない?」


 妖精って……あの2人以外にもいるのかな?

 
 あの2人の妖精だったら、知り合いだから教えてくれるかもしれない。


「はい、天界に行きます。いつ、行きますか?」


 こうして、あおい とアサオは天界に妖精を探しに行くことになったのであった。
 
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