『婚約破棄された聖女、魔王の妻として闇堕ちします ~もう「いい子」はやめました~』

ソコニ

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第14話:王国の混乱

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北部領主ヘルムート・フォン・クラインの館は、夜の闇に包まれていた。

彼が自室で書類を整理していると、突然、窓から冷たい風が吹き込んだ。蝋燭の炎が揺らめき、一瞬部屋が暗くなる。

再び明かりが灯ったとき、部屋の中央に黒い翼を持つ女性の姿があった。

「誰だ!」ヘルムートは驚いて立ち上がり、剣に手を伸ばした。しかし、彼の体は突然動かなくなった。

「そんなに驚かないで、ヘルムート卿」リリエルの冷たい声が響いた。「お話があって参りました」

「リ...リリエル聖女!?」彼は震える声で言った。「いや、今は...魔王妃?」

「そう」彼女は静かに頷いた。「かつての聖女、今は魔王の妻となった者です」

彼女の姿は以前の純白の聖女とは全く違っていた。黒と深紅の装束に身を包み、背中には漆黒の翼、左目の下には赤い刻印。そして何より、彼女の青い瞳には聖女の優しさではなく、冷たい強さが宿っていた。

「何の...ご用件で?」ヘルムートは恐る恐る尋ねた。彼は政治的に王太子アレンと距離を置いていた北部貴族の一人だった。

「あなたは王太子アレンに不満を持っているそうね」リリエルは窓辺に歩み寄りながら言った。「彼の弱さ、無能さに」

ヘルムートは口を開こうとして躊躇った。魔王妃との会話が危険なものになりかねないことは明らかだった。

「心配しないで」リリエルは彼の不安を読み取ったように言った。「あなたを害するつもりはないわ。むしろ...提案があるの」

「提案...?」

「ええ」リリエルは冷たく微笑んだ。「アレン太子が王位継承者として相応しくないことを、公に宣言しませんか?」

ヘルムートの瞳が見開かれた。

「それは...反逆罪になりかねない」

「本当に?」リリエルの青い瞳に冷たい光が宿った。「王国の民は既に真実を知り始めている。アレンが偽聖女に騙され、真の聖女を処刑しようとした事実を」

彼女の指先から紫の光が漏れ、部屋の中に奇妙な幻影が浮かび上がった。ルミエルが光の塊となって消えていく場面、絶望に打ちひしがれるアレンの姿。

「これが真実です」彼女は静かに言った。「アレンは神々の操り人形である偽聖女に騙され、王国を危機に陥れました」

ヘルムートは幻影に見入っていた。彼の表情が次第に変わっていく。恐怖から、理解へ、そして決意へと。

「あなたが望むのは...?」彼は慎重に尋ねた。

「北部貴族たちと共に立ち上がりなさい」リリエルは命じるように言った。「アレンの王位継承権を剥奪するよう、国王に進言するのです」

「そして、その後は?」ヘルムートの目に野心の色が浮かんだ。「我々は何を得る?」

リリエルは冷たく微笑んだ。

「北部領の自治権の拡大」彼女は言った。「そして...魔族との和平」

「魔族との...!?」

「そう」彼女は頷いた。「無駄な戦争を終わらせ、互いに干渉しない平和を」

これは本来、魔王との間で話し合った計画ではなかった。リリエルは自分の判断で、この提案を持ち出していた。しかし彼女は確信していた——この方が、より効果的にアレンを追い詰められると。

「考えてみましょう」ヘルムートはようやく言った。「他の北部貴族たちとも相談しなければ」

「もちろん」リリエルは頷いた。「でも、時間はあまりないわ。アレンが回復する前に決断してほしい」

彼女は窓に向かって歩き出した。

「三日後、返事を聞きに来ます」彼女は振り返らずに言った。「賢明な選択を期待しているわ」

彼女は黒い翼を広げ、夜の闇に消えていった。

---

北部領からの帰還後、魔王城の執務室でリリエルは魔王ヴァルゼスに報告していた。

「北部貴族のヘルムートに接触しました」彼女は静かに言った。「彼は期待通り、アレンへの不満を持っていました」

「計画通りか」魔王は満足げに頷いた。「彼は我々の提案に乗るだろうな?」

リリエルは少し躊躇った。

「私は...計画を少し変更しました」彼女は慎重に言った。「単なる内乱ではなく、我々との和平も提案しました」

魔王の金色の瞳が鋭くなった。

「和平?」彼の声には驚きが混ざっていた。「それは...」

「アレンを追い詰めるには、より効果的だと思ったのです」リリエルは説明した。「彼が最も恐れるのは、王国が内側から崩壊することです。貴族が魔族と手を組むという裏切りは、彼にとって最大の打撃になるでしょう」

魔王は暫く黙って彼女を見つめた。その目には怒りではなく、何か別の感情——驚きと、評価の色が浮かんでいた。

「お前は...俺の予想を超えていくな」彼はようやく言った。「確かにそれは効果的な戦略だ」

リリエルは安堵の息を漏らした。彼女は魔王の反応を恐れていたのだ。

「ただし」魔王が続けた。「実際に和平を結ぶかどうかは、また別の話だ」

「もちろん」リリエルは頷いた。「それは彼らの言動次第です」

魔王は椅子から立ち上がり、彼女に近づいた。

「お前は俺の妻だが、同時に策略家としても優れている」彼は彼女の頬に触れた。「かつての聖女がこれほど冷徹な戦略家になるとはな」

リリエルは彼の手に自分の手を重ねた。彼女の唇に微かな微笑みが浮かんだ。魔王にだけ見せる素直な表情だった。

「あなたの影響ね」彼女は小さく言った。

魔王は彼女を引き寄せ、強く抱きしめた。

「お前の中の闇が日に日に美しくなる」彼は彼女の髪に顔を埋めて言った。「だが、無理はするな。北部領への単独行動は危険だった」

「大丈夫よ」リリエルは彼の胸に頭を預けた。「私には聖剣があるし、レイヴンたちも近くで待機していました」

魔王は彼女をさらに強く抱きしめた。彼の腕には、彼女を決して手放したくないという思いが込められていた。

「アレンの様子は?」リリエルは尋ねた。

「シルフの報告では、まだ回復していないようだ」魔王が答えた。「精神的ショックから立ち直れず、高熱と悪夢に悩まされているとか」

リリエルの唇に冷たい笑みが浮かんだ。

「それは聞いて嬉しいわ」彼女は言った。「彼の苦しみがさらに長引くことを願うわ」

魔王は彼女の冷酷な言葉に満足げに頷いた。

「お前の復讐心が、お前をさらに強くしている」彼は言った。「この調子で続けよう、王国を内部から崩壊させる計画を」

---

王都セントグラールの宮殿では、枢機会議が開かれていた。

病床のアレンを除き、王とラインハルト首相、そして主要な大臣たちが集まっていた。深刻な表情の老王ヘンリーは、首相の報告を黙って聞いていた。

「陛下、北部から騒がしい報告が届いております」ラインハルトが言った。「北部貴族たちの間で会合が相次いでおり、王太子殿下への不満が公然と語られているようです」

老王の顔に苦悩の色が浮かんだ。

「何か特定の不満があるのか?」

「はい」ラインハルトは慎重に言葉を選んで答えた。「聖剣偽物事件と、聖女ルミエルの...消失について、彼らは王太子の判断力を疑問視しているようです」

老王は深いため息をついた。

「アレンの容態は?」彼は別の大臣に尋ねた。

「まだ回復の兆しがありません」宮廷医を務めるファイランド伯爵が答えた。「高熱と悪夢が続いています。精神的ショックが深すぎるようです」

老王は顔を両手で覆った。彼の肩が小さく震えていた。

「王国が...崩れ始めている」彼は小さく呟いた。

「陛下、さらに懸念すべき噂があります」情報担当のヴェイン子爵が言った。「北部貴族たちが...魔族との接触を持った可能性があります」

会議室に衝撃が走った。

「それは確かか?」老王が鋭く尋ねた。

「確証はありませんが、北部領の一部で魔族の姿が目撃されています」ヴェインは答えた。「そして...元聖女リリエルが、貴族の館を訪れたという噂も」

「リリエル...」老王は辛そうに名前を口にした。「彼女は本当に我々に復讐するつもりなのか」

「おそらく」ラインハルトが静かに言った。「彼女は冤罪で処刑されかけたのです。その怒りは理解できます」

老王は重々しく頷いた。

「我々は過ちを犯した」彼は認めた。「聖女リリエルを疑い、処刑しようとした。そして今、その代償を払っている」

「陛下、今すぐ対策を講じなければ」軍事担当のブライト将軍が言った。「北部貴族たちの反乱、そして魔族との同盟を防ぐために」

「だが、アレンが...」老王は言いかけて止まった。彼の瞳に悲しみの色が浮かんだ。「息子が立ち直れなければ、継承問題も解決しなければならない」

会議室が静まり返った。王位継承問題は、王国にとって最も重要かつ繊細な問題だった。

「陛下、北部貴族たちに使者を送り、彼らの要求を聞くのはいかがでしょうか?」ラインハルトが提案した。

老王は考え込み、やがて渋々と頷いた。

「それしかないか...」彼は諦めたように言った。「使者を送れ。だが、アレンの継承権については一切議論せぬように。それは王家の問題だ」

大臣たちは黙って頷いた。しかし、彼らの表情からは、王家の威信が揺らいでいることへの不安が見て取れた。

会議が終わり、老王が自室に戻ると、そこには風の精霊シルフが待っていた。

「おや?」老王は驚いて言った。「精霊か?なぜここに?」

「王よ」シルフは静かに一礼した。「私はリリエル様の使いです」

老王の表情が固まった。

「リリエルの...」

「彼女からのお言葉です」シルフは続けた。「『北部貴族たちの提案をお聞きになることをお勧めします。彼らが求めるのは、王国のよりよい未来だけです』」

老王は複雑な表情を浮かべた。

「彼女は私を恨んでいないのか?」彼は震える声で尋ねた。「私も彼女の処刑に同意したのに」

「彼女の心の全てを私は知りません」シルフは答えた。「ただ、彼女は変わりました。聖女の頃とは違う強さを持っています」

「彼女に...謝罪を伝えてくれ」老王は悲しげに言った。「我々は彼女に大きな過ちを犯した」

シルフは黙って頷いた。

「もう一つ伝言があります」精霊は言った。「『アレン太子の病は、彼の心の弱さから来ています。それを癒せるのは、真実を受け入れる勇気だけです』」

老王はため息をつき、窓辺に歩み寄った。

「リリエルは...何を望んでいるのだろう」彼は問いかけるように言った。

「それは彼女自身にしか分かりません」シルフは風と共に消えかけながら答えた。「ただ、彼女は復讐の途上にあります」

精霊が消えた後、老王は長い間、窓の外を見つめていた。彼の王国は内部から崩れ始めていた。そして、彼にはその流れを止める力がなかった。

---

北部領の城塞都市クラインフェストでは、北部の主要貴族十家が秘密会議を開いていた。

「魔王妃の提案は真剣に検討すべきだ」ヘルムートが言った。「アレン太子は明らかに王位継承者としての資質に欠ける」

「だが、魔族と手を組むとは...」別の貴族が不安げに言った。

「彼女はもはや魔族というだけの存在ではない」ヘルムートは反論した。「彼女は元聖女であり、今も聖剣を持つ。彼女が示した真実を、我々は無視できない」

十家の長老たちの間で、激しい議論が交わされた。多くは不安と警戒を示したが、徐々に賛同の声が増えていった。

「彼女が提案する和平は、北部にとって利益になる」クラインフェスト侯爵が言った。「常に魔族の脅威に晒されてきた我々にとって、安定は何よりも重要だ」

「それに...」別の貴族が付け加えた。「聖女リリエルは常に民を思い、真実を語ってきた。彼女は我々を欺かないだろう」

議論は夜遅くまで続いたが、最終的に決議がなされた。

北部十家は、アレン太子の王位継承権の剥奪を国王に進言すること。そして、魔族との限定的な和平交渉の開始を求めることを決定した。

それはリリエルの策略が結実した瞬間だった。

---

魔王城では、リリエルが魔鏡を通じて北部貴族たちの会議を見守っていた。

「成功したわ」彼女は冷たく微笑んだ。「彼らは我々の提案を受け入れた」

魔王は彼女の肩に手を置き、満足げに頷いた。

「お前の策略は見事だ」彼は称賛した。「王国は内側から分裂し始めている」

リリエルは魔鏡に映る老王の苦悩する表情を見つめていた。彼女の心には少しの憐れみも感じなかった。彼らは彼女を裏切り、処刑しようとした。今、その報いを受けているに過ぎない。

「次は西部貴族たちよ」彼女は冷たく言った。「王国を完全に分断するために」

魔王は彼女の冷酷な決意に満足げに微笑んだ。かつての聖女の面影はもはやなく、そこにあるのは復讐に燃える魔王妃の姿だけだった。

「お前の復讐は予想以上だ」彼は彼女を抱きしめた。「俺もこれほど楽しめるとは思わなかった」

リリエルは魔王の腕の中で安心感を覚えた。彼女の心に宿るのは、復讐への渇望と、魔王への信頼だけだった。

「まだ終わりじゃないわ」彼女は冷たく微笑んだ。「アレンの絶望をもっと深めたい」

彼女の青い瞳には冷酷な光が宿り、左目の下の刻印が赤く輝いた。彼女の中の闇は確実に深まっていた。しかし、それは彼女自身が選んだ道だった。もはや「いい子」として生きる必要はなかった。自分のために、復讐のために生きる彼女は、かつてないほどの解放感と力を感じていた。

王国は混乱の中にあった。そして、それはリリエルの復讐の始まりに過ぎなかった。
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