Sunrise Devil in the rain

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魔弾の射手3

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 リビングの隣は中島の部屋、もとい、ゲーミングルームだ。中に入れば最新機種のハイスペックPC二台が机の上に並んでいるのが見え、中島は部屋の奥の押し入れからもう一台出した。それは一世代前のモノだったが、ゲーム用に設計されていて、使い勝手が良いらしい。計三台のPCを横並びにして起動させる。座り心地の良い椅子が用意されて、中島がセッティングを説明した。ログイン後のルール説明を何となく聞いてから、俺達は一応の準備が整った。
 ―一丁前にマイク付きのヘッドフォンを装着し、中島の合図で敵陣に突入した。
「……おい、中島、負けそうだが」
 無茶が過ぎて、いまいちチームの統制が取れないでいた。劣勢だ。
「俺のことは隊長と呼べ、藤代二等兵。いいから黙って突撃だ、神風を吹かせてこい! あっ」
 裏を掻かれてマシンガンに乱れ打ちされる隊長の姿は見るに堪えない。かく言う俺も中途半端な活躍しか出来ず、頼みの綱の朝日はマップを見つめながらウロウロしたり、色々な銃を試し打ちするだけで、ゲームの操作にまだ慣れていない感じだ。
 あえなくゲームオーバーの文字が画面を埋め尽くす。
「そんな馬鹿な! もう一戦だ! 次こそは殲滅してやる!」
 隊長の負けず嫌いがたたって、結局飲まず食わずの十連戦。どの戦場でも今一つな我々、「チームなかじまーず」は一度も勝利を収めることが出来ず、他プレイヤーの足を引っ張り続けていた。現在十一戦目である。
「藤代二等兵、応答せよ、応答せよ!」
 死角から乱射されて戦闘不能になった俺のアバターは、無機質な廃ビルの三階、冷たそうなコンクリートの上で転がったまま動かなくなっていた。すまない皆。
「うああぁあぁ! やばいっ、追いかけてくる! 誰か助けてぇぇ!」
 泣き言を言って情けなく逃げ回る隊長の叫び声が、ヘッドフォンを通じて聞こえてくる。もうすることが無いからと俺がヘッドフォンを外す間際、素敵なセリフが耳に飛び込んできた。
「はい、隊長、私が助けに行きます」
 朝日の操る女兵士は武器をハンドガンに固定し、隊長のいる戦場に颯爽と現れた。砂埃が舞う中、廃墟が入り組んだステージを駆け回る。視界が悪く、互いの位置を把握しづらいから、闇雲に発砲されている。いつ被弾してもおかしくないような銃弾飛び交う危険地帯を走りながら、女兵士は敵兵のヘッドを鮮やかに打ち抜いていく。
「あ、あら? なんか助かった……」
 隊長を付け狙っていた手練れの敵兵はすでに彼のあずかり知らぬ所で骸と化していた。女兵士は息つく暇も無しに別エリアへと移動する。目的地はどうやら―、廃ビルか。
 俺の亡骸が横たわる三階の小部屋まで上ってきてから、女兵士はライフルに持ち替えた。この部屋の小さな窓から狙撃するつもりらしい。だが、敵兵のいるエリアからは離れすぎていて、ここからじゃ撃てない、どうするんだ。
 朝日のPC画面を凝視していると、彼女はヘッドフォンを一瞬外し、ちらりと俺を見た。
「優理の仇を取ってあげよう」
 そう言って再びヘッドフォンを耳に当て、ライフルを構える。もはや点にしか見えない敵兵に向けエイムを合わせ、引き金を引く。反動を気にせず、手際よく引いていく。当たっているのかどうか、目視はできない。しかし、画面上に表示される敵兵の生存者数は、十三……十二……十一……と、銃声に合わせ、少し遅れて減っていく。もし他に交戦中の場所があれば、マップにはそこが赤く点滅するようになっているのだが、見当たらない。
(当たってる……のか)
 FBIもお手上げの超遠距離狙撃。敵兵はどこから撃たれているのか分からない。焦って外へ逃げ出そうとした者達は皆、彼女のエイムに吸い込まれていく。一方的な殺戮だった。俺はこのスーパープレイに魅せられ、釘付けとなった。
 どこからか、交響楽団の美しい演奏が聞こえてくる。弦楽器が不穏な音色を奏で、合間に暖かく柔らかなフレーズを挟んでから、徐々に激しく響く。そして、要所で銃声が鳴るのだ。しばらくその幻聴に酔いしれていると、ぱっと画面が切り替わり、「You win」の青文字が表示された。同時に旋律は失われた。
「あら、あらららら? 勝っちゃった……」
 ただ逃げ惑って、見えない敵の影に怯えていた隊長は状況が飲み込めていない。中島はしきりに俺の肩を揺すって、何があったのか尋ねた。俺は放心状態だった。
「ふぅーっ」
 息が詰まる程の集中から解放されて、朝日はヘッドフォンを外した。
「ちょっと休憩、本読んでくるね」
 朝日は足早にリビングへ向かってしまった。もう少しあいつのプレイングを見たかった。
「誰が何したらこうなるんだよ、全然分からんぞ……」
 突然押し付けられた勝利に、中島は戸惑っている。俺も似たようなものだ。サバゲー初心者がわずか十戦のキャリアを経て歴戦の猛者に変貌し、戦場で猛威を振るう様を見せられて閉口している。
 上手く説明できる自信が無かったから、かなりアバウトな言い方をしてみた。
「神風が吹いたんです、隊長」
 PC画面には対戦履歴の詳細が表示されている。女兵士のライフルは、計七発の発砲が認められていた。

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