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本編
覚悟しろ
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【あらすじに注意書きがあるので、必読してください。注意書きを未読での苦情や批判は受け付けません。予めご了承ください】
身体中が痛い。
当たり前だ。さっきまで、リンチにあってたんだからな。
普通に呼吸をするだけでも激痛が走る。顎を伝う、血の感触が気持ち悪い。鉄の味がする。
…忌ま忌ましい。
舌打ちをして、俺は窓から空を眺めた。
憎らしいほどの晴天だ。
真っ白な雲がゆっくりと流れている。
何とはなしに眺めてたら、突然目が痛くなった。
一瞬、俺の視界は赤く染まった。鮮血が、目に入ったんだろう。
生理的な涙が滲む。
…痛いな、くそ。
俺がこんな目に遭ってんのは、全て転校生のせいだ。
この学園は金持ち学校で、いいとこのボンボンが大半と、外部生が一部通っている。
全員ではないが、家柄や容姿を重視する、下らない人間ばかりだ。
俺は面倒臭いことが大嫌いで、何事もなく無事に卒業したかった。
だから、存在感を消して、生活してたんだ。
少しも記憶に残らないくらい、まるで空気みたいに、一般生徒に紛れてたんだよ。
なのに、あのバカのせいで…。
新学期が始まって一週間後、進藤 愛(しんどう まな)が転校してきた。
途中入学は珍しい。というより、異例だ。
―進藤は、手入れのされていないモジャモジャの黒い鬘(かつら)、どこで入手してきたんだと聞きたい瓶底眼鏡をかけていた。
俺は人を外見で判断しない。が、それでも最低限というものはあると思う。
容姿重視の金持ち連中が黙っているわけもなく。
「汚い」「気持ち悪い」「有り得ない」「不快」と言い出した。
…まあ確かに、汚ならしい格好をしている。ボサボサの頭も、口元しか見えないのも、気持ち悪い。有り得ないし、不快ではあるな。
だけど、思ったことを口に出すなよ。そういうのは黙っとけ。これだから、お前らはバカなんだよ。相変わらず下らない連中だな。
そう思いながら、転校生の出方には興味があった。受け流すか、落ち込むか、単純に怒るのか…。
受け流したら、少しでも関わる場合、注意して接する必要がある。
落ち込んだら、普通で大丈夫だ。
怒ったら…要注意人物。
「見た目で判断するなよっ!!お前ら最低だ!!」
進藤はマジ切れした。
…お前の言う通り、人を見た目だけで判断して、内面を知ろうともしない奴は最低だ。
まあでも、見た目って大事だとは思うぜ?第一印象は重要だからな。
ついでに言うと、それを語るに足る変装をお前はしていない。
鏡見て、出直せ。
―激怒しただけなら、まだ良かったんだが…担任のホストに「お気に入り」宣言されたんだよ。
その瞬間、険悪だった空気が、悪化して殺気だった。
これで、決まった。
進藤は関わってはならない危険人物だ。話しただけでも、面倒臭いことになる。
予想は大正解だった。
現に俺はたった今、リンチされたんだからな。
こうなったのは、一人でいた俺に「お前、友達いないのか!?俺が友達になってやるよ!!」と進藤が話しかけてきたことがきっかけだ。
そう、きっかけ。
俺の平穏が崩れる、始まりだった。
その日から、進藤は学園の人気者を次々と落としていった。
さっきも言ったけど、ここの奴らは家柄や容姿を重視する。
顔の整った生徒には、親衛隊があるんだ。
それが厄介なんだよ。
親衛隊は、「対象者がよりよい学園生活を送る為の組織」…結局、それは名目に過ぎない。
対象者に近付こうものなら、容赦なく制裁が加えられる。これまた全員ではないが、そんな奴ばっかりだ。
で、進藤は親衛隊持ちの人気者を虜にしたわけだが…俺には関係ないって?普通そうだよな。残念ながら、ここは普通じゃねぇんだよ。
俺は何故か進藤に目をつけられたらしく、親友だとかふざけたこと言い出された。
しかも、嫌がる俺を無理矢理連れ回しやがんだよ。
最悪なことに、連れてこられた先には進藤に惚れた人気者がいるわけだ。
…ああ、面倒臭い。簡潔に言おう。
俺は嫉妬の捌け口にされてる。
進藤に制裁したくても、本人が好意を寄せてるから、出来ないんだよ。
鬱憤の溜まってる親衛隊に、人気者が俺の制裁を命じた。奴らは奴らで、俺が進藤に構われて気に食わないんだろう。
結果、進藤への苛立ちや憎悪は俺に向く。
日に日に嫌がらせはエスカレートしていって、遂にリンチだ。
…理不尽だろ。
俺は、ひっそりしてたかったんだよ。
誰にも認識されず、こっそりと卒業したかった。
その為に、ずっと影薄くしてたんだ。
わざわざ変装して、テストを手抜きで受けて、運動もそこそこにして…平々凡々な、どこにでもいる一般生徒になってたってのに。
全部ぶち壊しやがって…。
今まで、腸が煮え返っているのを理性で抑えつけていた。それも限界だ。
壊れちまったのなら、我慢する必要なんかねぇ。
遠慮はいらないよなぁ?
先に喧嘩売ってきたのは、てめぇらだ。
それ相応の罰を受けさせてやる。
…覚悟しろ。
この俺を怒らせたんだ、生半可には終わらせねぇからな。
満身創痍の身体で、瞳をぎらつかせた少年―雪見 奏(ゆきみ かなで)は、にやりと笑った。
身体中が痛い。
当たり前だ。さっきまで、リンチにあってたんだからな。
普通に呼吸をするだけでも激痛が走る。顎を伝う、血の感触が気持ち悪い。鉄の味がする。
…忌ま忌ましい。
舌打ちをして、俺は窓から空を眺めた。
憎らしいほどの晴天だ。
真っ白な雲がゆっくりと流れている。
何とはなしに眺めてたら、突然目が痛くなった。
一瞬、俺の視界は赤く染まった。鮮血が、目に入ったんだろう。
生理的な涙が滲む。
…痛いな、くそ。
俺がこんな目に遭ってんのは、全て転校生のせいだ。
この学園は金持ち学校で、いいとこのボンボンが大半と、外部生が一部通っている。
全員ではないが、家柄や容姿を重視する、下らない人間ばかりだ。
俺は面倒臭いことが大嫌いで、何事もなく無事に卒業したかった。
だから、存在感を消して、生活してたんだ。
少しも記憶に残らないくらい、まるで空気みたいに、一般生徒に紛れてたんだよ。
なのに、あのバカのせいで…。
新学期が始まって一週間後、進藤 愛(しんどう まな)が転校してきた。
途中入学は珍しい。というより、異例だ。
―進藤は、手入れのされていないモジャモジャの黒い鬘(かつら)、どこで入手してきたんだと聞きたい瓶底眼鏡をかけていた。
俺は人を外見で判断しない。が、それでも最低限というものはあると思う。
容姿重視の金持ち連中が黙っているわけもなく。
「汚い」「気持ち悪い」「有り得ない」「不快」と言い出した。
…まあ確かに、汚ならしい格好をしている。ボサボサの頭も、口元しか見えないのも、気持ち悪い。有り得ないし、不快ではあるな。
だけど、思ったことを口に出すなよ。そういうのは黙っとけ。これだから、お前らはバカなんだよ。相変わらず下らない連中だな。
そう思いながら、転校生の出方には興味があった。受け流すか、落ち込むか、単純に怒るのか…。
受け流したら、少しでも関わる場合、注意して接する必要がある。
落ち込んだら、普通で大丈夫だ。
怒ったら…要注意人物。
「見た目で判断するなよっ!!お前ら最低だ!!」
進藤はマジ切れした。
…お前の言う通り、人を見た目だけで判断して、内面を知ろうともしない奴は最低だ。
まあでも、見た目って大事だとは思うぜ?第一印象は重要だからな。
ついでに言うと、それを語るに足る変装をお前はしていない。
鏡見て、出直せ。
―激怒しただけなら、まだ良かったんだが…担任のホストに「お気に入り」宣言されたんだよ。
その瞬間、険悪だった空気が、悪化して殺気だった。
これで、決まった。
進藤は関わってはならない危険人物だ。話しただけでも、面倒臭いことになる。
予想は大正解だった。
現に俺はたった今、リンチされたんだからな。
こうなったのは、一人でいた俺に「お前、友達いないのか!?俺が友達になってやるよ!!」と進藤が話しかけてきたことがきっかけだ。
そう、きっかけ。
俺の平穏が崩れる、始まりだった。
その日から、進藤は学園の人気者を次々と落としていった。
さっきも言ったけど、ここの奴らは家柄や容姿を重視する。
顔の整った生徒には、親衛隊があるんだ。
それが厄介なんだよ。
親衛隊は、「対象者がよりよい学園生活を送る為の組織」…結局、それは名目に過ぎない。
対象者に近付こうものなら、容赦なく制裁が加えられる。これまた全員ではないが、そんな奴ばっかりだ。
で、進藤は親衛隊持ちの人気者を虜にしたわけだが…俺には関係ないって?普通そうだよな。残念ながら、ここは普通じゃねぇんだよ。
俺は何故か進藤に目をつけられたらしく、親友だとかふざけたこと言い出された。
しかも、嫌がる俺を無理矢理連れ回しやがんだよ。
最悪なことに、連れてこられた先には進藤に惚れた人気者がいるわけだ。
…ああ、面倒臭い。簡潔に言おう。
俺は嫉妬の捌け口にされてる。
進藤に制裁したくても、本人が好意を寄せてるから、出来ないんだよ。
鬱憤の溜まってる親衛隊に、人気者が俺の制裁を命じた。奴らは奴らで、俺が進藤に構われて気に食わないんだろう。
結果、進藤への苛立ちや憎悪は俺に向く。
日に日に嫌がらせはエスカレートしていって、遂にリンチだ。
…理不尽だろ。
俺は、ひっそりしてたかったんだよ。
誰にも認識されず、こっそりと卒業したかった。
その為に、ずっと影薄くしてたんだ。
わざわざ変装して、テストを手抜きで受けて、運動もそこそこにして…平々凡々な、どこにでもいる一般生徒になってたってのに。
全部ぶち壊しやがって…。
今まで、腸が煮え返っているのを理性で抑えつけていた。それも限界だ。
壊れちまったのなら、我慢する必要なんかねぇ。
遠慮はいらないよなぁ?
先に喧嘩売ってきたのは、てめぇらだ。
それ相応の罰を受けさせてやる。
…覚悟しろ。
この俺を怒らせたんだ、生半可には終わらせねぇからな。
満身創痍の身体で、瞳をぎらつかせた少年―雪見 奏(ゆきみ かなで)は、にやりと笑った。
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