勇者学園の最強先生〜引退した賢者の俺、落ちこぼれ生徒たちを無双させてしまう〜

神伊 咲児

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第七話 どうなるランク試験!?

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 どんぐり組のGランク認定試験が五日後に迫る。
 俺たちは実技訓練場に来ていた。
 ここは周囲が特殊な魔法壁で包まれているので、少々の激しい攻撃をしても壁を壊す心配がない。

「今日は実技教育だ。まず、ロロア。この三つの俵を空中に投げるから、それが地面に着く前に攻撃を当てろ」
「そんなの簡単だよ!」
「じゃあいくぞ!」
「うん!」

 俺は三つの俵を空中に放り投げる。
 ロロアは飛び上がり、バババッとその俵に攻撃を当てた。

「できたよ!」

 彼女の運動神経は抜群だ。
 これなら実技は問題ないだろう。

「よし」

 と、俺は訓練場に机と椅子を用意する。
 生徒たちはその光景を不思議そうに見守った。

「ロロア。おまえは学力の勉強だ」
「えーー!? 僕、実技の方が好きなんだよぉ。それにデイン先生みたいに強くなりたいしさぁ」
「だったらこの学園に存続する方向で考えないとダメだな。ランク試験でランクが取得できなければ落第が確定する。小等部の落第は不名誉だぞ。周囲に笑われたんじゃ勉強どころじゃないだろう?」
「それは……そうだけど……。僕、学力は苦手なんだよねぇ」
「だからやるんだよ。ランク試験は学力、実技ともに50点以上が求められる。おまえはこの前の学力テストで50点を下回っていたからな。試験までは苦手なことを克服するんだ」
「う、うん……。でも、試験まであんまり時間がないよ? 僕にできるかなぁ?」
「大丈夫、しっかり教えてやるから。俺を信じろ」
「じゃあ……。僕、やってみるよ!」

 ロロアは教科書を開いて勉強を始める。

「じゃあ、他の者は実技教育に入る」

 生徒たちはそれぞれが適正職業を持っているのでそこを伸ばす。
 マイカは剣士。レナンシェアは魔法使い。ミィは僧侶だ。
 
 マイカには剣技を教える。
 彼女は基本は甘いが太刀筋はいい。
 
「デインって賢者でしょ? どうして剣技ができるのよ?」
「昔ちょっとやってたんだ。ギルドに登録する職業が賢者ってだけだよ」
「でも、拳技もできるんでしょ?」
「それもちょっとな。冒険者は色々できる方が有利なんだよ」
「ふーーん……。魔法も格闘も剣術もできるって、完璧すぎじゃない?」
「大したことないよ。そんなことより素振りを続けろよ。基本の姿勢が崩れてるぞ」
「わ、わかってるわよ!」

 よし。次はレナンシェアだな。
 彼女は魔力量が膨大すぎるんだ。それゆえにコントロールができない。
 だから、正座させて瞑想させることにした。

「先生……。こんなことで授業になるのかな?」
「俺を信じろ。おまえは魔力コントロールが必要なんだよ」
「でも、私だけなにもやってない……」
「瞑想は精神の訓練だよ。自分の魔力を針の穴に通すイメージを続けるんだ」
「うん……やってみる」

 よし。最後はミィだな。
 彼女には以前にもやってもらった 照明球体ライトボールを作り出す練習をしてもらう。

プス……!

 と、いう放屁にも似た湯気が出る。

「てんてぇえええ! おならじゃないからねぇええええ!!」
「わーーってるよ。笑わないから続けろ」
「う、うん……」
「指先に精神を集中させて弾けさせる感じだ」

 彼女は俺に言われた通りに実施する。
 そして、ついに──!


ぷぅ……!


 ああ、また湯気が……。

「て、てんてぇ……。お、おな……おならじゃ……ないからね」
「わかってる。わかってるよ。大丈夫だ」

 俺が彼女をなぐさめているとマイカが「プフッ」と笑った。

「あーー! マイカたん笑ったぁあああ!!」
「おい、マイカ! 剣技に集中しろ!」

 こんな具合で実技の授業は続いた。


  *  *  *


 五日後。
 ついにGランク認定試験の日がやって来た。
 エゲツナール教頭はどんぐり組の生徒に挨拶をする。

「当学園は由緒正しき勇者パーティーを育成する学校ざんす。集まっているのは素質のある生徒ばかり。最低等級の学徒ランクG級でさえ取得するのは難しいざんす。今回、ランクが取得できなければ、その生徒には落第していただくざんす。よござんすねぇ?」

 生徒たちは緊張しているように感じる。
 教頭は、そんな光景を満足気にニヤニヤと笑う。

「デイン先生。わかってると思うざんすが、念のために確認しておくざんす。一人でも試験に落っこちた場合。あーたには責任をとって教師をやめていただくざんす!」

 問題ない。これは事前に聞いていた条件だからな。

「ちょっとデイン! そんな条件知らなかったわよ!?」
「デイン先生。私も知らなかった」
「僕、先生がやめるなんて嫌だよ!」
「てんてぇえええ! ミィもヤダァアアア!!」

 彼女らには秘密にしていた。
 あんまりプレッシャーをかけるのは悪いからな。
 
 俺は多くのパーティーに参加して、様々な冒険者を見てきた。
 怠惰な奴。嘘つき。高慢チキ。一見、外見はまともでも内面はとんでもなく邪悪な奴。
 そんな色んな人種を見てきたからわかるんだよ。
 この子達は純粋でいい子だ。 


「大丈夫。俺はおまらの力を信じてるからさ」

 
 四人の女児らはじんわりと汗を垂らした。
 みんなの緊張が伝わってくるようだ。

 試験は二部制だ。
 一部は学力試験。二部は実技。
 その試験担当は爆乳エルフのモーゼリアが務める。
 俺と教頭は試験の補佐役となっていた。
 
「ククク。あーしは学徒の学力はだいたい把握しているざんす。獣人族は頭が弱い種族ざんすからして……。ククク。ロロアさんの結果がどうなるか楽しみざんすねぇ~~」

 やれやれ。性格の悪いおっさんだな。よくこんな感じで教頭が務まるもんだ。

 モーゼリアは試験用紙を配り、砂時計を用意する。

「時間は一時間です。できた者から答案用紙を提出してください。それでは、学力試験。開始します!」

 と、砂時計をひっくり返す。

 開始四十分。
 レナンシェアが答案を教卓の上に乗せた。
 しばらくしてミィ、マイカと続く。
 思ったとおり、ロロアが苦戦しているな。
 最後まで諦めるんじゃないぞ。必ず努力の結果は出るからな。



  *  *  *



──ロロア side──

 学力試験の試験用紙には難しい問題が並ぶ。
 僕は犬人族でも勉強ができる方だと思う。
 けど、勇者学園の平均学力には遠く及ばない。
 思い返せば、入学して笑われてばかりだったな。
 
『おいおい。バカな犬人族が学園に入って来たぜ』
『クスクス。犬人が勇者パーティーに入れるわけないじゃない』
『ぷぷぷ。おちこぼれのどんぐり組か。お似合いだな』
『ふふふ。恥ずかしくないのかしら』

 僕は強くなりたい。
 デイン先生みたいに……。
 
 強くなって笑っていたやつらを見返してやるんだ。
 そのためには学徒ランクG級は絶対に必要になる。
 先生にいわれたとおり、勉強は一生懸命がんばった。
 問題は難しいけど、最後まで諦めないぞ。
 絶対に諦めない。


  *  *  *


 砂時計の砂がもう無くなるという時。

「できたーー!」

 と、ロロアの明るい声が響いた。
 モーゼリアは四人の答案を採点する。
 五分もすれば結果発表だ。

「それでは、どんぐり組の学力試験の結果を発表します……」

 彼女の言葉にみんなは耳を傾ける。
 マイカはゴクリとつばを飲み、ミィとレナンシェアはロロアを見やった。
 俺だって緊張しているさ。
 さぁ、結果はどうだ?



「全員合格です!」
 


 彼女の言葉に胸をほっとなでおろす。
 ミィは飛び上がって大喜び。
 マイカとレナンシェアはロロアの手を握って称賛する。
 そんな中、険しい顔を見せたのはエゲツナールである。

「待つざんす! ロロアの点数はどうなってるんざんすか!?」

 うん。実は俺も気になっていた。
 モーゼリアはニコリと笑ってロロアの答案用紙を俺たちに見せた。

「50点以上が合格ですからね。心配いりませんよ」

 答案用紙を見た教頭はプルプルと震える。

「そ、そんな……」

 俺も点数を見る。

「ふぅ……」

 と、思わずため息が出る。
 ロロアの答案用紙には『52点』と書かれていたのだ。
 ギリギリ合格。
 なんとかなったな。

 答案用紙の端にはたくさんの答えが書かれていた。
 きっと、時間いっぱいまで悩んでいたんだろうな。

 ロロアは俺を見るなり軽くウインクをする。
 それは『僕、最後まで諦めなかったよ』とでも言っているように見えた。
 うん! よくがんばった!!
 俺はそんな彼女に親指を立てて健闘を讃えた。
 これは彼女の努力の結果だ。まごうことなき花丸だよ。

「つ、次ざんす! 実技試験で結果が決まるざんすぅううう!!」

 それにしても悔しそうだな。
 この結果は喜ばしいことだろうに。
 よっぽど俺を辞めさせたいらしい。

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