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第十話 おやつは300コズンまで
しおりを挟む試験翌日。
どんぐり組の生徒たちは胸を張って廊下を歩いた。胸につけているのはG級バッジだ。
他のクラスのやつらがG級バッジを見て汗を流す。
「おい、マジかよ……」
「あのどんぐり組が……」
「信じられないわね」
「これは夢か? うーーむ」
ミィは、用事もないのにUターンしてわざわざそいつらの目の前を通ったりしていた。よっぽど嬉しいらしい。俺とモーゼリアはそんな光景を微笑ましく見るのだった。
* * *
どんぐり組の授業が始まる。
「みんな。改めて、学徒ランクG級認定おめでとう! これはみんなが努力した結果だ!」
俺の言葉に生徒たちは目を輝かせる。本当に素直に子供たちだ。
「僕さ。ちょっと勉強が好きになってきたよ! 早く次のランクに上がりたいな!」
「まぁ、そう焦るなって。次のランク試験までは期間があるからさ。おまえたちをもっと強く、賢くしてやるよ」
「うわぁ。楽しみだなぁ! 次はどんなことをするの?」
ふふふ。笑わずにはいられない。
「次は野外授業だ!」
みんなは、なにそれ?、という顔をする。
「学校の外で授業をするのさ。弁当とおやつを持ってな!」
身を乗り出したのはミィである。
どうやら、おやつに反応したらしい。
「てんてぇ、おやつを買ってきてもいいの!?」
「ああ、300コズンまでおやつの持ち込みを可とする」
ミィはシュパっと手を上げた。
「野いちごはおやつに入りますか!?」
良い質問だ!
「入らない!」
「じゃあバナ──」
「バナナもりんごもコケモモも入らない! フルーツは300コズンの範囲外だ」
「ふぉおお……」
生徒たちは騒つく。
厳しい規律のある学校におやつを持って来ても良いという無法行為。女児たちにとっては一大イベントのようだ。
「野外授業は明日の朝から馬車で向かう。おやつは今日中に買っておくように!」
「「「「はい!」」」」
今までで一番元気のいい返事が返ってきた。
* * *
翌日の朝。
教室に集まったみんなはルンルン気分だった。
ミィは、おやつの入った巾着袋を愛おしそうに見つめている。
そんな時、マイカが目を瞬かした。
「ねぇ。おやつの300コズンってどうやって判定するの?」
……いや、別にそこは気にしてなかったな。
300コズンなんてのはただの体裁だよ。
厳密にいえば、お菓子をバカみたいに大量に持って来させないための口実にすぎん。
「生徒の自主性を重んじていたのだが?」
「それじゃあオーバーしてるかもしれないじゃない」
……ちょっとくらい良いよ。
などと思っていると、マイカは軽くウインクをした。
「あたしが調べてあげるわ」
「お、おう……」
「はーーい。じゃあ、みんなーー。おやつが300コズン以内に収まっているかチェックするわよーー」
みんなはマイカの言葉に従順である。
持ってきたお菓子を巾着袋から取り出して机の上に並べさせた。
もちろん、自分の分もみんなに見せて公平にジャッジさせる。
彼女の分はレナンシェアが計算していた。
マイカはみんなのおかしをチェックする。すると、
「ロロア! このゼリーは一個余分よ。20コズンオーバーね」
厳しいな。でも、ロロアはちょっと嬉しそうだ。
「あちゃぁ……。僕、しっかり300コズンに納めてたと思ってたよ~~」
「ふふふ。計算間違いね。悪気はなかったんだしデインだって許してくれるわよ」
この状況にみんなは和やかに笑うだけ。
マイカは没収したゼリーを俺の元に届ける。
「はい。これは300コズンオーバーだったわ。他のみんなは300コズン以内よ」
こいつ……。案外真面目だったんだな。
三人の教師を病院送りにしてるから、もっと破天荒な性格だと思っていたよ。
俺が関心していると、
「な、なによ……? ロロアのことは許してあげて。彼女は悪気がなかったのよ?」
「マイカ……。おまえってば、ちゃんとしてるんだな」
「は? と、当然でしょ! このクラスじゃ年長なんだから!」
マイカはかなり頼りになるな。他の子も彼女を慕ってるみたいだ。
俺はゼリーを一個受け取って笑う。
「あんがと。助かるよ」
彼女は全身を真っ赤にして「ふん」とそっぽを向いてしまった。
素直ではないが純粋である。
それにしても、俺が言った言葉を真面目に聞いてしっかり300コズンを守るなんて……。
こいつら思いっきりピュアで真面目なやつらなんだな。なんか毒されてない感じが眩しいよ。
* * *
俺たちどんぐり組は、馬車に乗ってモーゼリアの故郷を目指す。
馬車の荷台には屋根はないが、今日は快晴なので抜群の野外授業日和である。
モーゼリアが御者をやり、俺は生徒たちと一緒に荷台に乗る。
生徒たちはお菓子を食べながら風景を見たり、モーゼリアの声に合わせてみんなで歌を歌ったりした。
ミィは嬉しさのあまり俺に抱きつく。
「みぃたんね。毎日、野外授業でもいいよ」
すると、ロロアが笑う。
「ミィ君はお菓子が食べれるならどんな授業でもいいんだろ?」
「ち、違うもん! お歌とか歌って楽しいもん!」
「ミィ君の食いしん坊」
図星をつかれたミィは真っ赤になる。それを見てみんなは大笑いするのだった。
そうこうしているうちに馬車はエルフたちが暮らすウシット村に到着した。
村の住民は、大半が美しい女ばかりである。
エルフは歳を取らない。
その上、美しい見た目と、巨乳が多かったりする。
マイカとレナンシェアは、そんな大きな胸のエルフを羨望の眼差しで見つめるのだった。
「ミィはエルフたんの村に来るのは初めてなの」
ロロアは拳で空を切りながら軽いフットワークを見せる。
「僕はさ。シュシュシュ! 強くなれるんならどこだっていいけどね!」
「私は、先生の授業ならなんでもいい」
「ねぇ、デイン。こんな所で野外授業なんて何をするのよ?」
ふふふ。
「人助け……。いや、エルフ助けさ」
「「「「は?」」」」
まぁ、詳細は俺もわからないからな。
俺たちはエルフの長に会うことにした。
それは美しいエルフの女村長だった。
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