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第十一話 どんぐり組の野外授業
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エルフが住む村、ウシット村の村長はモーゼリアから俺たちのことを聞いていた。
「デインさん……。あなたが魔王を封印した、勇者アッシュのパーティーにいたのですか?」
「まぁ、昔の話ですよ」
「あなたなら、この村の危機を救ってくれるかもしれませんね」
この村は勇者学園から援助を受けているらしい。
村長に聞いたところ、それは主に食糧不足が原因だった。
「しかし、よくわからないな。ここは自然が豊かで土地が肥えてる。こんな好立地で作物が育たないなんてさ」
「それは……。魔神が出て作物を食べてしまうからなのです」
「魔神?」
「魔神イレイザール……。近年、魔王が封印された影響で復活した魔神です」
聞いことのない魔神だな。
しかし、
「そんなことならギルドに討伐の依頼を出せばいいじゃないか」
「何度か頼みましたが失敗に終わりました。依頼した冒険者は歳老いて帰ってきたのです」
「どういうことだ?」
「イレイザールは精気を吸う魔神。生物の若さを餌としています。冒険者は魔神に精気を吸われて歳をとってしまったのです」
ふぅむ……厄介だな。
生徒たちは汗を垂らす。
「みぃたんも精気を吸われたらおばあちゃんになっちゃうのかな?」
「そうよ。ヨボヨボのおばあさんになっちゃうのよ」
「うう……。マイカたん怖がらせないでよ~~」
びびってるところ悪いが、この魔神の封印が野外授業なんだよな。
もちろん、俺がサポートすることは必須なんだが、生徒たちには自主的にやってもらわなければならない。
割に合わない授業は可哀想だから、彼女らには報酬としてお菓子をたんまり持ってきたんだ。
これを見せて彼女らのやる気を引き出せばいいだろう。
子供の授業とはいえ、怖いモンスターと強引に戦わすのは違う気がするしな。
と、俺がお菓子を取り出そうとした、その時である。
マイカは凛々しく立ち上がり、ぎゅっと拳を握った。
「あたしたちが魔神をやっつければいいのよ!」
彼女に触発されてロロアもレナンシェアも立ち上がる。
「うん! 僕もそう思う! エルフが困ってるんだから。僕たちが助けなくちゃ!」
「私も。助けてあげたい」
すると、ミィは胸についているバッジを見つめて立ち上がる。
「ミィたんもね! 困ってるエルフたんを助けたいの! だって、学徒ランクG級になったんだもん!」
こいつら……。
子供だとばかり思ってたけど、勇者学園の生徒としてプライドがあったんだな。
お菓子のことは内緒にして授業が終わってからプレゼントしてやろう。
村長は『こんな子供たちに任せて大丈夫?』とでも言いたげな表情を浮かべていた。
「安心してください。俺の生徒ですから」
……まぁ、最近になってやっとG級になった程度だけどね。
* * *
俺たちはエルフの作った畑に来ていた。
モーゼリアはよく実ったトウモロコシを見て悲しげな表情を浮かべる。
「これはエルフが食べる作物ではありません」
「豊作だと思うが?」
「畑にあるすべての農作物は魔神イレイザールの餌になってしまうです」
うーーむ。
「魔神はエルフたちを襲いません。よく実った農作物を提供さえしていれば攻撃してこないのです」
「なるほど……。魔神にとってエルフは農作物を提供してくれる貴重な存在ってことか」
彼女はコクンと頷く。
「その影響で、ウシット村は食料難に陥っています。学園から食料の援助があってなんとか持ち堪えていたんです」
「じゃあ、エゲツナール教頭の怒りを買って食料の援助が止められてしまったから早くなんとかしないとだな」
「はい。このままではエルフたちが飢えて死んでしまいます。それに畑の農作物が切れれば、次に襲われるのはエルフたちの精気なのです」
生徒たちには武器と防具を用意した。
これらは学園から支給される物だ。
剣士のマイカには剣を。拳士のロロアには鉄のついたグローブ。
魔法使いのレナンシェアと僧侶のミィにはそれぞれ杖を与える。
決して強力な装備とはいえないけれど、精気を吸ってくる敵を直で触れるのは危険だからな。
ないよりマシだろう。
「デインさん。トラブルに巻き込んでしまって申し訳ありません」
「まぁ、気にすんなって」
困っているエルフたちには悪いが、魔神退治なんてちょっとワクワクしているんだ。
敵は強いほど燃えるってもんだよ。
「私も戦います! 一緒に魔神を討伐しましょう!」
「それじゃあ授業の意味がないよ」
「え!?」
「これは野外授業の一環なんだからな」
モーゼリアが反論しようとしてきた、その時。
ドシーーーーン!
巨大な地響きとともに現れたのは真っ黒い壁だった。
十メートルはあるだろうか。やはり見たこともない魔神だ。
その真っ黒い壁はそのままトウモロコシ畑に向かってズシーーンと倒れた。
すると、周囲のトウモロコシは干からびて枯れていく。
なるほど、ああやって精気を吸っているわけか。
壁だと思っていた体はクッションのようになっている。
これはまるで……黒板消しだな。
魔神は宙に飛び上がり、再びトウモロコシ畑に着地。
下敷きにしたトウモロコシの精気をジュルジュルと吸う。
『ケケケケケケ……。美味い美味い』
おぞましい笑い声が畑に響く。
魔神は俺たちの存在には気が付いていないようだ。
夢中で精気を吸っている。
それにしても不気味だよ。十メートルもあろう黒板消しがピョンピョン跳ねて野菜の精気を吸ってるんだからな。
そんな光景に生徒たちは汗を垂らした。
さぁ、野外授業の始まりだぞ。
「敵は一体だ。おまえらは四人。大きさでは負けているが数では勝ってる。四人でパーティーを組んだとして、誰がリーダーになる?」
四人は顔を見合わせた。
「あたしよ。年長だもん」
「よく言った。みんな異論はないか?」
三人は力強く頷く。
「よし。じゃあ、マイカをリーダーにして今から魔神イレイザールの討伐だ。マイカ。魔神の特徴をみんなに伝えてくれ」
「と、特徴?」
「パーティーで戦う場合、個々でバラバラに戦ったんじゃあ意味がない。作戦を立ててから効率よく戦うことが重要なんだ」
「な、なるほど……」
「作戦を立てるには相手を観察することからだ。マイカの見立ててではどんな敵だと想定する?」
「あたしの見立てね……。うーーん……」
と、彼女は魔神の行動を観察する。
イレイザールは次々とトウモロコシを下敷きにして精気を吸っていた。
「あの黒板消しみたいなクッションの部分は柔らかそう……。あの部分で野菜の精気を吸ってるわね」
「うん。よく観れている。じゃあ、作戦はどうなる?」
マイカは腕を組んだ。
「……前衛と後衛に分かれた方がいいと思う」
「なーーにそれ? ミィたんはやる気だよ。ムフゥ!」
と、鼻息を荒くする。
「チームで戦うのよ。前衛はあたしとロロア。後衛はレナンシェアとミィよ」
ミィは目を見開いて瞬きを繰り返した。
そんな彼女とは対象的にマイカのイメージは強く固まっているようだ。
「あたしとロロアで魔神の柔らかそうな部分を攻撃する。その間にレナンシェアは魔力を溜めて魔法攻撃の準備よ」
「え? ミィたんは?」
「あなたは僧侶だもん。前衛が怪我を負ったらそれを 回復で直して欲しいの。できる?」
「うん! 任せといて!」
よし、いい作戦だ。
ちょっとフォローしてやろう。
「レナンシェアの魔力は強力だ。彼女の魔法攻撃を要にしてもいいと思う。だから、前衛はそこまで無理しなくていい」
「うん。わかったわ!」
マイカは声を張り上げた。
「みんな行くわよ! どんぐり組の魔神討伐開始よ!」
「「「おーー!」」」
「デインさん……。あなたが魔王を封印した、勇者アッシュのパーティーにいたのですか?」
「まぁ、昔の話ですよ」
「あなたなら、この村の危機を救ってくれるかもしれませんね」
この村は勇者学園から援助を受けているらしい。
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「しかし、よくわからないな。ここは自然が豊かで土地が肥えてる。こんな好立地で作物が育たないなんてさ」
「それは……。魔神が出て作物を食べてしまうからなのです」
「魔神?」
「魔神イレイザール……。近年、魔王が封印された影響で復活した魔神です」
聞いことのない魔神だな。
しかし、
「そんなことならギルドに討伐の依頼を出せばいいじゃないか」
「何度か頼みましたが失敗に終わりました。依頼した冒険者は歳老いて帰ってきたのです」
「どういうことだ?」
「イレイザールは精気を吸う魔神。生物の若さを餌としています。冒険者は魔神に精気を吸われて歳をとってしまったのです」
ふぅむ……厄介だな。
生徒たちは汗を垂らす。
「みぃたんも精気を吸われたらおばあちゃんになっちゃうのかな?」
「そうよ。ヨボヨボのおばあさんになっちゃうのよ」
「うう……。マイカたん怖がらせないでよ~~」
びびってるところ悪いが、この魔神の封印が野外授業なんだよな。
もちろん、俺がサポートすることは必須なんだが、生徒たちには自主的にやってもらわなければならない。
割に合わない授業は可哀想だから、彼女らには報酬としてお菓子をたんまり持ってきたんだ。
これを見せて彼女らのやる気を引き出せばいいだろう。
子供の授業とはいえ、怖いモンスターと強引に戦わすのは違う気がするしな。
と、俺がお菓子を取り出そうとした、その時である。
マイカは凛々しく立ち上がり、ぎゅっと拳を握った。
「あたしたちが魔神をやっつければいいのよ!」
彼女に触発されてロロアもレナンシェアも立ち上がる。
「うん! 僕もそう思う! エルフが困ってるんだから。僕たちが助けなくちゃ!」
「私も。助けてあげたい」
すると、ミィは胸についているバッジを見つめて立ち上がる。
「ミィたんもね! 困ってるエルフたんを助けたいの! だって、学徒ランクG級になったんだもん!」
こいつら……。
子供だとばかり思ってたけど、勇者学園の生徒としてプライドがあったんだな。
お菓子のことは内緒にして授業が終わってからプレゼントしてやろう。
村長は『こんな子供たちに任せて大丈夫?』とでも言いたげな表情を浮かべていた。
「安心してください。俺の生徒ですから」
……まぁ、最近になってやっとG級になった程度だけどね。
* * *
俺たちはエルフの作った畑に来ていた。
モーゼリアはよく実ったトウモロコシを見て悲しげな表情を浮かべる。
「これはエルフが食べる作物ではありません」
「豊作だと思うが?」
「畑にあるすべての農作物は魔神イレイザールの餌になってしまうです」
うーーむ。
「魔神はエルフたちを襲いません。よく実った農作物を提供さえしていれば攻撃してこないのです」
「なるほど……。魔神にとってエルフは農作物を提供してくれる貴重な存在ってことか」
彼女はコクンと頷く。
「その影響で、ウシット村は食料難に陥っています。学園から食料の援助があってなんとか持ち堪えていたんです」
「じゃあ、エゲツナール教頭の怒りを買って食料の援助が止められてしまったから早くなんとかしないとだな」
「はい。このままではエルフたちが飢えて死んでしまいます。それに畑の農作物が切れれば、次に襲われるのはエルフたちの精気なのです」
生徒たちには武器と防具を用意した。
これらは学園から支給される物だ。
剣士のマイカには剣を。拳士のロロアには鉄のついたグローブ。
魔法使いのレナンシェアと僧侶のミィにはそれぞれ杖を与える。
決して強力な装備とはいえないけれど、精気を吸ってくる敵を直で触れるのは危険だからな。
ないよりマシだろう。
「デインさん。トラブルに巻き込んでしまって申し訳ありません」
「まぁ、気にすんなって」
困っているエルフたちには悪いが、魔神退治なんてちょっとワクワクしているんだ。
敵は強いほど燃えるってもんだよ。
「私も戦います! 一緒に魔神を討伐しましょう!」
「それじゃあ授業の意味がないよ」
「え!?」
「これは野外授業の一環なんだからな」
モーゼリアが反論しようとしてきた、その時。
ドシーーーーン!
巨大な地響きとともに現れたのは真っ黒い壁だった。
十メートルはあるだろうか。やはり見たこともない魔神だ。
その真っ黒い壁はそのままトウモロコシ畑に向かってズシーーンと倒れた。
すると、周囲のトウモロコシは干からびて枯れていく。
なるほど、ああやって精気を吸っているわけか。
壁だと思っていた体はクッションのようになっている。
これはまるで……黒板消しだな。
魔神は宙に飛び上がり、再びトウモロコシ畑に着地。
下敷きにしたトウモロコシの精気をジュルジュルと吸う。
『ケケケケケケ……。美味い美味い』
おぞましい笑い声が畑に響く。
魔神は俺たちの存在には気が付いていないようだ。
夢中で精気を吸っている。
それにしても不気味だよ。十メートルもあろう黒板消しがピョンピョン跳ねて野菜の精気を吸ってるんだからな。
そんな光景に生徒たちは汗を垂らした。
さぁ、野外授業の始まりだぞ。
「敵は一体だ。おまえらは四人。大きさでは負けているが数では勝ってる。四人でパーティーを組んだとして、誰がリーダーになる?」
四人は顔を見合わせた。
「あたしよ。年長だもん」
「よく言った。みんな異論はないか?」
三人は力強く頷く。
「よし。じゃあ、マイカをリーダーにして今から魔神イレイザールの討伐だ。マイカ。魔神の特徴をみんなに伝えてくれ」
「と、特徴?」
「パーティーで戦う場合、個々でバラバラに戦ったんじゃあ意味がない。作戦を立ててから効率よく戦うことが重要なんだ」
「な、なるほど……」
「作戦を立てるには相手を観察することからだ。マイカの見立ててではどんな敵だと想定する?」
「あたしの見立てね……。うーーん……」
と、彼女は魔神の行動を観察する。
イレイザールは次々とトウモロコシを下敷きにして精気を吸っていた。
「あの黒板消しみたいなクッションの部分は柔らかそう……。あの部分で野菜の精気を吸ってるわね」
「うん。よく観れている。じゃあ、作戦はどうなる?」
マイカは腕を組んだ。
「……前衛と後衛に分かれた方がいいと思う」
「なーーにそれ? ミィたんはやる気だよ。ムフゥ!」
と、鼻息を荒くする。
「チームで戦うのよ。前衛はあたしとロロア。後衛はレナンシェアとミィよ」
ミィは目を見開いて瞬きを繰り返した。
そんな彼女とは対象的にマイカのイメージは強く固まっているようだ。
「あたしとロロアで魔神の柔らかそうな部分を攻撃する。その間にレナンシェアは魔力を溜めて魔法攻撃の準備よ」
「え? ミィたんは?」
「あなたは僧侶だもん。前衛が怪我を負ったらそれを 回復で直して欲しいの。できる?」
「うん! 任せといて!」
よし、いい作戦だ。
ちょっとフォローしてやろう。
「レナンシェアの魔力は強力だ。彼女の魔法攻撃を要にしてもいいと思う。だから、前衛はそこまで無理しなくていい」
「うん。わかったわ!」
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