勇者学園の最強先生〜引退した賢者の俺、落ちこぼれ生徒たちを無双させてしまう〜

神伊 咲児

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第十二話 どんぐり組VS魔神

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「行くわよ、ロロア!」

 と、前に出る剣士のマイカ。
 追いかけたのは拳士のロロアである。

「ロロア……。魔神に直に触れると精気を吸われるからね。そこだけは気を付けるのよ!」
「うん!」

 的確な指示だ。
 ロロアの装備しているグローブなら、拳で攻撃しても直触りにはならないが、他の部位を触れるのは危険だからな。
 そんなことを考えていると、マイカは飛び上がり剣を振り下ろした。

「たぁあああああああああああッ!!」

ぽふん……。

 しかし、黒板消しのように柔らかい魔神の体に剣の攻撃は効かない。
 同時に攻撃していたのはロロアである。彼女の激しい連打攻撃が魔神の体に命中する。

「だだだだだだだだだだぁあああッ!!」

ポフポフポフポフポフポフポフポフポフ!!

 この攻撃さえも魔神の体には通じない。
 魔神は体を左右に振って二人を追い払った。

「きゃあッ!」
「うわぁあッ!!」

 吹っ飛ばされた彼女らは地面に激突する。
 その瞬間、全身が淡い光に包まれていた。
 彼女らは激突した衝撃でその光には気が付いていない。
 だが、その光景を見ていたモーゼリアは「あれは……」と声を出してしまう。
 俺は人差し指を口の前に立てた。

「しーー」

 内緒のお手伝いをちょっとね。
 生徒らにはダメージ軽減魔法をこっそり付与している。
 骨折になるダメージをすり傷程度になるように調整してあるんだ。

「マイカたん大丈夫!?」
「うん。ちょっと擦りむいただけ」
「治してあげるね。 回復ヒール!」

 うん。僧侶のミィも活躍しているな。
 彼女はロロアのすり傷も回復魔法で治療する。
 と、同時に、レナンシェアは大きな火球を宙に浮かべていた。


「ファイヤー……バレット」

 
 巨大な火球が魔神イレイザールに命中する。
 接触するやいなや、火球は炸裂して魔神の体を炎が包む。
 
 よし。マイカの作戦は成功だ。

 しかし、

『ケケケケケケーーーー! こんな攻撃は効かぬわ!!』

 と、炎を掻き消してしまった。
 女児たちは強敵を前にして汗を垂らす。
 ふむ。

「マイカ。アドバイスしてやろうか?」
「黙ってて! まだ負けたわけじゃないわ!」

 おお……。これは失礼したな。

 マイカは拳を握ってニヤリと笑う。

「繰り返すのよ! 攻撃は当たるんだから。何度かやって相手のダメージを削ればいいわ!」

 うむ。仲間の弱気をリーダーの鼓舞によって払拭する。
 マイカはよくわかっているじゃないか。
 
「レナンシェア。さっきより大きな火球は作れるかしら?」
「うん……。やってみる」

 マイカは希望を見つけたようにニヤリと笑う。

「じゃあ、あたしたちは足止めするわ。行くよロロア!」
「うん!」

 再び二人が物理攻撃を繰り出す。
 どうせなら、二人には攻撃力強化と速度強化を付与しておこう。
 レナンシェアとミィには魔力強化でいいかな。
 マイカの鼓舞によって、みんなの力が引き出されたという設定にしておけば自然な流れだろう。
 とはいえ、

ポフポフポフポフポフポフポフポフポフ!!

 ああ……やっぱり魔神の体は柔らかくて打撃は通じないか。
 マイカの剣撃もロロアの打撃もクッションのような体に威力が吸収されているよ。
 そして、レナンシェアの魔法。さっきより明らかに大きな火球なのに、魔神にはダメージが通らない。
 マイカとロロアは魔神の攻撃を受けて傷だらけになる。それを回復するミィも汗だくだ。
 流石にこれは強すぎるな。

「デインさん。私たちも応戦しましょう!」
「いや。待ってくれ。これは生徒たちの野外授業なんだ。教師の俺たちが参加したんじゃ意味ないよ」
「もうそんなことを言っている場合ではありません。敵が強すぎますよ!」

 たしかに……。しかし、せっかく子供たちがやる気になっているのに水を差すのは気が引けるしな。
 よし、こうなったら……。

「うぉおおお。魔神めーー。許さないぞーー」

 と、俺は棒読みのセリフで魔神に突っ込んだ。
 そして、攻撃を受けて吹っ飛ぶ。位置がズレていたので方向調整をして生徒たちの方へと倒れ込んだ。

「うわーーーーーーー。激しくやられたーー」(棒読み)
「「「「先生!!」」」」

 みんなは俺を心配して駆け寄ってきた。

「てんてぇ大丈夫!? すぐに治してあげるからね!」
「い、いや……。俺のことはいい。そ、その魔力は攻撃に使うんだ」
「そんなのできないよ。ミィは僧侶だもん」
「できるさ。みんなの力を集中させればな」

 俺はマイカの手を握った。

「き、気絶する前に聞いてくれるか?」
「なに?」

 と、彼女は俺のことを心配する。怪我人の振りをすると優しくなるのが彼女の素直なところだろう。
 俺はロロアを指差した。すると、彼女の拳に真っ黒い蝶々が一匹、ヒラヒラと飛んでいた。

「あ、あれは俺の魔力を蝶に具現化したものだ。あの蝶にみんなの力を集約させろ。そうすれば、 蝶絶強力攻撃バタフライアタックが打てる」
「な、なによそれ?」
 魔法体術マジックアーツの一種。ロロアの強烈なパンチ攻撃ができるのさ」
「それで……。魔神は倒せるのね?」
「ああ……。みんなの……力を……合わせて……」

ガクン……。

「てんてぇえええええええええ!! てんてぇがぁあああああああああ!!」

 ミィは俺が死んだと思って泣き叫ぶ。
 流石にちょっと可哀想なので少しだけ目を覚した。

「き、気絶……。した……。だけだ……」

ガクン……。
 
 マイカは立ち上がった。

「デインの命を無駄にしちゃダメよ!」

 いや、さっきも言ったけど気絶しただけです。

「みんなの力をあの蝶に集中するのよ!!」
「「「うん!」」」

 三人はロロアの背中に手を当てて魔力を蝶に集中させる。
 すると、その蝶は稲光をバチバチと発するようになった。

「わわわ! すごい力だよマイカ君! これならいけるよ!」
「じゃあ、あたしが隙を作る!」

 マイカは魔神に突っ込んだ。
 派手に剣撃を当てて魔神の注意をそらした。
 そして、軽く身を引いて距離を取る。

「今よ! ロロア!!」

 彼女の掛け声でロロアは走り出した。

「うぉおおおおおおおおおおおお!!」

 蝶の魔力によって強風が吹き荒れる。
 ロロアの拳が魔神の腹に減り込んだ。


 蝶絶強力攻撃バタフライアタック!!」


 ボコォオという強烈な接触音と、落雷が起こったような衝撃が発生する。
 ロロアの拳に宿っていた蝶は弾けて強大な爆発となる。
 その威力は魔神イレイザールの体を空の彼方へ吹っ飛ばした。

 生徒たちが勝利を確信した時。
 俺はシュタッと立ち上がった。

「うん! おまえらよくやった」
「うわぁあ! てんてぇが生き返った!!」
「気絶してただけだ」

 さて、遠くに飛んでった魔神の生死を確認しないとな。

「野外授業は終了だ」

 生徒らはモーゼリアに任せとけばいい。
 俺は高速移動魔法の 加速アクセルを使って魔神が飛ばされた方へと向かった。

 五百メートル以上は飛ばされていたと思う。
 魔神は森の木々をなぎ倒して墜落していた。
 ああ、やっぱ思ったとおりだわ。

『ケケケケ! 愚かな人間よ。 我われにこの程度の攻撃は通じない』

 流石は魔神。あの程度ではダメージは残らないか。

『少々遊びすぎたわい。そろそろ本気を出してやろう』

 周囲の木々が宙に浮かび、それが魔神のクッション部分にめり込む。
 すると、魔神はそれを弾き返してこっちに飛ばしてきた。
 すさまじいスピードである。
 なるほど、木を使った飛び道具か。
 この威力なら子供たちが食らえば即死ダメージだったな。
 本気になったのはあながち嘘じゃないらしい。
 だが、そんな木の攻撃を、俺は片手だけで弾き返した。

「いいね。第二ラウンドといこうじゃないか」
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