太陽神は創造神の手に余る異世界で破壊神になるらしいので見物に行くことになった道中記

餅狐様

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第拾弐記 抱籠vs神石

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 抱籠だきかご発動。
 直後レジャーシートを中心に六芒星が展開された。

 ペラペラの鳥籠とは違う。
 まるで、防弾ガラスのような透明な分厚い素材。
 それが俺達をドーム状に包み込む。


「ほっほーん、噂に聞く守護陣の一つやな。確かに頑丈そうではある。せやけど、それでは鍋の中に居るのと同じ事やないかいッ! わいの火で中から茹でダコにしたるさかい、覚悟しぃや!」


 曝の口から吐かれた炎はドームを直撃。
 メラメラと音を立て俺達を包囲する。
 本当に蒸し焼きになるんじゃあないかと生唾を飲む。


 ――しかし、何ともない。


 内側も外側も守備は万全である。


「私の抱籠は耐熱耐寒その他諸々に優れていますので、どうぞ御くつろぎ下さい」


 よっちゃんはカメラに向かってウインク。
 にじみ出る余裕。
 正に守護神。


「なるほど、なら、これはどうやろか?」


 曝は太陽目掛けて飛行機のように急上昇。
 その姿を瞬く間に日の中へとくらました。


「とりあえず今のうちに、仕掛けをしておきましょうか。私の可能なことは主に三つです。一つは鳥籠や抱籠のような守護術、二つ目は今からお見せしますね」


 よっちゃんは前方に天之豊瘴國守之杖あめのほうしょう くにまもりのじょうをかざす。


「豊来! 夾竹桃きょちくとう!」


 夾竹桃と呼ばれたその木は、ドームの周りを覆う。
 まるで早回し映像を見るかの如く地面から生える。
 ニョキニョキと一分位で身の丈二メートル位に成長した。

 そして、フリル状の赤い五枚の花弁は一つ、また一つと咲き乱れ、満開を見せた。


「こーんな所でお花見とは、よっちゃんも粋じゃのう」


「トヨは有能、有能」


 ドーム内は曝を差し置いて完全にお花見ムード。
 そこへミサイルが迫りくるかの如く急降下してくる金色の飛翔体。
 墨のように黒かった曝は金色の輝きを纏う。


「ドヤッ! 初っ端から全開で行くやで!」


「あれが曝の神化、陽鴉神降之御姿ようあかみおろしのみすがた!」


「曝の行動を推察するに、太陽の光を一定量浴びるのが神化の引き金なのかな?」


「まぁ、そんなところね。あたしの力を勝手に使うんだから便乗もいいところよ」


 太陽の無断利用に関して不服の声を上げるあーちゃん。
 それ言っちゃうとほとんどの人が無断利用なんだよなぁと心の中で突っ込む。


「なんやねん、ぎょうさん揃って花見なんてしおって。わいのこと舐めとるんか?」


「いえいえ、戻ってくるのが遅かったので暇を有意義にするためにちょっとした見世物をしていただけです」


「ほな、わいが戻ってきたんやからその花らはもういらんわな。せや、わいが燃やし尽くしたるわ」


 曝の口から炎が放たれる。
 それは山吹色に輝き、夾竹桃に迫る。
 夾竹桃は煙をもうもうと上げ、灰燼に帰した。

 その後、曝は真上に。
 ドームの頂点に金炎を浴びせ続けた。
 まるで、ガスバーナーで炙るかのように。


 それでも内部の温度変化はまだ感じられない。


 だが、流石は神化。
 外側の色が赤くなってきていることを内側から確認できた。


 次第に変化する色に俺の心には一抹の不安。


「よっちゃん、これ大丈夫なの……?」


「はい、まだまだ耐久可能です。慌てる必要は無いですよ」


 よっちゃんの微笑みは余裕を感じさせる。
 それは俺に大きな安心感をもたらす


 ここで、先程までの火がピタリとやんだ。
 上空に曝は……いない。



 どこだ?
 どこに行ったんだ?



 なんだあの巨大な影はッ!



 陽光を浴びて異国の海のように美しく光る、まさに蒼玉の名を冠するに相応しい、推定直径二メートル以上はあろう大宝石を三本の足でしっかりと掴み若草のコロシアム内にフェードインする曝。


「あー……あれは、申し上げにくいのですが……少し不味いですね」


 よっちゃんは少し浮かない。


「もしかして……突破されちゃう……かも?」


「はい、あの神石ですと海神、大綿津見神おおわだつみのかみの一撃に匹敵……つまりは、あー様クラスの大自然を司る神のレベルなので正直厳しいです」


「念仏は唱え終わったんやろか? いくで、でっかい神石に潰されてしまえいッ!」


 曝は空中で一回転。
 その勢い殺さず水の力が宿る神石を、こちら目掛けてぶん投げた。

 

 空を切る音と共に迫る大蒼玉。
 よっちゃんは頭上に杖を向ける。



「壱之盾! 八重桜!」


 春の訪れを感じさせる鮮やかなピンク色に染まった、桜の花を模した円形の盾が八枚、神石の行く手を阻もうとドーム上に縦一列に整列した。



 一枚目。
 突破。


 二枚目。
 突破。



 三枚目。
 突破。




 四枚目。
 突破。




 五枚目。

 突破。



 これ、やばいのでは。



 六枚目。



 止まれ、止まってくれ。



 突破。



 七枚目。



 止まれ止まれ止まれ止まれ!!



 突破。



 最後の八枚目。



「止まれぇぇぇぇえええええええええッ!!」


 ついに俺の心の叫びが口から漏れる。
 握るカメラは手汗でベトベトだ。





 結果は。






 止まった。



 最後の桜の盾には大量にヒビが入っていたが辛うじて持ちこたえてくれた。


「ふぅ、少し焦りましたが何とかなりました」


 よっちゃんの顔から緊張が去った。

 盾を操作して神石を地面に落とそうとしたまさにその時。


「まだ終わりやないで!」



 パリィィイイイン。



 ひび割れた最後の防衛ラインは快音を立てて砕け散る。
 曝が急降下からの踏みつけで追い打ちをかけてきたのだ。


「おまけやで! 神石開放! 水刃や!」


 追い打ちで盾を割り、大蒼玉にさらに回転を加えて押し込む。
 それは形を変え、回転式の刃物のような形状をとった。


 そして抱籠との勝負が始まる。


「形態変化まで習得していたとは……想定外でした」


「形態変化って何?」


「精練された神石ってのは、神石本来の持つ力に見合うイメージをしながら神力を入れることで形態が変えられんの。例えば、赤色の神石なら炎をイメージするとかね。でも、曝が形態変化できるのはあたしも今初めて知ったわ。結構な神力使うから動物には無理だと思ってたしね」


 あーちゃんからも感服の声が上がった。
 抱籠に少しづつだが刃が入る。


「申し訳ありません。皆様、レジャーシートを少しだけ内側に折ってスペースを空けて下さい」


「できたのじゃよ」


「少し狭くなりますがご容赦願います」


 杖を前方にかざす。


二重抱籠ふたえのだきかご!!」


 抱籠内にさらに抱籠が出現する。
 全員の体が満員電車の中のように密着。


「ちょ、煌! 腕が当たってんだけどー!」


「大丈夫! 手はカメラだから! セクハラ違うからッ!」


 背中からは触り心地の良いクッションに押される感覚があった。



「うーちゃん、もしかして……当たって……る?」



「好きで当ててるわけじゃないのじゃ! 変なこと考えたら……殺してやるからのぅ!」



 なんてこった。
 誰もが羨む極上の絵面。
 まるで人気声優のような可愛い声。
 密閉空間を満たす女子おなご特有の甘い香り。
 そして、最高級の触れ心地。


 五感の内、味覚以外が俺にフルに働きかける。
 変なことを考えるなというほうが無理である。
 いつもの妹が増えたなぁみたいな状態なら俺も何とも思わない。


 だが、今は『女』として認識している。


 つまりだ。

 現時点、仮に今日が命日だとしても、俺は悔いを残さず死ねそうだ。


 ミシシシシシ……バリンッ!!


 そうこうしている間に最初の抱籠が破壊された。
 本当の最終決戦第二の抱籠との勝負が始まる。

 流石に一枚目がクッションになったおかげで先程より威力は収まったように感じる。
 しかし、空きスペースの関係上、一枚目よりも二枚目のほうが薄い作りになっていることがネックだ。


 ヤバイヤバイ。
 入ってくる入ってくる。
 刃の先端が抱籠から顔を出す瞬間。
 両者相殺。
 破片は桜のように美しく舞い散った。
 と、同時に俺の幸せルーム解除。


「これを待ってたんやッ! これがわいの必殺技やでッ!」


 曝はどこから出したのか黄色い小さな神石を咥えている。
 それを飲み込んだ。
 そして、金色に煌めく体にバチバチと電撃を宿す。

 急上昇からの宙返りで勢いを殺さずこちらに突っ込んでくる。



「喰らえい! わいの炎で燃えながら雷の力で滅せいッ! 天翼あまのつばさ!」



 突っ込みながら炎を吐きそれを身に纏う曝。
 まさに爆撃機。

 よっちゃんは反応に遅れたのか何もしていない。
 だが、焦りの表情は見て取れない。


「諦めたようやな! わいが引導を渡してやるやで!」


 我々の絶対絶命の次の瞬間。
 曝は空中でバランスを崩し若草の中を転がった。


「やっと効いてきましたね」


「な、なんや、体に力が入らん。めまいもするで」


 曝は立とうと幾度も試みるも立つことが適わない。
 そんな身動きの取れない曝の元へよっちゃんがゆっくり向かう。


「回答しましょう。あなたが燃やした夾竹桃は毒なのです。あの木は珍しくて燃やした煙にも毒が含まれます。それを全身に浴びたのですから……まぁ、こういう結果になりますよね」


 曝とよっちゃんの距離がほぼ〇になった。
 よっちゃんはしゃがみ、右手を曝に差し出す。
 その手の平には赤色をした小さな実が三つあった。


「このままでは死んでしまいますので、こちらをよく噛んでお食べ下さい」


「う……すまんな、豊受様。情けをかけてもろて」


 曝は指示通り三つとも一気に、よく噛んで食べた。


「なんやこれ……天にも昇るくらい甘くて上品な実やな」


「はい、それは良かったです」


 よっちゃんは満面の笑みを曝に向ける。


「それで……これから死ぬってどういう気持ちですか?」


 よっちゃんのいつもの気品のある顔から光が消えた。


――次回、え、よっちゃん――
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