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第3章 その兄弟喧嘩、本当に必要ですか?

第31話 絶対領域!

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 学生食堂に着くとエーリックのエスコートでウェルシェはテラスの丸テーブルに腰を下ろした。周囲に二人の関係を印象付ける為になるべく目立つ位置を選択したのである。

 エーリックもウェルシェの対面の席に座るとウェイトレスが間を置かずに注文を取りに来た。フリルをあしらった黒を基調としたミニスカートの制服が可愛らしい。

「ご注文を復唱させていただきます。ハムエッグサンドがお一つ、ボンゴレビアンコがお一つでお間違いありませんか?」

 二人の注文をメモしていたウェイトレスがマニュアル通りに確認を取る。

「うん、間違いないよ」
「それでは少々お待ちください」

 ウェイトレスがくるりと踵を返すと短いフレアスカートの裾が翻った。彼女のきわどい絶対領域に周囲の男達の視線がほんの一瞬だが集まった。

 本能に従った彼らはヤバいとすぐに目を逸らして取り繕ったが、近くにいる令嬢達にはバレバレである。彼女らの白い視線がぶっ刺さり針のむしろ状態だ。

 幸いエーリックの視線はウェルシェに釘付けロックオンだったので、彼は最愛の女性からの顰蹙ひんしゅくを買わずに済んようだが。

「ウェルシェは良かったのかい?」
「何がでございましょう?」
「いつもは友人とランチしていただろ?」

 ウェイトレスが離れたのを確認してからエーリックは話を切り出した。

「ここのところお昼は僕と二人だから大丈夫かなって」

 入学以来、エーリックはウェルシェの交遊関係に遠慮して、彼女はいつもキャロルと昼食を摂っていた。こんなところが弱腰に見られるのだが、ウェルシェはエーリックのそんな心遣いを好ましく思っている。

 だが、ここのところ周囲への婚約者アピールの為にエーリックと二人でのランチタイムを過ごしている。だから、キャロルには済まない事をしたと思う。

 もっとも、事情を察して彼女は笑って許してくれたが……むしろ周りに見せつけてこいと発破はっぱをかけられた。

「ご迷惑だったでしょうか?」
「そんなわけないさ!」

 ウェルシェがしゅんと落ち込んでとエーリックは慌てた。

「二人でいるところを見せつけるだけでいいなら、僕が迎えに行った方が良かったんじゃないかと思ったんだ」

 貴族の世界では一般的に女性から男性を誘う行為はあまり良く思われない。
 軽薄な女と見られて蔑まれる事さえあるから、エーリックも心配したのだ。

「エーリック様も私をはしたない女と思われますか?」
「ないない! ウェルシェはとっても奥ゆかしいよ。それに一緒にいられてとても嬉しいし」
「それを聞いて安心しましたわ」

 だが、ウェルシェにとって何より重要なのはエーリックの心証だったのである。
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