あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

文字の大きさ
50 / 317
第4章 その暗躍、本当に必要ですか?

第50話 腹黒令嬢と専属侍女part4

しおりを挟む
「いっそエーリック殿下が即位なさる後押しをされて、お嬢様が王妃になっても良いのではありませんか?」
「それじゃグロラッハ家の陞爵の話が流れるじゃない」

 この婚約によるグロラッハ家の公爵への陞爵は、エーリックが当主になるのが絶対条件である。

「ですが、王妃になれば公爵への栄達よりもグロラッハ家への恩恵が大きくないです?」
「何を言っているの。王妃になれば国母として国全体を考えねばならないわ。グロラッハ領だけを優遇するわけにはいかなくなるでしょ」
「ふーん」

 もっともらしく言い訳するウェルシェに疑いの目を向けるカミラ。

「それで本音は?」
「いやぁよ王妃なんてメンド臭い!」

 ウェルシェは腹黒だが、それは諧謔ユーモアであり領民思いの根は善性な令嬢だ。だが、自己犠牲の精神が旺盛なわけではない。

王妃オルメリア様のご苦労を目の当たりにしたら、あんなの率先してなりたいって思えないわよ」
「王妃をあんなのって……まあ、オルメリア様が可哀想なくらい気苦労の絶えないお方なのには同意しますが」

 側妃エレオノーラと第二王子エーリックに気を使い、自分の息子オーウェンの後継問題に波風を立てぬよう八方手を尽くしたのはオルメリアである。

 その甲斐あって今の今まで順調であった……のだが、その平穏を壊す者が現れた。

 当の愚息オーウェンである。

 オルメリアは彼の為に頑張ってきたのに、恩恵を受けていた当人にちゃぶ台をひっくり返されたのだ。

 まったく涙が出そうな珍事である。
 王妃の苦労も偲ばれると言うもの。

「私は公爵夫人くらいで好き勝手やってる方が楽でいいわ」
「私としましては是非お嬢様には王妃を目指して欲しいものです」
「どうしてよ?」
「お嬢様を野放しにしたら、周囲の者が苦労するからです」
「酷ッ!?」

 つまりカミラとしてはウェルシェに王妃と言う首輪を付けたいのだ。

「ねぇ、私はカミラの主人よね?」
「はい」
「あなたは私の侍女よね?」
「はい、いつもお嬢様の腹黒イタズラの準備から後始末まで苦労させられている侍女にございます」
「ぐっ、悪かったわね」

 いつも好き勝手できるのも有能な侍女カミラあってのこと。ゆえに、この侍女に苦労を掛けてる自覚のあるウェルシェは速攻で白旗を挙げた。

「それでどう対処されるおつもりで?」
「王妃様が主催されるお茶会でオーウェン殿下の行状を暴露してやるのよ」

 ふっふっふっとウェルシェは黒い笑みを浮かべる。

「この際だからケヴィン様だけではなく殿下にも痛い目を見てもらいましょ」

 王妃オルメリアの有能っぷりはウェルシェの耳にも届いていた。間違いなくオーウェンは叱責を食らうだろうとウェルシェは確信している。

「少しは反省してもらわないと国民が不幸だわ」
「へぇ……」

 感心したような声を漏らしたカミラであるが、これっぽっちも信じてなさそうに胡乱げな視線を主人に向けた。

「で、その心は?」

 ウェルシェはグッと拳を握って突き上げた。

「これを機に王家から絞れるだけ絞り取ってやるのよ!」
「やっぱり!」

 予想通りとカミラは天井を仰いだ。やはり、どこまでいってもウェルシェはウェルシェなのだ。

「大丈夫ですか? 下手をすればオーウェン殿下だけではなく王妃様まで敵に回しかねませんが」
「王妃様は賢明な方らしいから大丈夫よ」

 カミラの心配などウェルシェにとってどこ吹く風。

「それに、もし王妃様がオーウェン殿下を庇うような愚かな真似をするなら、陛下まで巻き込んで絞り取るものが増えるだけだし」

 自信満々なウェルシェの態度にカミラはボソリと呟いた。

「……私は王妃様が憐れでなりません」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。 王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。 数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。 記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。 リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが…… ◆表紙はGirly Drop様からお借りしました ◇小説家になろうにも掲載しています

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

悪役令嬢は断罪の舞台で笑う

由香
恋愛
婚約破棄の夜、「悪女」と断罪された侯爵令嬢セレーナ。 しかし涙を流す代わりに、彼女は微笑んだ――「舞台は整いましたわ」と。 聖女と呼ばれる平民の少女ミリア。 だがその奇跡は偽りに満ち、王国全体が虚構に踊らされていた。 追放されたセレーナは、裏社会を動かす商会と密偵網を解放。 冷徹な頭脳で王国を裏から掌握し、真実の舞台へと誘う。 そして戴冠式の夜、黒衣の令嬢が玉座の前に現れる――。 暴かれる真実。崩壊する虚構。 “悪女”の微笑が、すべての終幕を告げる。

処理中です...