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第6章 その第一王子、本当に必要ですか?

第69話 王妃の裁定

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「確かに、まだ学園は始まったばかりです。オーウェンの器量に判断を下すのは時期尚早じきしょうそうですね」

(後は私次第ってことね)

 ウェルシェから渡されたバトンをオルメリアは取り落とさず、しっかりと受け取った。

「ですが、シキン夫人やウェルシェの懸念ももっともです」

 ここで舵取りを誤ればチャンスを作ってくれた自分の半分以下の年齢の娘に笑われてしまう。

「この度の件は私が責任を持って対処しましょう」

 オルメリアは真っ直ぐウェルシェを見据えた。

「まず、あなたとエーリックの婚約についてですが」
「はい」

 王妃としての威厳ある眼力を受けてもウェルシェはにこりと微笑み動じた様子が見えない。

(本当に大した娘だこと)

「あなた方の婚約に障害となるものは全て私が排除すると王妃である私が保証します。それでもエーリックの婚約に横槍を入れる者があれば、それが例えオーウェンであっても構いません……国王陛下と私の名を出しなさい」
「ご配慮痛み入ります」

 それはつまり、国王と王妃の名の下に婚約の正当性が守られると言っているのだ。これに難癖をつけるならば最大級の不敬となる事を意味する。

「次にシキン夫人の苦言についてですが」
「はい」

 オルメリアは視線をジャンヌへと移したが、こちらもさすがである。僅かに視線を落とし目元涼しく動揺を見せない。

「オーウェンの態度は目に余るものがありますが、特に罪を犯してはいません」
「ご高察にございます」
「ですが、あなたの指摘通り無視もできません」

 ここで完全に不問にすればシキン伯爵家の心は王家から離れる。

「ですので、オーウェンと側近には課題を与えます」

 それが分かるオルメリアは実の息子に厳しくあらねばならない。

「彼らが在籍中に己を省みれば良し。そうでなければ相応の対処を致しましょう。詳しい沙汰は後日下しましょう」

 最後にオルメリアはケイトへと顔を向けた。

 その鋭い眼光にケイトはぶるりと震えたじろいで、みっともなく目をきょどきょどと泳がせる。

「ケヴィン・セギュルに関しては調査の上、王家に対して軽はずみな発言をしていたのが真実なら……停学とし、実家へ戻して再教育をしなさい」

 王妃オルメリアの裁定が下され、その場の皆がこうべを垂れた……
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